忍びの34「伝説の世界忍者、ジライヤ参上!」

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 「秋の忍者まつり」と題して、戦隊の枠を超えて「メタルヒーローシリーズ」からレジェンド忍者を招いた特別編!

 というだけで興奮必至...なのですが、最初にお断りしなければなりません。

 実は、私「世界忍者戦ジライヤ」を殆ど観た事がありません!

 従いまして、映像にて表現されたオリジナルへのオマージュが、殆ど分からないという、ファンとしては情けない状態で視聴致しました。今回は「ジライヤ」を知らなくても、充分面白い筋運びだったので問題はないのですが、凄~く損した気分になりましたよ(笑)。

世界忍者戦ジライヤ

 メタルヒーローシリーズとしては、「スピルバン」までの宇宙刑事路線からガラリと趣を変えた「メタルダー」の、後番組という位置づけ。

 私はその時期、丁度特撮を離れていて、ちゃんと観ていたのは「仮面ライダーBLACK」だけでしたから (厳密には「特撮から離れていない」笑)、残念ながら「ジライヤ」に関しては殆ど観ていません。ただ、新番組への興味で1話辺りは観たような記憶があり、後年、YouTubeだったかGyaoだったか忘れましたが、クモ御前が出てくる話だけを重点的に観たような気がします(笑)。

 というわけで、「ジライヤ」に関しては知識不足も甚だしい。どうかご容赦の程を...。

 ただ、今観ると物凄く面白そうなんですよね。今となっては「仮面ライダー」だとか「戦隊」だとか、果ては「ガンダム」でさえも、枠組みを容易に打ち破るコンテンツが登場して当たり前になっているので、いわば「違和感に対する敷居が下がった」状態に我々は置かれています。その意味で、メタルヒーローシリーズの枠から大きく逸脱した感(デザインとか、市井密着型の設定とかの面で)のある「ジライヤ」に関しても、当時の若いくせにガチガチな頭で観るより、今観た方が遙かに面白いんだろうな...と思うわけです。とにかく観たい! 「ニンニンジャー」繋がりを言い訳にしたとしても、本当に観たいです。

 色々な書籍やWeb上に散らばる情報を見聞きしても、戸隠流宗家の初見良昭氏(いわゆる「本物の忍者」)をアドバイザー(そして主人公の養父役としてレギュラー出演)に招いての本格アクションは贅沢の極みですし、当時はメタルヒーローの範疇を逸脱して違和感を感じていたジライヤスーツにしても、今ならば忍者ヒーローの頂点を示す格好良さが分かります。面から演者の目が覗き(第一形態)、指が露出しているというデザインも今だからこそ痺れるものだと思います。後年、「ブルースワット」でも「衣服」に近いスーツが登場し、その挑戦的な意匠が話題になった記憶がありますが、「ジライヤ」がその嚆矢ですよね。今回も再現されていましたが、自らジライヤスーツを「着る」シーンなんか、もう格好良過ぎます。

 それから、今回「ジライヤ」のBGMが多数採用されていましたが、若草恵先生の手による音楽の素晴らしさよ! そんなわけでサントラも欲しくなる始末でして...(笑)。

磁雷矢

 説明不要ですが、磁雷矢こと山地闘破が、今回のレジェンド忍者。闘破役・筒井巧さんご本人の出演とあって、お祭り感も半端ではありません。戦隊に「特撮の先輩」的なキャストが出演して盛り上がる事は多々ありますが、やはり「当時の役そのまま」として登場する際の盛り上がりは異様です。そして容姿も当時のままスリムで格好良いという。文句なしのゲスト出演ですよ。しかも、戦隊ではなくメタルヒーロー枠からの客演なので、「ニンニンジャー」の何でもありな感覚を体現する存在としても、その出演の意義は大きい。

 昭和末期のヒーローという事もあって、既に闘破は壮年となっていますが、未だに「世界忍者」の代表的な存在として世界を駆け回り、現場で忍者として働くのを無上の喜びとしているという、近年のギャバン=一条寺烈を思わせる設定が嬉しい処。烈はその後の扱いがぞんざいになってしまい、残念ながら溜飲を下げる活躍が未だ観られませんが、今回の闘破の「その後」は非常に自然かつ見事に描かれたと言っても過言ではないでしょう。

