「鬼才ロバート・フリップ率いるリアル・プログレッシヴ・ロック・グループ」
洋楽ロックファンが、プログレッシヴ・ロック(いわゆるプログレ)と聞いて、まず思い浮かべるのが、ピンク・フロイド、イエス、ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)、そしてこのキング・クリムゾンであろう。
いわゆるプログレ四天王と言われるこれらのグループの中で、真にプログレとしてのオリジナリティを備えていると思われるのが、このキング・クリムゾンだ。
その根拠らしきものとしては、ピンク・フロイドがどちらかと言えばサイケデリックなシーンから登場したのに対し、クリムゾンはのっけからヘヴィなサウンドと、荘厳かつ叙情性のあるサウンドの緩急で「ロック」のダイナミズムを拡大していたこと。イエスがミクスチャー感覚にあふれた、既存のロックの発展版としての音楽性を発揮していたのに対し、クリムゾンが同様のミクスチャー感覚を発揮しながらも、方向性がよりダークかつイリュージョナルであったこと。エマーソン・レイク・アンド・パーマーは、よりエンタティメントを重視していたこと(何より、クリムゾンの後続である)。
異論はあるだろうが、21世紀になっても他のジャンルに迎合しない特異な位置にあることは確かで、ともすると聴き難ささえも醸し出す音楽性は、孤高の存在とも言えるのではないだろうか。
- 第1期 宮殿~ブルージィ・クリムゾンの崩壊
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キング・クリムゾンのデビュー作、「クリムゾン・キングの宮殿」から、粗悪で魅力的なライヴ盤「アースバウンド」を第1期とする。
1969年のデビューから、激しいメンバーチェンジを経て、たどり着いた先は、リーダーであるロバート・フリップと他のメンバーとの音楽性の相違が要因となる崩壊であった・・・。
作品は、「クリムゾン・キングの宮殿」、「ポセイドンのめざめ」、「リザード」、「アイランド」、「アースバウンド」。パーソネルはすべて異なっている。つまり、1枚ごとに誰かが脱退し、誰かが加入しているのだ。
- 第2期 星無き聖なる暗黒に向かう、黄金のインプロヴァイザー
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キング・クリムゾン黄金期と誉れ高き、「太陽と戦慄」から、クリムゾン終焉を印象付けたライヴ盤「USA」を第2期とする。
もはやクリムゾンのブレインそのものとなったロバート・フリップは、新たなメンバーと共にクリムゾンを再結成。ブリティッシュ・ロック界きっての超強力なリズム・セクションを得て、黄金期とされる一時代を築き上げる。
作品は、「太陽と戦慄」、「暗黒の世界」、「レッド」、「USA」。パーソネルは1枚ごとに異なってはいるが、フリップ、ウェットン、ブラッフォードという布陣は固定。この時期のアルバムは、ライヴ感溢れるラフなパワーが魅力である。
- 第3期 超速アルペジオが生むキュービック・ラビリンス
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キング・クリムゾン新時代。パンク・ニューウェイヴ時代を生き抜く為に、エイドリアン・ブリューという新たな才能を迎え入れる。
ロバート・フリップは、旧来のプログレッシヴ・ロックの概念を打破すべく、アメリカンのエイドリアン・ブリューとトニー・レヴィンを迎え、ポリリズムと変拍子が生むダイナミズムに傾倒していく。
作品は、「ディシプリン」、「ビート」、「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー」。クリムゾン初、パーソネル同一の3枚である。
- 第4期 強固なダブルトリオが包囲するメタル・シャトー
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「ディシプリン」クリムゾンのメンバーに、スティック奏者トレイ・ガンと新鋭ドラマーのパット・マステロットを加え、ロック界では珍しいダブルトリオ編成となったクリムゾン。
単純にダブルトリオとしての音圧を利用した音作りを聴かせる曲から、2つのトリオ編成から生み出すことの出来る多様なリズムを聴かせる曲まで、非常に幅広く展開した。旧来のクリムゾンのスピリットを拡大解釈したその音楽性は、高い評価を受けた。
作品は、「ヴルーム」、「スラック」。ダブルトリオとしてのスタジオ盤は、この2枚のみ。ライヴ盤でこのラインナップの充実振りを垣間見ることが出来る。
- 第5期 先鋭たちが生み出すオルタナティヴ・ロック
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「スラック」の次回作を生み出すのに失敗したクリムゾンは、「プロジェクト1~4」に分裂し、それぞれが独自の実験を繰り返した。その成果「プロジェクトX」がキング・クリムゾンの新たな姿となった。
ダブルトリオからブラッフォードとレヴィンを除いたメンバーに落ち着いたクリムゾン。このメンバーが生み出した音は、ヘヴィでソリッド、スピーディなスリル溢れるオルタナティヴ・ロック。
作品は、「ザ・コンストラクション・オブ・ライト」、「しょうがない」、「ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ」。ブリュー独特のポップ・センスと、フリップの学究的なアルペジォ・ワーク、4人が持ち合わせるメタルの素養が見事に融合した3枚。
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