ロキシー・ミュージック (Roxy Music) ヒストリー

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 「グラムからアダルト・オリエンティドへ向かう美への陶酔者」


 ロキシー・ミュージックは特異なグループであり、アルバムごとにゆるやかに作風を変え、結局ファーストとラストを聞き比べると全く違う音楽になっていた、という特殊な音楽性の持ち主。

 ただし、それはごく表面的な見方で、作品順に聴いていけば、中心人物であるブライアン・フェリーの志向に基づく、計算された作風が連続していることが自ずと判明する。

 たとえばファーストとセカンドではアヴァンギャルド志向を、中期の作品ではよりキャッチーなロックへと傾倒し、後期ではダンス・ミュージックを意識した路線へと変化。その根底に流れているのは、フェリーの美的感覚あるいは恋愛感といったもので、それは彼のソロ作品にも一貫している。

 ロキシーは、時期によって聞き手の好みが分かれる音楽だ。どのアルバムも密度が高く、それぞれの作品が属するジャンルにおいて高水準を誇るのは間違いないのだが、それらのジャンルに苦手なものがあれば、当然聴き辛いアルバムも中には存在するのではないかと思う。さて、あなたのお好みは・・・?

第1期 リ-メイク/リ-モデル・フォー・ユア・プレジャー

 ロキシー・ミュージックのデビュー・アルバムと、その発展型とも言うべきセカンド・アルバムを第1期とする。

 この第1期に付けた「リ-メイク/リ-モデル・フォー・ユア・プレジャー」というコピーは、そのままこれら初期2枚の個性を言い表している。つまり、既成のあらゆるジャンルを解体して、自分流の音楽を作り出してしまおうという方向性、そしてその結果は聞く人のお楽しみ、ということである。

 それほど、初期2枚はアヴァンギャルドであり、一体何なのか一言では言い表せないくらいの「ヘンな」音楽ということでもある。セカンドでは「フェリー>イーノ」という図式が反映されたのか、ファーストに比べかなり「音楽的」ではあるが、やはりどことなく妙な作風だ。

 しかし、これら2枚がなかったら、「カントリー・ライフ」や「サイレン」といった傑作は誕生しなかっただろうし、ここでの実験精神やトータル・アートを見つめる視野といったものは、後々まで色濃く残っているのである。

 作品は、「ロキシー・ミュージック」、「フォー・ユア・プレジャー」。ブライアン・フェリーとブライアン・イーノ。突然変異的な個性を持って登場した二人が織り成すアヴァンギャルドな世界。

第2期 ファム・ファタルが招く陶酔の世界

 美少年マルチプレイヤー、エディ・ジョブソン登場。よりシェイプアップされたロキシー・サウンド確立となる。

 イーノ脱退の意味するところは、音楽的には実験精神の後退であろうが、それはロキシーにとって正解だったのかも知れない。代わって加入したエディ・ジョブソンは、そのマルチ・プレイヤー振りを存分に発揮し、ロキシーの「音楽的」な部分を支えることとなった。

 この時期に展開される「ロキシー節」とも呼ばれる独特のスタイルは、シンプル、ムーディ、ソリッド、キッチュ。フェリーの理想が次々と音に化けていった頃である。メロディがとりわけ美しいわけではないが、何かに浸ることの出来る音楽なのだ。

 ジャケット・アートも一貫して女性があしらわれており、独自の耽美的感覚が追求されている。ロキシーファンに最もウケのいい時期である。

 作品は、「ストランディッド」、「カントリー・ライフ」、「サイレン」、「VIVA! ロキシー・ミュージック」。傑作揃いで聴き応え十分の時期。「VIVA! ロキシー・ミュージック」はライヴ盤。

第3期 幻想空間へ消え行く究極の耽美世界

 ロキシー・ミュージック再結成。ただし、そこに展開された音楽は、ブライアン・フェリー究極の理想の為に変貌してゆくアダルト・オリエンティド・ロックだった。

 再結成後のロキシーは、ほぼブライアン・フェリー主導であると言って良い。「サイレン」までの雰囲気を持った曲は少なく、この時点で新しい展開を見せるような曲は殆どフェリー単独の手によるものである。

 また、フェリーのソロ作品にはカヴァー曲が多いのだが、「フレッシュ・アンド・ブラッド」にてカヴァー曲が収録されたことが、フェリー主導のアルバム制作を示唆している。この時期になると、ディスコ・ナンバーが意識され始めているのが良く分かり、グルーヴ感溢れる16ビート系の曲が多い。

 ロキシーの音楽性の多様さは、ブライアン・フェリーの制作手法が、グループからバンド、バンドからプロジェクトへと変化していく過程で生み出されたものであると言えるだろう。

 作品は、「マニフェスト」、「フレッシュ・アンド・ブラッド」、「アヴァロン」、「ハート・スティル・ビーティング」。ダンサブルで透明感に溢れた、ロック史に残る傑作が並ぶ。後年リリースされた「ハート・スティル・ビーティング」はライヴ盤。

第4期 時代の移ろいを超越した完璧なるロキシー・ワールド

 ロキシー・ミュージック、突如2001年に再編。オリジナル・アルバムこそ発表されないが、精力的なライヴ活動を展開した。

 2001年に展開されたライヴの模様を、2003年にライヴ・アルバムとして発表。音楽的には各人のソロやセッション活動を経て一層シャープで素晴らしいものに。

 オリジナル・アルバムの発表は現時点ではなさそうだが、まずはこのゴージャスなライヴ盤を堪能。

 「ライヴ」。1枚のみの紹介となってしまうが、とにかく必聴盤!