忍びの28「激走!牙鬼ニンジャ軍団」

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 新章突入!

 十六夜流忍者軍団とのニンジャ勝負開幕とあって、因縁話を含めてどれだけシリアスに振ってくるのかと思っていたら...。

 斜め上どころか、そしてサブタイトルにある「激走」どころか、「暴走」の言葉が似合うくらいのぶっちぎり。「ニンニンジャー」って、本来はこういう事をやりたかったのではないか...と思わせる快(怪)作での幕開けとなりました。

十六夜流忍者ハヤブサ

 今回より、妖怪だけではなく十六夜流忍者が登場。

 やはりまず目を引くのは、妖怪とデザインの方向性がまるで異なる事でしょう。日用品モチーフで統一されていた妖怪のデザインから、動物を大胆に配する忍者装束というデザインに切り替えつつ、牙鬼軍団らしさも一応担保しているという見事さ。新章に相応しい意匠です。

 「仮面ライダー」で組織変更による大胆な怪人デザインの変化を見せた後、続く「仮面ライダーV3」では、幹部交代毎にデザインラインの変化を楽しむ事が出来ましたが、この方向性は他の諸作品でも度々踏襲される事になりました。デザインパターンの浪費を招く恐れのある諸刃の剣ではありますが、それを惜しまずに今日まで制作し続ける日本特撮コンテンツの高尚さには、やはり感じ入るものがありますね。

 話が逸れましたが、今回のハヤブサは、頭部を見ただけで隼だと分かる大胆さが潔く、しかも忍者らしい軽快さをも兼ね備えていました。率直に格好良いですね。

 能力としては、隼の速度や飛行能力をフィーチュアしていましたが、その辺りについてはやや消化不良気味だったように思います。しかし、ビジュアルの鮮烈さで新軍団のインパクトを与えるというミッションに関しては、大成功だったのではないでしょうか。

 強敵振りをアピールする一方で、作劇自体がコミカルだった為に、少々抜けた面も描かれました。こういった要素がよりハヤブサを魅力的な敵役にしています。

十六夜九衛門

 いよいよ本格的に前線指揮を任された(?)十六夜九衛門。自らの手の者達を使役する事で、気まぐれな妖怪達に手を焼く事なく、自分の野心に忠実な(勿論、表向きは牙鬼軍団に従った)動きをする事が可能となったわけです。

 初回となる今回は、有明の方の為に子供の恐れを集めるという作戦を展開。十六夜流の有能さを見せつけるという以上の展開は皆無でしたが、挨拶代わりとしては充分過ぎるものでした。

 注目すべきは、幼稚園バスジャック。70年代から80年代初頭の特撮では定番中の定番作戦でしたが、やはりあまりにも連発されたので飽きられたのか(笑)、殆ど見られなくなりました。今回は、その古き佳き要素を現代版として復活させた意義を賞賛したいと思います。ともすれば幼稚園バスジャックはほのぼのとしていて笑えてしまう事例も多かったのですが、今回の園児役は皆軒並み巧く、また近年のロケーションの困難さを感じさせない街中でのスリリングな暴走シーンが展開され、迫真の画面作りになっていました。天晴の慌てっぷりが可笑しく、そのスリルを若干緩和しているのがまた良いですね。

 なお、今回専用の戦闘員としてスッパラゲが登場してきますが、通常戦闘員よりも手練の忍者軍団という事で、「ゴレンジャー」の黒十字忍団を想起させます。これで都合三種の戦闘員が登場したことになります。贅沢ですねぇ。

小池さん

 幼稚園バスだけでもパロディ感満載なのですが、今回は明らかなパロディがありました。天晴が暴走する際に民家に飛び込み、ラーメンを食べようとしている人の邪魔をするというシーンです。これは藤子不二雄作品における「小池さん」が元ネタである事は間違いないでしょう。

 小池さんの初出は「オバQ」ですが、もしかして忍者繋がりで「ハットリくん」を意識した??

八雲の魔法大活躍

 実は今回のメインは八雲。

 まずは、大人が入れない幼稚園の結界を突破すべく、魔法でニンニンジャー全員がおもちゃに変身。個々人に合わせたおもちゃのチョイスも素晴らしいし、園児にもみくちゃにされる展開が実にコミカルでオーソドックスな可笑しさを生んでいます。しかも、八雲の化けたおもちゃだけが園児に見向きもされないというオチまで(笑)。

 おもちゃの姿でしばらく動き回るビジュアルは、正にナンセンスコメディ(東映で言えば不思議コメディの範疇)のもので、「ニンニンジャー」をネクストステージに招いたような感覚すら漂わせていました。この雰囲気に引っ張られたのか、その後も、凪と風花が「体操のお兄さんとお姉さん」になったりと、シチュエーションで遊んでいく展開が鮮烈。その唐突感は、「サンバルカン」のサンバルカン体操を思い出します(笑)。

 八雲の活躍は続き、天晴が暴走バスを止められないのを知るや、即座にドラゴマルに乗ってアシスト。天晴自身が暴走を余儀なくされてからは、絶妙な忍術でハヤブサの元に導く明晰振りを発揮。そして(やっぱり美味しい処を持って行く)霞の明察との合わせ技でハヤブサを粉砕するという、頭脳派コンビの活躍にまで展開する見事さ。淀みない流れで各キャラクターの持ち味を活かしていく構成が実に良かったですね。

最後の最後に驚愕の引き

 エピローグにて、好天が突如驚きの「引き」を披露。それは、十六夜流の力の源が、旋風の忍タリティだというのですが...。以前、旋風は天才的だったにも関わらず、忍術を使えなくなってしまったというくだりがあり、そのネタを追いかけた設定となるわけで、そんな処からネタを引っ張ってくるのか! となかなか興味深い処です。

 ところが、次回はまたシリアスとは真逆に振ってきそうな感に溢れており、どうなるか全く読めませんね。物凄くコミカルな映像を積み重ねながら、伏線を張ったり回収したりして世界観を掘り下げていくんでしょうか。