ダブルトリオで世界中を行脚した後、新作のリハーサルに失敗したクリムゾンは「プロジェクト1~4」と呼ばれるミニ・グループに分裂し、それぞれが活動するという何とも奇妙な行動に出る。ところが、それら「プロジェクト・シリーズ」から届けられたライヴ・アルバムを中心とした作品群は、クリムゾンとはまた違った個性を放ちながら、ニュー・クリムゾンへの期待を高めるに充分な魅力を持っていた。
果たして、またも復活したクリムゾンは、ダブルトリオではなかった。前作のメンバーより多忙を極めるトニー・レヴィンが抜け、さらに重鎮ビル・ブラッフォードが遂にフリップと袂を分かったのである。
さて、そのような紆余曲折を経て制作された本作は、「ヴルーム」、「スラック」に匹敵する衝撃を持って迎えられた。本作で展開されたのは、あまりにもエッジの鋭いプログレッシヴ・ヘヴィメタルだった。タイトル・チューンは「ディシプリン」を髣髴とさせるリズミックなナンバーだ。従来の作品へのオマージュともとれるタイトルからは想像もつかない程「進化」しまくった「フラクチャード」と「太陽と戦慄パートIV」を聴けば、クリムゾンは充分にプログレッシヴ・ロックしていることが分かる。「フラクチャード」に関しては、もはや人間業とは思えないハイスピード&ヘヴィなアルペジォが展開され、鳥肌だけでは済まされないものとなっている。「太陽と戦慄パートIV」は、従来の「太陽と戦慄」シリーズがどこかで抱えていたユーモアを捨て去り、これでもかと言うほどヘヴィなプログレが展開される。「コーダ・アイ・ハヴ・ア・ドリーム」でブリューの歌声が聞こえてきた頃、やっと一息付ける様な緊張感が凄まじい。
一方で、ヘンな楽曲も多く挿入されており、ブルース嫌いのフリップがブルースに歩み寄った「プロザック・ブルース」、意味不明の歌詞とコード進行が可笑しい「イントゥ・ザ・フライング・パン」と「オイスター・スープ~」が作品にユーモアを与える。ただし、演奏はヘヴィそのものであることに言及しておかなければならない。
なお、本作でのクリムゾンは「プロジェクトX」としての側面も持ち、ボーナストラック的に1曲だけプロジェクトX名義の曲が収録されている。
- 原題
-
The ConstruKction of Light
- 邦題
-
ザ・コンストラクション・オブ・ライト
- パーソネル
-
Adrian Belew - guitar and vocals
Robert Fripp - guitar
Trey Gunn - bass touch guitar, baritone guitar
Pat Mastelotto - drumming
- 曲目
-
- ProzaKc Blues (プロザック・ブルース)
- The ConstruKction of Light (ザ・コンストラクション・オブ・ライト)
- The ConstruKction of Light (ザ・コンストラクション・オブ・ライト)
- Into the Flying Pan (イントゥ・ザ・フライング・パン)
- FraKctured (フラクチャード)
- The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum (ザ・ワールズ・マイ・オイスター・スープ・キッチン・フロア・ワック・ミュージアム)
- Larks' Tongues in Aspic - Part IV (太陽と戦慄パートIV)
- Larks' Tongues in Aspic - Part IV (太陽と戦慄パートIV)
- Larks' Tongues in Aspic - Part IV (太陽と戦慄パートIV)
- Coda : I Have a Dream (コーダ:アイ・ハヴ・ア・ドリーム)
- Heaven and Earth (ヘヴン・アンド・アース)
11 は ProjeKct X (プロジェクトX) 名義
コメント