「エゴイスティック・トリオ、またの名をプログレッシヴ・エンタティナー」
ザ・ナイスのキース・エマーソン、キング・クリムゾンのグレッグ・レイク、アトミック・ルースターのカール・パーマー。プログレッシヴ・ロック・バンドのメンバーが、更なるプログレッシヴ・ロックを求めて集合し、ELP(Emerson, Lake & Palmer)が結成された。
元々有名で優れたミュージシャンが結成したグループ。それらは当時「スーパー・グループ」と呼び慣わされていたが、このELPも例に漏れず、スーパー・グループとして鮮烈なデビューを遂げる。
圧倒的なテクニックと奇抜なステージ・パフォーマンス、様々なクラシカル・アプローチの手法を持つキーボーディストが、キース・エマーソン。
グレッグ・レイクは、シアトリカルな音場を歌声だけで作り出すことが出来るヴォーカリスト兼ベーシストで、そのベース・プレイは走りがちな他の二人を抑え、リズム・キープに欠かせない存在だ。
ドラマーのカール・パーマーは、ジャズやクラシックに裏打ちされた驚異的な手数とテクニックで、音階の無いパーカッションをメロディアスに演出する天才であり、ELPがギターレス編成となった要因を作ったと言われる逸材。
ある意味、70年代のプログレッシヴ・ロックの波を最も象徴したグループと言え、打ち上げ花火のようにとんでもない爆発と閃光を発し、急速にその姿を隠して行ったのだが、その強烈な音楽性は未だに新たなリスナーを獲得している。
- 第1期 電子音ファンファーレが祝福するスーパー・グループの登場
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ELPのファースト・アルバムから、ライヴ・レコーディングにより誕生した「展覧会の絵」を第1期とする。
鮮烈なデビューを飾ったスーパー・グループELP。初期の3枚は、既に完成されたパフォーマンスを、いかに拡大していくかという命題が、見事に達成されていく瞬間が収められている。
作品は、「エマーソン、レイク&パーマー」、「タルカス」、「展覧会の絵」。どんどんムーグ・シンセサイザーの占める地位が拡大していく。
- 第2期 究極のプログレッシヴ・エンタティメント炸裂!
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快進撃を続けるELP。勢いに乗ったグループは、傑作を立て続けに発表し、その人気を不動のものとする。だが、シーンはプログレッシヴ・ロックから乖離しつつあった・・・。
「展覧会の絵」で、名実共に世界的なスーパー・グループとなった彼らが、自信を持って究極のエンタティメント作品を発表し、それをライヴで完全再現するという恐るべき手段を見せ付けた。この時期のアルバムは、そのドキュメントとして最適だ。
作品は、「トリロジー」、「恐怖の頭脳改革」、「レディーズ・アンド・ジェントルメン」。中でも、「恐怖の頭脳改革」は、ロック史に刻まれた名盤中の名盤だ。
- 第3期 解体をはじめたスーパー・グループ最後の閃き
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プログレッシヴ・ロック自体の存在がかなり怪しくなってきた時期、ELPは「レディーズ・アンド・ジェントルメン」以来しばらく沈黙する。その後放った作品は、以前のような輝きを著しく失っていた。
一時期のような作品に対する衝動は薄く、ソロ作品の寄せ集めやボーナストラック集、中途半端なライヴ盤に終始。そんな中、「ラヴ・ビーチ」のような異色作を生み出したことが、この時期を見据えるキーポイントだ。
作品は、「ELP四部作」、「作品第2番」、「ラヴ・ビーチ」、「イン・コンサート」。「ELP四部作」は2枚組というヴォリュームのスタジオ盤、「イン・コンサート」はライヴ盤である。
- 第4期 奇跡のメンバーチェンジ
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復活した「ELP」は、「P」をコージー・パウエルへとチェンジし、一瞬の煌きを放った!
カール・パーマーと同じイニシャルを持つハードロック界のスーパー・ドラマー、コージー・パウエルを迎え新生ELPとして復活したが、「ELP」の略称はパーマーの猛反対で使用不可となり、その活動も一瞬で潰えてしまう。
唯一のスタジオ盤は「エマーソン・レイク・アンド・パウエル」。シンプルなジャケットに新グループの意気込みが垣間見られる。
- 第5期 コンテンポラリーとプログレッシヴの狭間で
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折からのプログレ再結成ブームの中、ELPも例に漏れず再度復活。
映画音楽家としての活動も目立つキース・エマーソン、ソロ活動やエイジアのピンチヒッター等でその美声を響かせていたグレッグ・レイク、エイジアでの商業的成功を手にしたカール・パーマー。三者が再度集合して作り出された音楽は、ELP空白期におけるそれぞれのキャリアが投入されたものとなった。
しかしながら、派手なプログレッシヴ・ロックの要素は薄れ、スタジオ盤には、当時の空気を反映したコンテンポラリーでコンパクトな楽曲群が並ぶ。
作品は、「ブラック・ムーン」、「ライブ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール」、「イン・ザ・ホット・シート」の3枚。「ライブ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール」はライヴ盤だ。
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