「展覧会の絵」が予想外のヒットを飛ばし、勢いに乗ったELPが放ったのがこの「トリロジー」だ。3部作という意味を持つタイトルは、アルバム全体を現すものではなく、あくまで一曲のタイトルを持ってきたに過ぎないようだが、規模は小さいながらも組曲形式の曲が多い野心作である。
「タルカス」に比べ、足元が軽くなった印象を受けるこの作品だが、それはよりキャッチーな方向性を大作主義に持ち込んだことが影響しているように思われる。「永遠の謎」組曲は初作以来の作風を色濃く漂わせているが、レイクのソロそのものとなった「フロム・ザ・ビギニング」に代表されるメロディアス路線や、名曲「ホウダウン」のように爆発的な明るさを湛えたハイ・テンポなインスト、新型ムーグを用い、実験精神に溢れた「奈落のボレロ」など、新しい路線も散見される。
事実、そういった点から、「散漫だ」という意見や、ガリガリのプログレ路線に乏しいことから「おとなしい」といった意見もあるが、それはあくまでコアな見方を突き詰めていった結果で、この作品への正当な評価とは言えない。悠大さ、明るさ、陰鬱さ、これまでELPが提示してきた様々な要素が贅沢に圧縮されて収録されている。
また、キャッチーな部分でヒットを狙ったにしても、健全な方向性から来る爽快な作風だと思うし、本作は傑作に違いないと思うのである。
- 原題
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Trilogy
- 邦題
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トリロジー
- パーソネル
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KEITH EMERSON - HAMMOND ORGAN C3, STEINWAY PIANO, ZOUKRA, MOOG SYNTHESIZER III C, MINI MOOG,MODEL D
GREG LAKE - VOCALS, BASS, ELECTRIC & ACOUSTIC GUITARS
CARL PALMER - PERCUSSION
- 曲目
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- The Endless Enigma (Part One) (永遠の謎 パート1)
- Fugue (フーガ)
- The Endless Enigma (Part Two) (永遠の謎 パート2)
- From the Beginning (フロム・ザ・ビギニング)
- The Sheriff (シェリフ)
- Hoedown (ホウダウン)
- Trilogy (トリロジー)
- Living Sin (リヴィング・シン)
- Abaddon's Bolero (奈落のボレロ)
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