忍びの7「春のニンジャ祭り!」

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 正に「祭り」なスペシャルエピソード。「祭」がコンセプトの「ニンニンジャー」にうってつけの題材だったと言えるでしょう。

 スーパー戦隊40周年、しかも4月5日は「ゴレンジャー」の初回放映日とあって、絶妙過ぎるタイミング...となる筈でしたが、「ニンニンジャー」が一週遅れでのスタートとなった為、その絶好の機会を逃してしまいました。数奇なものです。しかしながら、4月12日を「よい忍者の日」と語呂合わせする事でお祭り騒ぎを更に盛り上げようとする辺り、やはり「忍ぶどころか...」の気概に溢れていると言えます。

 今回登場するのは、戦隊の禁を破る衝撃のゲスト。スペシャルエピソードでありながら、世界観を壊さない配慮も見事。これから先輩ヒーローを登場させるにあたり、一つの道標になったと言っても過言ではないでしょう。

ニンニンジャー

 先輩ゲスト編ともなると、現役が食われてしまうきらいがありますが、今回はその辺りが巧く処理されていると言いますか、ちゃんと現役が主役になっていると思います。

 まず、冒頭の稽古の様子が早くも劇中の五人のみならず、キャスト陣の成長をも感じさせる内容になっていました。「立ち回り」と形容出来るアクションをこなせるようになっていて驚きました。それぞれの優劣があったり、五人の姿を優しそうに見つめる旋風の姿があったりと、この冒頭のシーンに色々な良さが凝縮されていたと思います。

 また、先輩と対峙する際、当然ながらそのフロント役を担うのは天晴なのですが、彼は基本的に先輩が云々というより我が道をとことん突き進んでおり、その意味で本エピソードの主役をしっかりと張れていました。こういったエピソードでは、先輩に弱点をズバリ指摘されて悩むという展開が定番になりそうですが、そんなものはどこ吹く風だったのが「らしい」と思います。先輩の心配をぶっちぎって事態を解決に導く様は本当に頼もしい。また、そんな天晴を無条件に信頼している八雲、兄妹であるが故に最悪の状況を想像してしまう風花等、各キャラクターの配置も絶妙でした。

 先輩達が極辛な評点を付けても、相変わらず五人の成績の序列が変わらないというコミカルさも満点。その成績に依る事なく、土壇場だと高難度の忍術を使いこなしてしまう天晴の凄さが際立つという展開も見事でした。

風花

 面白いのは、風花が前回のお礼を何とか兄に伝えようとしている様子が描かれている事。

 ストーリー上は徹頭徹尾、天晴の話でしたが、今回は風花の存在がある事でいわゆる「忍者バカ」な天晴に血を通わせていたと言えるでしょう。天晴はあまりにも悩まないキャラクターなので、「ニンニンジャー」のアイコンではあってもストーリーの牽引役にはなりにくい存在(勿論、この辺りは今後変化して行く筈)。そんな天晴に容易に感情を寄せられるキャラクターとして、風花の存在は貴重であり、彼女は天晴のアニマとして当面の間機能する事になりそうです。

 それにしても、兄に対してあまり素直になれない風花の言動は楽しいものでした。小難しい事を考える暇もなく、その可愛らしさに当てられてしまいます(笑)。

旋風

 今回は、旋風が「本音」を吐露するシーンが用意されていましたが、これが今後にどう影響するのか、かなりボカしたものになっています。「忍術をキッパリ諦めた」のか、「もう一度忍術を勉強すると決めた」のか、その辺りが読めません。もしかすると、単に「先生(サスケと鷹介)」を登場させる為の前口上に過ぎなかったのかも...。

好天とアカレンジャー

 今回はラストシーンのみの登場。何故かアカレンジャーと知り合いで、好天なら有り得ると思わせる辺りも巧み。アカレンジャーの登場は、40周年という事でのサービスだったと思しいので、彼が海城剛だったかどうかという点も含めて、深く議論するのは避けた方が良いでしょうね。私としては、「忍者」を名乗る戦隊は過去にもあった(忍んでいたから伊賀崎一門にも認知されていない・笑)と考えますが、それ以外についてははっきり存在したとは言い切れないと思ってます。

ネコマタ

 正しく「妖怪ウォッチ」です。

 関智一さんが多分アドリブを効かせまくって、余計にネタを仕込んできたものですから、あからさまでしたよね。

 しかしながら、パロディキャラに留まる事はなく、ちゃんと時間軸に関する要素をストーリーに仕掛けとして盛り込んで、その能力が単なる「阻止すべきもの」では「ない」とされているのが素晴らしい。また、「終わりの手裏剣」を巡る「引き」としても利用され、構成力の高さを感じます。次回にも登場するようですし...。

