「ザ・コンストラクション・オブ・ライト」で確かな感触をつかんだフリップが、更なる発展へと向け「ヌーヴォ・メタル」なる道標を掲げて放ったミニ・アルバム。「コンストラクション~」でのソリッドでメタリックな要素はそのまま受け継がれているが、よりヘヴィメタルへと接近しつつパット・マステロットの鋭いエレクトリック・ドラムとのアンサンブルによって、既成のロックにはない緊張感を生み出している。
本作の白眉は一応タイトルチューンである「ハッピー~」であるが、ブリューのポップ・センスとオルタナティヴ・ロックの持つ現代音楽的なアプローチ、そして先鋭的なリズムセクションが見事に融合し、緊張感がありつつもユーモアのある佳曲となっている。また、「アイズ・ワイド・オープン」は「スラック」の「ワン・タイム」を彷彿とさせる曲だが、アコースティックな響きが印象的で叙情性はより深いものとなっている。
本作の中で最も異彩を放つのが「ポテト・パイ」。前作の「プロザック・ブルース」で示されたブルースへの接近が、この曲ではより顕著に...と書いていて思わず笑ってしまうほど、モロにブルースになっているこの曲は、あくまでお遊びだろう。しかしお遊びにしてはなかなか良い曲だ。
「太陽と戦慄パートIV」はライヴ・バージョンだが、フリップが「ヌーヴォ・メタル」を意識した原点となる曲だと語っているとおり、そのエッジや重みは「コンストラクション~」に収録されたバージョンから格段の進化を遂げている。ある意味「ヴルーム」以上にフルレンス・アルバムへの期待を煽ったミニ・アルバムだった。
- 原題
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Shoganai - Happy with What You Have to be Happy with
- 邦題
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しょうがない~ハッピー・ウィズ・ホワット・ユー・ハフ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ
- パーソネル
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ADRIAN BELEW - guitar and vocals
ROBERT FRIPP - guitar
TREY GUNN - Warr guitar, rubber bass, fretless Warr guitar
PAT MASTELOTTO - drumming
- 曲目
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- Bude (ビュード)
- Happy with What You Have to be Happy with (ハッピー・ウィズ・ホワット・ユー・ハフ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ)
- Mie Gakure (見え隠れ)
- She Shudders (シー・シュダーズ)
- Eyes Wide Open (アイズ・ワイド・オープン)
- Shoganai (しょうがない)
- I Ran (アイ・ラン)
- Potato Pie (ポテト・パイ)
- Larks' Tongues in Aspic
(太陽と戦慄(パートIV)) - Clouds (クラウズ)
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