1枚ものとしては、和田アキ子最良のベスト盤。ヒット・シングルを時系列的に網羅し、根底にある魅力と時代による楽曲の変遷とが手に取るように分かる。
「和製R&B」が意味するところは、このベスト盤でほぼ理解できるだろう。まず、デビュー曲から検証してみると、割とオーソドックスなブルーズのリズムに乗って、実に生き生きと「日本の歌謡曲」が歌われている。それはかつてロカビリーを様々なシンガーがカヴァーしたのとは異なり、むしろ笠置シヅ子や美空ひばりが歌ったような和製ブギーの血を引くものとすれば理解しやすい。そこには、日本人好みのメロディーと、いわゆる「舶来モノ」のリズムが融合したときの何とも言えない快感がある。
「どしゃぶりの雨の中で」になると、さらにその傾向は強くなる。極めてブルージィなアレンジメントではあるが、メロディは日本の歌謡曲そのもの。「笑って許して」、「天使になれない」も同様の色が強い名曲である。「古い日記」に至っては、ジェイムズ・ブラウン顔負けのパワフルなソウルなのだが、やはり歌謡曲の要素がビシビシと響いて気持ちいいことこの上ない。
「あの鐘を鳴らすのはあなた」は、和田アキ子が最も大切にしていると公言している曲だが、このアルバム中の白眉であろう。しかし、意外にも歌謡曲っぽさが希薄で、メロディ的にはシャンソンのようで優雅である。
問題は「雨のサタデー」以降の曲。ここからは、従来とは逆の発想を元に作られた曲が殆ど。つまり、歌謡曲そのもののアレンジメントおよびメロディを、和田アキ子がソウルフルに歌い上げるというもの。この代表的な成功例が「だってしょうがないじゃない」、「愛、とどきますか」である。前半と後半、好みは分かれるところかもしれない。
- タイトル
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和田アキ子 ベスト・ヒット
- 曲目
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- 星空の孤独
- どしゃぶりの雨の中で
- 笑って許して
- 天使になれない
- 夜明けの夢
- あの鐘を鳴らすのはあなた
- 古い日記
- 雨のサタデー
- 二杯目のお酒
- コーラス ガール
- 抱擁
- だってしょうがないじゃない
- 抱かれ上手
- 愛、とどきますか
- 夢
- 運命~DESTINY~
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