激しくリズミックなギター・リフが高らかに幕開けを告げる。1曲目のこの興奮度、これまでのボラン・ブギーとはかなり印象が違う。これぞ異色作中の異色作と評されるアルバムである。
何やら長ったらしいタイトルからは、コンセプト・アルバムっぽい印象を受けるが、楽曲の流れからそういった意図を汲み取ることは難しい。「仮面ライダー」をたまたまテレビで見たボランが、それをヒントに作り上げたアルバムとされているが、特に「仮面ライダー」にインスパイアされた部分というのは存在しないし、かなり文言と音楽が乖離した作品である。
しかし、それはコンセプト・アルバムを期待するからであって、音に耳を傾けてみれば、それらはこれまでのT・レックスひいてはボランのブギーにない意欲的なリズムの導入が確認される。冒頭に書いたような「ヴィーナスの美少年」のソリッドなギター・リフに始まり、グロリア・ジョーンズが参加して、過去の作品とは趣の異なるソリッドなコーラスを響かせる「悪魔のしもべはのろまが嫌い」、「星空のソウル」。新しい風を吹かせようとした意気込みは十分で、ふとした拍子に聴きたくなる隠れた名盤。1度じゃその良さは分からない!
ちなみに、ボーナストラックの「トラック・オン」はボラン本来のチープなゴージャス感が溢れに溢れた傑作。グロリア・ジョーンズのコーラスは正に狂乱の一言!
- 原題
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Zinc Alloy and the Hidden Riders of Tomorrow or a Creamed Cage in August
- 邦題
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ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー
- パーソネル
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Marc Bolan - Vocals and Guitars
Micky Finn - Hand Percussion Congas and Vocals
Steve Currie - Bass
Bill Ledgend - Drums
Jack Green
Paul Fenton
Lonnie Jordan
Danny Thompson
B.J.Cole
The Cosmic Choir : Sister Pat Hall : The Gloria Jones : Big Richard
※ クレジットはジャケット記載のものを元に再構成したものです。担当パートが未確認のメンバーについてはご容赦ください。
- 曲目
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- Venus Loon (ヴィーナスの美少年)
- Sound Pit (悪魔のしもべはのろまが嫌い)
- Explosive Mouth (熱く激しく爆発する唇)
- Galaxy (銀河の国へ)
- Change (変革はお陽さまの如く)
- Nameless Wildness (名もなき狂人)
- Teenage Dream (ティーンエイジ・ドリーム)
- Liquid Gang (いやな液体)
- Carsmile Smith & The Old One (懐かしのカースマイル)
- You Got to Jive to Stay Alive - Spanish Midnight (ジャイヴで行こう/燃えるスペインの今宵)
- Interstellar Soul (星空のソウル)
- Painless Persuasion V the Meathawk Immaculate (破滅への希望)
- The Avengers (僕たちの復讐者)
- The Leopards Featuring Gardenia the Mighty Slug (豹の歌/主演:くちなしの花となめくじ野郎)
- Truck On (トラック・オン)
- Sitting Here (シッティング・ヒア)
※ 15、16はボーナストラックです。
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