 今回、磁雷矢は登場するなり、天晴達を十六夜流忍者と勘違いする失態を披露。「ジライヤ」当時の闘破がイケイケドンドンだったかどうか、私には分かりかねて申し訳ない処なのですが、大先輩にして早とちりをしてしまうシーンには好感が持て、先輩ゲストモノによくある「イタい説教臭さ」が皆無でした。勿論、当時と変わらない筒井さんの爽やかな魅力がそれを後押ししているのは間違いありません。

 中盤では、天晴と共に敵の術中にはまる事で事件の中心に置かれます。先輩風を吹かすような状況ではなく、とにかく似た者同士の天晴と文字通り一体となって事態を打開していく様子は、正に先輩ゲストのお手本! ライダーでのV3=風見志郎が、説教を伴わないけどやけに威張っている体育会系先輩像を構築したが如く、今回の闘破は「気持ちは10代のオッサン」という新しい先輩像を構築したわけです。いや、表現に問題がありましたね(笑)。「若者目線のベテラン」と言った方が良いですね。とにかく、気持ちが良い事この上ない男として描写されていました。

 ストーリーの縦糸として、闘破が「忍者の名誉を守る委員会」の会長をやりたがらないでいるという設定が動いており、これが実にさり気ないスパイスになっています。天晴におぶさったまま、自由に動けない闘破が、自分の感覚を駆使して天晴に指示を出すという行動を経て、天晴に「人の上から指示するのが巧い」と言われて会長になる決意をするという、ギャグを織り交ぜた爽やかな語り口が非常に素晴らしい。

 エピローグでは、若い忍者に現場を任せるといった結びが描かれますが、多分、闘破はこれからもこっそり会長室を抜け出しては、現場であれこれ世話を焼き続けるんじゃないかと思います。

 なお、クライマックスでのアクションは、磁雷矢をリスペクトした仕様で組み立てられており、筒井さん自らスーツを装着するカットが挿入され、磁光真空剣(これが日本刀そのもので格好良すぎるんですよね)もちゃんと登場。主題歌もかかるなど抜け目は全くなしで、ジライヤファンには堪らないものだったのではないでしょうか。ちなみにオープニングもジライヤリスペクト仕様でした。

 巨大戦では、ジライヤ忍シュリケンの発動によって、磁雷神がゲキアツダイオーとダブる演出も加えられ(磁雷矢の「おお、磁雷神...」の呟きが可笑しい)、隅々まで配慮されていて感心します。

忍者の名誉を守る委員会

 忍者が形成している社会についても何でもありな「ニンニンジャー」だけあって、このような委員会があっても違和感はありません。それにしても、委員役で日下秀昭さんがいい味出してましたよね。大ベテランスーツアクターさんで顔出しも多いのは周知の通りですが、今回のようなコミカルな役は割と珍しいような気がします。そしてやっぱりデカい!

コナキジジイ

 久々に妖怪が登場。しかも上級妖怪で有名妖怪。キンジがこれまた久々に嬉々として撮影してました。デザインは鉄アレイがモチーフで、相手に負ぶさって圧死させるという子泣き爺の特徴と合致しています。

 声が二又一成さんなので、老獪さとコミカルな味が同居していますね。年齢が下の者に上の者が強制的におぶさるという能力自体は、結果こそコミカルですが、コナキジジイ自身は至って冷徹な恐ろしさを発揮しているので、正に適役といった処でしょう。何だか、高齢化社会を揶揄しているようで結構エグいなぁ...と思いつつ観ていました。

 ちなみに、霞が風花に負ぶさり、風花が「重い」と言った事で、霞が事態そっちのけでショックを受けるシーンは、霞の意外な一面が見られて良い感じでした。

まだまだ忍者ヒーローは居ます

 「忍者キャプター」、「変身忍者 嵐」といった作品群は勿論の事、ダイナブラックやイエローマスクといった「戦隊メンバーの一人が忍者」というパターンもあるので、まだまだ「祭」を開催しようと思えば出来るわけでして。まあ、あまり連発しても有難みがないかも知れませんが...期待してしまいます。

次回はキンジの伏線回収?

 オオカミオトコに受けた傷が、かなり期間を空けてようやく生きてきます。こちらも殆ど忘れていましたが(笑)。

 十六夜九衛門も休養(?)を経て再登場となり、どのように3クール目の区切を付けてくるのか、楽しみですね。