 ちなみに、アカレンジャーの声も関さんだったようです(笑)。

ニンジャレッド=サスケ

 初の忍者系戦隊である「カクレンジャー」より登場。

 「カクレンジャー」は、前々年の「ジュウレンジャー」で開花したファンタジー戦隊を、最も意欲的に昇華させたシリーズだと言えます。タイトルからしてまず駄洒落。基地を構えずロードムービー的な展開を為し、前半は敵妖怪に組織がない。講談師がナレーションの代わりに講釈を行い、リーダーはヒロインのニンジャホワイト。後半はやや従来の戦隊の図式に回帰しましたが、その「青春を謳歌する忍者」という路線は最後まで貫かれました。

 サスケは、リーダーでないレッドという鮮烈な設定により、特に前半はある程度自由気ままに動く人物でした。その点でも天晴の先輩と言えます。レッドで最年長であるが故に、本来のリーダーであるニンジャホワイト=鶴姫よりもリーダーらしい面を見せる事があったり、苦悩したりといった事もありましたが、基本的には自由な若者でした。

 今回登場したサスケは、やはり20年もの時を経たとあって、随分と落ち着いた様子に。その語りも含蓄に富んでいて、鷹介よりも更に経験豊富な忍者といった趣がありました。しかし、現役を差し置いて前へ出て行こうとする面は相変わらずで、往年の切り込み隊長っぷりを発揮していて嬉しくなりました。

 最新の映像技術で描かれる分け身の術や、楽しいアメコミ風描き文字等、「カクレンジャー」の世界を再現するカットも多く、ファンも納得の活躍だったと思います。

ハリケンレッド=椎名鷹介

 史上二番目の忍者系戦隊、「ハリケンジャー」のリーダー。

 「ハリケンジャー」も「カクレンジャー」と同様、数々の意欲的な設定を試行したシリーズです。前年の「ガオレンジャー」が大ヒットを記録して社会現象になった為、「その後」を模索する上でシリーズのカンフル剤とも言うべき忍者モチーフとなったのではないかと思います。タイトルは初の「○○ンジャー」となり、「レンジャー」でもなくなった衝撃はかなりのものでした(その後、「ゴセイジャー」でとうとう「ジャー」のみとなりました)。「ガオレンジャー」で導入された多頭合体の要素を敢えて継承せず、一体感溢れるロボ+武器になる小メカという構成も意欲的で、この小メカのコレクション性が、後々平成ライダーや戦隊でも定番化する事になります。

 鷹介は、「ハリケンジャー」放映当時は猪突猛進気味の元気な少年といった趣。こちらもサスケと同様に典型的な斬り込み隊長系レッドでしたから、今回の登場で随分と大人になったなぁ...と感慨を覚えるわけです。

 「ハリケンジャー」という作品は、ゴウライジャーや追加戦士のシュリケンジャー、敵のジャカンジャがあまりにも強烈過ぎて、本来の主役である三人が悪戦苦闘していたイメージがあるのですが、それ故なのかキャスト、スタッフ陣の結束が非常に固く、近年はキャスト陣主導でのVシネマ企画が立ち上がり、見事に完成する等、その熱さたるや他のシリーズの追随を許さないものがあります。

 今回の鷹介は、先輩であるサスケより一歩引いてはいるものの、「完成された忍者」としての貫禄を存分に感じさせる人物になっており、その格好良さは筆舌に尽くしがたいものです。勿論、後輩を導くにあたって、当時と変わらない熱さを見せており、やはり鷹介は鷹介なのだと納得させられるわけです。

 ちなみに、サスケや鷹介の活躍シーンでは、当時のBGMが使用されたり、わざわざ当時のエフェクトを踏襲した変身シーンが作られていたりと、その充実度は半端ないものとなっています。「ゴーカイジャー」でのハリケンジャーの扱いも破格でしたが、トータルイメージとしては今回程ではないのでは。盛り上がりましたねぇ。

 天晴との関わり方ですが、根本は似たようなキャラクターなので、同類が先輩風を吹かせているという見方も出来なくはないです(笑)。しかし、やはり経験は人を大人にするもの。正に二人の「先輩」は「先生」になっていました。前に出まくるのはサービスという側面もあるでしょうが、やはり本来の持ち味を生かしたと評する方が妥当でしょうね。

雑感

 番外編的なお祭り騒ぎエピソードかと思いきや、本編の世界観へとディープに入り込んだ一編で驚きました。

 同モチーフの戦隊を先輩あるいは先生として登場させるという手法は、長い歴史ならでは。一方で単なるサービス編に終始しない丁寧な作風には好感が持てます。

 こうなったら、歴代忍者メンバーも招聘して欲しい処。星川竜さんとかハルカさんとか、ボーイさんなんかも強引に...。後は、八雲の先生として小津一家のどなたかが出演とか。色々妄想が可能です(笑)。

 気を取り直して、次回は正真正銘の風花編っぽい雰囲気。学校生活の一端が描かれるとあって、そのリアリティにも注目したい処です。