忍びの8「時をかけるネコマタ」

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 今度こそ風花編(笑)。高校生活にスポットを当てる構成で、忍者という荒唐無稽なテーマを日常の延長上に持ち込む事に挑戦しています。

 これまでも、メンバー各々がリラックスしているシーン等に日常感覚を感じさせる部分は多々ありましたが、シチュエーションとしては今回が初ではないかと思います。

 以前、霞の研究室が登場したりと、「大学生」としての霞をピックアップしたエピソードもありましたが、その研究自体は妖怪対策の一環であった為、何となくファンタジーの範疇に収まっていた感があります。今回はごく普通の高校生達が妖怪の事件に巻き込まれるという形で展開されるので、日常と非日常のせめぎ合いを見る事が出来ました。

ネコマタ

 前回に続いて登場のネコマタ。

 言うまでもなく「妖怪ウォッチ」が元ネタなわけですが、今回は前回程の悪ノリは感じられず、若干おとなしい印象に。時間の操る事で何度でも蘇ったり、時間移動能力が健在である等、より「敵」としての属性が強調されています。

 風花の友達を人質に取るという悪辣さを見せたり、「終わりの手裏剣」を探す密命を帯びていたりといった、正統な悪役を感じさせていたネコマタですが、一方で弱点をうっかり吐露するといった間抜けな面も盛り込まれており、良いキャラクターになっていたと思います。

 今回は風花と同様、凪の高校生活も少しだけ垣間見る事が出来ます。とは言え、登下校風景だけなのですが、まぁこれは風花も基本的には一緒。さすがに両者とも授業風景までは描かれませんでしたが、その辺りは今後に期待しましょう。

 面白いのは、エピローグで風花と共に忍術の一端を披露するシーンが用意されていた事。もし、今回の風花の友達・マリコとカナが再登場するような事があったら、凪との淡いロマンスも...と予感させるような爽やかで格好良いラストでした。伏線はバラ撒けるだけバラ撒いていた方が良いですからね。

風花

 今回のメインテーマは、風花が忍者以前に普通の高校生でありたいと思っている事でした。

 このようなテーマは割と頻繁に導入されるものですから目新しさはないのですが、忍者という非日常的な要素がカナとマリコに文字通り忍び寄る事で、コメディ仕立てにしている処がミソ。風花の悩み等どこ吹く風の兄・天晴は、風花の友達に会うなりいきなり「かくれんぼ」等と言い出して風花を慌てさせ、家の中に入れば壁から父・旋風が現れ、畳から霞、火鉢から八雲が現れるという素晴らしさ。特に、普段は割とクールな霞が、こぼされたお茶の熱さに耐えられず姿を現す様子が非常に可笑しく、一連のコミカルなシーンに花を添えていました。

 結局、カナとマリコの二人はネコマタにさらわれてしまうのですが、そのタイミングも絶妙でした。二人がネコマタに遭遇したのは八雲によって粉塗れにされた直後。伊賀崎邸から早く出たいと考えていた矢先だった為、風花に対するネガティヴで好奇な視点が育つ前でした。そして、二人は忍者である風花に助けられる事になり、風花を見る目が尊敬(?)に変わります。そこの筋運びは、「ニンニンジャー」のテーマである「忍びなれども忍ばない」を語る上で極めて有効だったと思います。

 普通ならば、ヒーローである事を隠し、世を忍ぶ為に日常生活で耐え忍ぶという、いわゆる「孤高」を表現していくのが定番なのですが、今回の風花に顕著なように、特殊能力を肯定しても友達を失わないというポジティヴな作風が「ニンニンジャー」なのでしょう。「忍ばない」事が肯定される日常を丁寧に描いたという点で、本エピソードは非常に重要でした。

風花の示す先

 風花については他にもトピックがあって、それは実は「忍者を仕方なくやっている」という暗部を抱えている設定です。

 これはちょっと意外だったのですが、意外ということは、ああなるほど、これまで風花のパーソナリティって深く描かれてなかったんだな...という事でもあるわけで。別のアングルから見ると、高校生活が始まった事で日常への憧れが前面に出て来たという捉え方も出来るでしょう。

 勿論、冒頭での忍者に対してネガティヴな風花にもリアリティがあります。ただ、それを引っ張るのは「ニンニンジャー」の世界観には合致しないという事でしょう。従って、この悩みは結構簡単に霧散します。ネコマタの能力で幼少期の自分(と天晴)に逢い、その当時の自分が優れた忍者になるという目標を掲げていた事を思い出した事で、風花の忍者に対する考えは180度変わるわけです。幼少期と高校生時期とでは夢や目標が違っていて当然ですが、大切な事を思い出す...という作劇は非常に有効なのです。

 当然ながら、「ネガティヴな思いを引っ張る」方がドラマは重厚になりますが、それは「元気な妹」というイメージが定着しつつある風花に孤独を与える事になり、マイナス面の方が大きいと判断されたのではないでしょうか。良い意味でステレオタイプなキャラクターを、わざわざドラマを使って構築していく手法なんですよね。それは八雲にしても、凪にしても、そして霞にしても同様です。天晴は初めからあの調子なので問題ないでしょう(笑)。

忍タリティは...?

 今回は、風花が忍者に対してポジティヴになり、悉くセンターを奪うという大活躍を見せる重要回でありながら、その忍タリティについては言及される事なく終わりました。

 これにはちゃんとしたエクスキューズがあって、ネコマタが封印の手裏剣を持たない妖怪であり、忍タリティの発現を端的に現すものがなかったという事なんですね。恐らく、風花は次レベルの忍タリティを獲得したのではないでしょうか。ネコマタとの決戦におけるチームワークの良さ、「圧倒的」と言っても過言ではない戦いっぷりには、同時に全メンバーの成長も窺えます。

スターニンジャー

 チラ見せですが、追加戦士も登場。今シーズンは登場が早いですね。英語でまくし立てる(?)強烈なキャラクターにも注目したい処です。一応は和風の感覚で統一されているステージに、「洋物」が飛び込む事でどう引っ掻き回されるか...興味は尽きません。CMによる「ネタバレ」は、やはり放映スケジュールの変更がもたらしたものでしょうね...。

雑感

 追加戦士登場直前に、改めて「ニンニンジャー」がどういうベクトルをとっているのかを示す回でした。風花を使ってそれを表現したのは巧いと思いますし、各シーンの描写も丁寧なのでコミカルさもより際立つという見事さ。これからも日常描写が時折織り込まれると良いですね。

 高校生という設定だけで色々なシチュエーションが期待出来ますし、大学生に魔法学校生、基本的に無職っぽい人等、題材には事欠かないので期待は増す一方です。

 次回は早速八雲のプライベートに関するトピックが! スターニンジャーを前面にフィーチュアしない辺りが心憎いですねー。