ELPファンの多くが、まずジャケットに仰天する。ニコニコした3人が、ラフな格好で浜辺に立っている...。この強烈なビジュアルは、従来のELPのイメージからは完全に離れたものだ。
内容で言えば前半5曲。これがこのアルバムの印象を決定付けている。従来のELPには希薄だったギター・サウンドがかなり前面に出ており、レイクのヴォーカルもかなりやわらかい。歌詞も何だか歌謡曲っぽく、ここにはプログレッシヴ・ロックの象徴だった彼らの姿はない。エマーソンのシンセ・ワークも「歌モノ」であることを理解しきっているような、盛り上げに徹する姿勢だし、パーマーのドラムも彼にしては珍しく(?)リズム・キープをしっかりやっているような印象。そう、前半はレイクのアルバムなのだ! 思えば、この時点でプログレッシヴ・ロックが「オヨビでない」ことを3人とも良く知っていたのではなかろうか。これらのナンバーを聞くと、培ってきたテクニックやメロディの組み立て方を、余裕の表情でサラッと違和感無く使用していることがわかる。ELP流のポップ・ミュージックを作るなら、レイクを中心に制作するのが妥当であり、その方向性はかなりの水準で達成されていると思う。
後半、「キャナリオ」で突如シャッフルのリズムに乗ったお得意のELP節が現出する。皮肉にも、ELPのイメージはエマーソンそのものだったのがここで判明してしまった。最後の「将校と紳士の回顧録」は、組曲というプログレの構成要素に則ってはいるが、レイクのヴォーカルが中心。前半の雰囲気を踏襲した上で、プログレの要素を織り込んだ佳曲だ。
「キャナリオ」以降、ELP節で締めくくるのではなく、こういった粛々としたナンバーを持ってくるあたり、トータル・バランスが良く、世間の低評価は是非とも吹き飛ばしておきたいものだ。
- 原題
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Love Beach
- 邦題
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ラヴ・ビーチ
- パーソネル
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KEITH EMERSON - Piano, Keyboards
GREG LAKE - Vocals, Bass, Acoustic & Electric Guitars
CARL PALMER - Drums, Assorted Percussion, Electric Percussion
※ ジャケットにクレジットが明記されていないので、独自に再構成しました。
- 曲目
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- All I Want is You (欲しいのは君だけ)
- Love Beach (ラヴ・ビーチ)
- Taste of My Love (恋の味)
- The Gambler (ギャンブラー)
- For You (おまえのために)
- Canario (キャナリオ)
- Memories of an Officer and a Gentleman (将校と紳士の回顧録)
- Prologue/The Education of a Gentleman (プロローグ/紳士の教え)
- Love at First Sight (愛を感じた時)
- Letters from the Front (最前線からの手紙)
- Honourable Company (栄光の歩兵中隊)
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