最終四部作の第二弾。
好天の思惑を超え、遂に新たなラストニンジャへの道を見極めた六人。そして、遂に忍タリティを取り戻した旋風。牙鬼幻月との一騎討ちに挑む好天を加え、サブタイトル通り「親子三世代」のニンニンジャーが姿を現します。三人のアカニンジャーを擁する八人戦隊は壮観! このような展開を想像していなかっただけに、今回のラストにちょっとだけ登場したにも関わらず、衝撃度は凄まじいものでした。
一方で、牙鬼久右衛門新月は精彩を欠くこととなり、やや足早な展開に少々苦笑する処もありましたが、クライマックスに向けての段取りは概ね好調と言えるでしょう。
蛾眉雷蔵、出陣
牙鬼幻月により復活した蛾眉雷蔵。初期編に於いて気まぐれな振る舞いをしつつもニンニンジャーを苦しめ、天晴にギリギリで敗れはしたものの、その実力はニンニンジャー個々人を凌駕する印象の強敵でしたが、さすがに現在においてはその実力も見劣りするというもの。
オボログルマ・マークIIを駆って巨大戦を挑むも、尺の関係もあってかすぐに敗走し、牙鬼久右衛門新月への助太刀に来たのかと思いきや、退散を進言しただけといったように、著しく良い処に恵まれません。幹部というよりは、一怪人に近い扱いですね。ただし、今回で退場とはならず、まだ続投のようなので、残る二話で印象が変わるかも知れません。
牙鬼久右衛門新月
今回はある意味、伊賀崎流の抜け忍である十六夜九衛門の敗北を描く一編でした。今回の根底に流れるテーマとしての「覚悟」というターム、その捉え方の違いが雌雄を決するというのは巧い流れでしたね。
牙鬼久右衛門新月は、ラストニンジャである好天を殺す事に関して躊躇が全くなかったわけで、その点では好天の教えをシンプルに継承し得る人物だった事が分かります。しかし、その実、旋風から忍タリティを奪い、妖力で好天を超えようとする等、「ニンジャ」であるか否かと問われれば外道と応えざるを得ないわけで、キンジに言う処の「強さを渇望する弱さ」がここに現れています。これは「覚悟」というには少々はばかられるように思います。
一方で、後述しますが、天晴達は好天の定義するラストニンジャから外れた道を見つけ、それを極める事を「覚悟」と称しました。そこに気付かせたのがキンジだったのは、個人的には意外でしたね。ただ意外とは言え、キンジこそが最も十六夜九衛門との接触を持った人物ですので、大いに納得もしました。もう少しこの辺りの掘り下げが欲しかった気もしますが、まとめに入っているという事もあって、テンポの方が重視されていたようですね。
今回の「道を分かつ」という感覚、スター・ウォーズのジェダイとシスに近いものがありますね。というより、古今東西のスピリチュアルな基底を持つフィクション上の武芸は、概念が似通ってくるのかも知れません。十六夜九衛門に、力を求めるが故の心の弱さがあるという話は、スター・ウォーズのアナキンの「堕ち様」にそのまま通じていますし、天晴達が伝統にとらわれない道を選択するというのは、アナキンの息子であるルークが通る道と同質です。ルークに関しては異論もあるでしょうけど、ジェダイの掟をことごとく破った末に、シスではなく父としての、アナキン=ダース・ベイダーの心を信じたという点において、ジェダイではなく自らの信念に基づいて行動したと言えると思います。
天晴達が「掟をことごとく破った」わけではありませんが、自分達で新しい概念を獲得していますから、強ち的外れではないと思います。
好天 VS 牙鬼幻月!
今回の白眉!
