「ブギーのアイドル」でボラン・ブギーの再検証を行ったボランは、またもやそこに安住する事を好しとしなかった。放ったアルバムはよりソリッドでグルーヴィになったボラン流ファンク・ロック。ソリッド、グルーヴィと書くと、「ズィンク・アロイ~」に回帰したように捉えられがちだが、一聴すれば、すぐに全く異なる作風であることに気付くだろう。
ノリの良さ、リズムの重厚さ、ストリングスの華麗さ、シンセ音の煌びやかさ、どれをとっても上級の旨み。正に「いいとこどり」なアルバムなのだが、意外に印象が薄い作品でもある。前作で失われつつあった「ある種の毒」が、この作品ではほぼ消滅、カッコ良さが前面に押し出されているのが原因だろう。上級ばかりを取り揃えすぎたことにより、突出した個性というものがスポイルされているのだ。
ただ、「ズィンク・アロイと~」で試行された刺々しいリズムの導入や「ブギーのアイドル」で顕示されたポップスの手法を元に、この作品を作ったのだと考えれば、この作風に納得がいく。ともすれば両極端になりそうな2つの要素がうまく重ねられており、昇華した結果だ。
余談だが、ボーナス・トラックに収められた「人生はエレベーターの如く」は、人生は空気(のように掴みどころがない)と歌われた「ライフ・イズ・ア・ガス」、人生は不思議なものだと歌われた「ライフ・イズ・ストレンジ」を思うと、ボランの人生を象徴しているようで切ない。
- 原題
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Futuristic Dragon
- 邦題
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銀河系よりの使者
- パーソネル
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※ クレジットが記載されていないため、割愛しました。
- 曲目
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- Futuristic Dragon (銀河系よりの使者)
- Jupiter Liar (美しき偽善者-その名はジュピター)
- Chrome Sitar (シタールは星空の調べ)
- All Alone (クローム色の小夜曲)
- New York City (ニューヨークの貴婦人)
- My Little Baby (可愛い狂人)
- Calling All Destroyer (破滅の英雄たちを今ここに)
- Theme for a Dragon (気違いドラゴンのテーマ)
- Sensation Boulevard (センセイション通りのピーコック祭り)
- Ride My Wheels (素敵な君と愛のドライヴ)
- Dreamy Lady (夢見る夜の魔女)
- Dawn Storm (朝焼けの天使はぼくの恋人)
- Casual Agent (気ままなカサノヴァ)
- City Port (シティ・ポート)
- Laser Love (レーザー・ラヴ)
- Life's an Elevator (人生はエレベーターの如く)
※ 14、15、16はボーナストラックです。現在社会的に不適切と思われる邦題が含まれますが、作品の価値を尊重し、そのまま掲載いたしました。
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