忍びの43「伝説のニンジャ!妖怪かるた大作戦」

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 早いもので、もう年の瀬ですね。「ニンニンジャー」も、前回で一旦区切りが付いているので、今回はお気楽(?)総集編となりました。

 ただし、年明けから開始される最終編への布石がしっかりと打たれていて、その段取りの良さには感心する処。総集編自体もだれる事なく、驚異のビジュアルも登場するなど、「総集編=予算削減」、「総集編=スケジュール調整」というイメージを払拭するに足る楽しい一編となりました。

 勿論、驚きのゲスト登場も一大トピック。「彼」については生死不明という事になっているので、今回の登場は別の意味でも驚きとなりました。

フダガエシ

 オリジンの「札返し」は、お札を無効化するよう働きかける幽霊の一種ですが、その語感を拝借してカルタの札を返す...という妖怪に換骨奪胎。なんとスーツ造形物がないという、前代未聞の怪人となりました。

 造形物がない事で、逆に器物妖怪としての印象が強くなり、「ニンニンジャー」における妖怪の、最もプリミティヴな部分に迫っていくものとなっています。

 一つ気になる点は、このフダガエシの「表」にあった妖怪の存在。それは「輪入道」です。天晴の言にもありましたが、本編未登場の妖怪なのです。デザインは輪入道のトータルイメージに近い面構えで何とも格好良い。今回カルタの札になる為だけに造形物が用意され...とまあ冗談はこのくらいにして、ワニュウドウは来年公開の「ニンニンジャー VS トッキュウジャー」に登場する妖怪で、予告的なチラ見せだったわけですね。

 ところで、このフダガエシとの決戦シーンは、ミクロ化して戦うという、最近の特撮ではあまり見られなくなったビジュアルで展開されました。このシーンの作り込み具合が物凄く、これだけでも劇場版規模。総集編で浮いたコストを全部つぎ込んだのではないかと思わせるくらいの素晴らしいシーンでした。とにかく、操演、合成、撮影のシンクロ具合が完璧で驚かされました。

天空忍者シュリケンジャー!

 「忍者の名誉を守る委員会」から、ニンニンジャーの冬期講習を担当する為に派遣されてきたという設定で登場したシュリケンジャー。言わずと知れた「ハリケンジャー」の謎めいた追加戦士です。

 シュリケンジャーの特徴は、「千の顔を持つ」と呼ばれるだけあって、いわゆる「変身前」が複数存在するというもの。その「変身前」は主に90年代の歴代戦隊ヒーローがつとめ、その顔ぶれの豪華さが当時のファンを歓喜させました。最後に登場した「変身前」は大葉健二さんで、この出演が後の「ゲキレンジャー」への重要なゲスト出演や、近年のギャバン復活に繋がったのではないかと思う次第です。

 さて、シュリケンジャーは「ハリケンジャー」本編ではほぼ死亡した事になっていましたが、後からその生存がほのめかされたり、別の人物が「襲名」していたりと、その実体は謎のままです。今回の登場に際しては、恐らく細かい設定については考慮されていません。そもそもサスケと鷹介が顔見知りだったり、山地闘破が戦隊の世界に違和感なく溶け込んでいるような雰囲気ですから、単に最強のレジェンド忍者の一人という捉え方だけしておけば良いでしょう。総集編を持ち込む為の「超越者」に相応しいキャラクターとして登場したと考えて、ほぼ差し支えないと思います。

 それでも、ファイヤーモードへの変化、必殺技の千本ノックの披露など、シュリケンジャーならではの特徴を配したアクションシーンが登場し、往年のファンを満足させたのではないでしょうか。少なくとも私は満足しました。

 欲を言えば、大葉健二さんに「烈堂」として出演して欲しかったですねー(笑)。

充実の総集編

 カルタを使ってこれまでの戦いを振り返るという趣向は、楽しいアイディアであり、しかも正しく総集編になっていましたが、ちゃんと各エピソードのメインとなったキャラクターに札を取らせ、フィーチュアしていたのは良かったですね。特に八雲やキンジは、黒歴史にしておきたい過去を蒸し返されたようなバツの悪さがインパクト大(笑)。

 更には、ダメ押し的に復活怪人編まで兼ねてしまったのが新しい。巧くメインキャラクターを配して対戦させる構成の巧みさも光っていましたね。

 ちなみに、戦隊で最初に総集編が登場したのは「バトルフィーバー」だと認識しています。「デンジマン」でも同趣向のエピソードがありながら、その後は長らく途絶えていますね。「ゴレンジャー」なんかは二年もやっているので総集編もありそうな感じですが、意外な事にありません。ただし、放映スケジュールに幾度かの再放送が含まれていました。

 よく分かっていないので申し訳ないのですが、私が認識している特撮史上最古の総集編は「ウルトラマンタロウ」のタイラントの話。何と初代ウルトラマンからのシリーズ全てを俯瞰してしまう凄い回です。それでいて主人公と近所の少年の交流と、タロウの戦いが「試練」というテーマで繋がって描かれていく...。戦闘と日常描写が乖離しているという批判に長らく晒されてきた、典型エピソードとして語られる事も多い回ですが、私は正味20分強の尺の中にこれだけの物量をぶち込める手腕の高さに戦慄すら覚えますね。

 話が逸れましたが、今回も物量という面では負けていませんよね。シュリケンジャー、総集編、再生怪人といった要素に加え、年明けからの展開に際しての重要な要素を紹介してしまうのですから、構成力の高さに唸らざるを得ません。

復活、牙鬼幻月

 牙鬼萬月の死を十六夜九衛門から聞かされた有明の方が、空前の恐れを発し、遂に牙鬼幻月も復活する事に。十六夜九衛門の暗躍振りは素晴らしいのですが、如何せん有明の方が発したのが「恐れ」だったかどうかは正直疑問でした。子を失った母に去来するのは「哀しみ」ではないのかという疑問。そこが大きくてノれなかったんですよね。

 三石さんのコミカルな演技とその後の絶叫が素晴らしいコントラストだったので、ここはやや不徹底だったのではないでしょうか。

次回

 二週分空いて、最終編に突入です。遂に次の戦隊の予告も公開され、いよいよ終幕が近付いてきた感がありますね。

 というわけで、来年も何卒よろしくお願い申し上げます。皆様良いお年を。