ラストニンジャ=伊賀崎好天と、遂に復活した宿敵・牙鬼幻月の対決です。
好天役の笹野さん、かなり激しいアクションがサマになっていて、実に素晴らしい。牙鬼幻月の重量級スーツをものともしない動きも見事で、両者の卓抜した力の激突が存分に表現されていました。それに加え、ど派手で絢爛豪華な合成を駆使した映像により、忍術と妖術の頂上決戦とも言うべきシーンを作り出していて、思わず唖然とするような迫力に満ちていました。これは本当に凄い。
これは「バトルフィーバー」の倉間鉄山将軍 VS ヘッダー指揮官という戦隊史上最も鮮烈な「武術頂上決戦」の、正に現代版と言える仕上がり。惜しむらくは、牙鬼幻月が素面役者ではなくスーツだという事くらいでしょう。しかしながら今回の場合、牙鬼幻月がスーツであろうとも問答無用の迫力を醸し出していた(麦人さんの声も抜群!)ので、単に私の趣味の問題に過ぎませんね(笑)。
好天の今回の戦い振りを見るに、やはり前回天晴と対峙した際は、確実に手を抜いていたものと分かります。勿論、天晴とて易々と後れを取る筈もありませんが、好天の本気が炸裂したら、ただでは済まなかっただろう事が容易に想像出来ます。手を抜いていたという事は、いち早くラストニンジャの忍タリティを譲りたかったという線が濃厚ではないかと思っているのですが...。最早それはどうでも良い事となりました。
新たなラストニンジャへの道、そして...
新しい道を切り開く事にこそ覚悟が要る...これは納得出来る設定ですね。これはフィクションの中だけでなく、実社会においてもそのような場面に出くわす事が往々にしてあります。
天晴達が「外れた道を往く」事は、文字通り「外道」であるとも言えますが、そこは伊賀崎流を極め、伊賀崎流に新たな風を吹かせるという点で、「必要な破壊と創造」だと好天が認める事になりました。現状、伊賀崎唯一の究道者たるラストニンジャ=好天に認められれば、それは正道ですからね。
そして、いよいよ十六夜九衛門から忍タリティを取り戻したかつての天才忍者・旋風が復活。伊賀崎流の世界にとらわれていた十六夜九衛門を、伊賀崎流からのブレイクスルーを果たした天晴達が討ち果たし(まだ死んでませんが)、旋風に力が戻ってくるという爽快さ。しかもここでアカニンジャーに変身してしまうという怒濤の展開。いわば旋風は「好天の秘める冷酷さを否定した実子」ですから、彼の子供達の世代が旋風の導きを得て殻(因習と言い換えても良いでしょう)を打ち破ったという図式が鮮やかに示された事になります(そしてこれは、わざわざ「夢」に関する旋風の「格言」として回想の形で再提示されます)。
さらに、忍者一番刀も、忍シュリケンさえも必要とせずアカニンジャーに変身する好天を加え、三人の三世代アカニンジャーが並び立つ絵面の異様さは、他の面々を加えて総勢八人のニンニンジャーとして壮観なビジュアルを提供します。好天の「果てなき日輪」、旋風の「切り裂く旋風」という見栄も格好良すぎて目眩がしました。好天アカニンジャーの「爺」の文字にはちょっと笑ってしまいましたが...。
次回
今回は八人のニンニンジャーが並び立った処でエンディングとなりましたので、好天や旋風のアカニンジャーの活躍はお預け。次回がすこぶる楽しみな幕引きでした。旋風がタヌキの置物から何を見付けたのか、その辺りも次回で明らかになるものと思われます。残すところ後二話!
天地人
ついに十六夜九衛門から忍タリティを取り戻した旋風と、それを喜ぶ天晴達ですが、その前のシーンで牙鬼幻月に苦戦する好天を見てるだけに、何やってんだ、早くしないと好天がやられちゃうぞとテレビの前でやきもきしてました(苦笑)
いいシーンでしたけど、きっとそう思っていたのは自分だけじゃないと思います。
ただ、好天と牙鬼幻月の対決シーンは盛り上がりましたね。
老いてなければと思わせるような、すさまじい技の攻撃も良かったですし、それを上回る牙鬼幻月の強さも感じさせましたし、それだけに3人の赤が揃った時のシーンは、あとちょっと何で見せないんだと(苦笑)思わず感じてしまいました。
ただ、旋風の忍タリティを失った十六夜九衛門がどう動くのか、気になりますね。
それではまた
竜門 剛
九衛門の弱さに気づくのがキンジである、というところが、これまでのキンジのドラマと繋がっていて、とても納得できるものでした。それだけに、もう少しライバル関係が描けていればと、もったいない気もしますが。
好天と幻月との対決も凄まじく、結局のところ、単純な強さではニンニンジャーたちは全くかなわないということがはっきりしてしまいましたね。まさしくジョーカー的存在です。
でも、だからこそ旋風の言葉で、力ではなく心で乗り越える、新たな道を見つけるという展開が、実に燃えるものになりました。
個人的には、クライマックスに向けて九衛門にもうひと暴れしてもらいたいところですが・・・。