忍びの36「キンジ、栄光のスーパースター!」

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 今度こそ、今度こそ? キンジの一件落着編。

 浦鮫がどうなるかと思いきや、何とスターニンジャーの新たな武器になるという爽快感溢れる展開を見せます。更にはそれに伴い、スターニンジャーのみのパワーアップ形態が登場するというサービス振り。ゲキアツダイオーの登場時点で、ガジェットとしては出尽くしたと思っていましたので、これは意外でした。

未だ弱さを抱えていたキンジ

 キンジが悩みや恐れを克服する話は、一連の流れに句読点を打つが如く折に触れて描かれて来ましたが、それぞれでキンジは一旦そういった弱い心を克服して成長を見せるものの、次の段では未だ克服途上にあるといった描写が繰り返されました。

 前話を含めた今回でも、またそれは繰り返されたわけですが、どちらかと言えば、これまでよりもキンジの内面に深く踏み込んだ描写になっていると思います。それは、病的なまでに徹底された自問自答のイメージシーンにも現れています。

 そのイメージシーン、十六夜九衛門を想起させるメイクを施した多和田さん自身が、これまでの妖怪のスーツに合成される悪夢のような絵面が続くという、なかなか凝った、しかも悪趣味なもので、特にキンジの「恐れ」を強調するのに存分な効果を発揮していました。こういったシーンは割と想定から外れてコミカルに映ってしまうきらいがありますけど、今回はその皮膚感の悪さが奏功し、端的にキンジの闇を映し出していて笑う暇も与えられませんでしたね。感心しました。

浦鮫

 浦鮫はやはり十六夜九衛門の罠であり、妖力を吸いこそすれ、持つ者を自我のない修羅に変えてしまうという恐ろしいものでした。そんなものが、どこかのオフィスビルにゴルフクラブと一緒に無造作に置いてあるもんですかね(笑)。

 まあそれは良いとして、持つ者を修羅に変える刀という設定は、オカルティックな時代劇で散見されるもの。大抵は最初に斬られた者の怨念が憑いているとか、そういった出自が多いと思います。この浦鮫に関しては、単に伊賀崎の文書に伝わっていたというだけで、その成り立ちがどうだったかという面は一切描かれず、またすぐに忍者激熱刀に変わってしまった為、益々正体不明になってしまいました。特性は存分に描かれていましたし、殆ど本筋には関係ない部分ではあるのですが、結局正体不明のままなのはちょっと不満でしたね。

十六夜九衛門

 彼がキンジに執着していたのは、キンジが孤独を経験しているから...と言う事でした。それはつまり、十六夜九衛門自身も孤独であるとの告白に他ならないと思います。ラストニンジャには見限られ、牙鬼軍団の中では野心ある新参者として疎まれているわけですから。それらは彼自身に原因のあるものですが、その辺りを棚上げして他者に執着してしまっている処に、彼の「性根の悪さ」のようなものが感じられると思います。

 面白いのは、オオカミオトコがキンジに傷を負わせた事と、十六夜九衛門がキンジに妖力を注いだ事が発端となって、キンジの身に異変が生じるという仕掛けによって、今回の話が成り立っている事でしょう。つまり、この件がなければキンジは自分の弱い部分を克服しきったと勘違いしていたかも知れず、ある意味、十六夜九衛門によってキンジの深層に残っていた弱さが炙り出されたと言って良いと思います。自らスーパースターニンジャーを誕生させるきっかけを作ってしまったわけですな...。さらには、好天にキンジと「終わりの手裏剣」の取引を持ちかけるという失態を犯し、好天にキンジを救わせるという流れを作ってしまいました。

 今回ラスト、普段はクールな十六夜九衛門が、激昂して地団駄を踏む(スーツ、声共に演技が可愛らしい)シーンがありましたが、やはり自分の狙いが裏目に出過ぎてどうにもならなかったのでしょう。彼の人間的な一面が見られて興味深いシーンとなりました。

好天の謎

 十六夜九衛門との直接対決で謎の能力を披露してから、好天のキャラクター性は少し変わったように思います。ファンキー爺さんはすっかりなりを潜め、随所で超越者に近い立ち振る舞いを見せています。

 今回は、キンジが弱さを克服しようと葛藤を続ける中、その心中に激励の声を響かせるという、神秘的な描写が登場。後からキンジにその行為について問いかけを受けるも、とぼけて見せる処は好天らしいと言えるでしょうが、人智を超えた能力であるが故に、そんなとぼけた様子を見せた...とも取れるシーンになっていて、益々謎が深まります。

スーパースターニンジャー

 キンジは妖力を得た事で、自分に残っていた弱さを自覚する事になりました。そして、それまではひた隠しにして来た、あるいは自ら否定して逃げてきたその弱さを受け入れる事で、キンジは弱さに付け込もうとする妖力すら、自らの力とし得ました。そこでは、常に支えてくれる天晴達の姿と、前述の好天の激励が大きく作用したというのも重要なポイントとなります。

 「仲間との絆が力を生む」という展開は、近年急激に陳腐化してしまったように思われますが、今回のように理屈と説得力のある映像を丁寧に積み重ねて表現されると、ちゃんと感動を生むのですから、このテーマってやはり「取り扱い注意」なんでしょうね。

 スーパースターニンジャーは、スターニンジャーをより西部劇風の出で立ちにしたデザイン。スターニンジャーは超絶フォームも一度披露していますから、単独パワーアップは意外でしたね。より西部劇風の姿にパワーアップしながらも、刀を振るいまくるという不条理感は、和洋折衷の次なるものを標榜しているのかも知れません。ここでのパワーアップアクションは、スターニンジャーが押しまくる爽快感を重視しつつ、そのパワーアップを後押しした他のメンバーとのコンビネーションがちゃんと描かれていて見事だったと思います。

オボログルマ

 最後に、今回の上級妖怪について。矢尾一樹さんの声を得て超重量級でありながら何となく間抜けな味を出していた、ローラーがモチーフの妖怪です。オリジナルの朧車は、牛車に巨大な顔が現れるという、絶対に出会いたくない妖怪ですが、その不気味な恐ろしさはちゃんとデザインに取り入れられていました。いきなり巨大戦で登場した為、巨大戦に特化しているのかと思いきや、等身大戦で天晴達を苦しめまくるという、意外な活躍振りを見せてくれました。その強敵振りによって、スーパースターニンジャーの初陣が輝いて見えたわけですね。

 クライマックスの巨大戦では、晦正影が内部に搭乗するという、これまた意外な展開を見せました。何となく、晦正影が危うい雰囲気になっていたので、ここで退場か!? と思わせておいて、やっぱりまんまと脱出する辺りが、また憎らしい処。

次回

 パワーアップに関わるシリアス編の後は、順当にコメディあるいはパロディ色の強いエピソードになるということで。

 各人の扮装が非常に目立っていて気になる処ですね。