「夏休みスペシャル」第五弾!
間にマタネコという部外者を挟みつつも、西洋妖怪編、完結です。
夏休みの連作は、どれもパロディ精神に溢れたコメディとして提示されましたが、今回はかなりシリアス寄りに振ってシリーズの本筋に厚みを与えてくれました。その充実度とは裏腹に、コメディ要素が殆どない為かお祭り感覚は小さく、夏の終わりを感じさせてちょっと寂しい感じも...。
オオカミオトコ
超メジャー級のモンスター・狼男をモチーフとし、先鋭的な意匠を盛り込んで完成した素晴らしいスタイリングが特徴。キンジのトラウマとなっている、満月をバックにしての咆哮シーンとは、かなりイメージが異なる造形ですが、ちゃんとそれを解決する回想カットが挿入されるという凝りよう。とにかく、デザインが格好良いです。
古典的な「狼男」や、今となっては既にクラシックの範疇ながら、今もなお前衛的な映像として通用する「ハウリング」や「狼男アメリカン」といった作品群にあるように、基本的に不死身の身体を持つという特徴も継承。満月のシーンが、ロケーションや描写の兼ね合いなのか、技を出す際のイメージとしてのみ描かれたのは残念ですが、変身を主体とする狼男自体の生態を描くのは今回の主眼とは外れるので、致し方ないでしょう。
ただ、今回のオオカミオトコは、正にキンジのドラマの中心にあり、キンジの仇敵、そして倒される存在です。その為に、天晴達はこのオオカミオトコには歯が立たない事とされ、その理由として、狼男の不死身の生態がクローズアップされたのは、非常に効果的な手法だと思います。
十六夜九衛門
次回より開始される「新章」のキーパーソンとして、いよいよその存在感を増す十六夜九衛門ですが、今回もまた、キンジの心の隙間を狙います。今回で明示されたのは、十六夜九衛門が忍者でありながら妖怪の力を得たとしている点で、これは正にスター・ウォーズ・シリーズにおけるシスの成り立ちに代表される語法と言えます。戦隊でも「ゲキレンジャー」にて善悪二流派の相克があり、やはり敵側の主役も悪の力に魅せられた経緯を持っていました。
自らの同胞とすべくキンジに妖気を注入する十六夜九衛門でしたが、キンジの決意の力がそれをはねつける事となりました。そしてこの時の妖気が紫の色合いで表現されているわけで...この件については後述。
好天
キンジに触れる前に、好天について。
好天は、キンジの心の弱さにかつての十六夜九衛門の姿を重ね、キンジに殊の外厳しく接します。天晴の指摘にある通り、好天自身が恐れに囚われているという面も勿論あり、それは好天自身も断固として否定しつつどこかで自覚していたように見えます。一方で、好天の眼力はキンジの利己的な面をちゃんと見抜いてもいるわけで、やはり好天は未だ「ニンニンジャー」における超越者の立場を維持しています。
エピローグで、ちゃんとキンジを正式な弟子に昇格させるくだりがありましたが、そこには、孫の訴えを聞き入れる「じいちゃん」の人間味が存分に描かれており、超越者でありながら人の骨格を崩さない姿勢に感嘆せざるを得ませんでした。ここには制作の良心が感じられますね。やはり、後見人キャラクターは人間味があってこそだと思います。
キンジ
今回は、明確にキンジの物語です。いつもは美味しい処を持って行ってしまう霞も、天下無敵の主役である天晴ですら、完全に脇役に徹しています。
実はキンジ、終わりの手裏剣によって父と兄を復活させる...という「野望」があり、その為に好天に近付いていたという、驚愕すべき動機が明らかになりました。つまりは、天晴達のように純粋に忍者への道を歩む「迷いなき者達」へのアンチテーゼたる存在だったというわけです。そうなれば、好天とて弟子として認める事など出来ないとなるのも道理。
十六夜九衛門の誘いに何度も乗りかけては拒むといった事を、今回に至っても繰り返してしまうキンジでしたが、今回こそが迷いの最終地点だったのかも知れませんね。父と兄への執着を捨てるという意味では、前述のスター・ウォーズにおけるジェダイとシスの分岐点と近似しているわけですが、これで名実共に忍者への道を歩み始める事となり、まずはめでたし...と。
続いて、キンジの真の決意を現すのが、スターニンジャー超絶でしょう。獅子王に認められる事が必須となる超絶化。それが可能となった今、キンジの決意が本物である事は疑いようもありません。また、迷いなど無縁の天晴の精神を体得したが如く、とにかく弾けまくるスターニンジャー超絶の姿には、真のニンニンジャー入りを感じさせます。それにしても、超絶はアカニンジャー限定とばかり思っていたので、これは本当に意外でしたね!
さて、キンジの本格加入は喜ばしい処ですが、気になるカットが。
一つはオオカミオトコに切りつけられ、キンジの左腕に爪痕が付くカット。妙に印象付ける演出が為されているので、何か仕掛けがありそうです。
もう一つは、超絶している際、わざわざマスク内の眼が大写しになり、紫色に妖しく光るというカット。先述の通り、紫は妖気の色として使用されており、非常に気になる事象となっています。これが勘ぐりなのか、それとも伏線なのか。強い印象を持たせつつも「見逃したら終わり」的なカットでもあるので、扱いは微妙な処ですねぇ...。
あァ 一巻の終り
「カクレンジャー」に倣ってか、二部構成を謳うこととなった「ニンニンジャー」。前回が総集編だった意味も、これでよく分かりました。キンジが忍者に正式加入した事で、仕切り直しといった趣ですが、これからも「迷いなき者達」へのアンチテーゼとして、キンジは機能するのかも知れません。その辺り、追加戦士のドラマとしては非常に楽しみですね。
次回は、いきなり十六夜九衛門の忍者軍団との戦いへ。正邪の「同類」が戦う構図は、「仮面ライダー」を例とするまでもなく燃える要素ですから、益々パワーを増していくものと期待出来そうです。
天地人
オオカミオ、彼をすく~いたまえ~♪(ライラライラライライライ)
なんか、違うような気もしますが(汗)
前に触れてたとはいえ、唐突に始まったキンジの復讐編(違)ですが、これで一応の決着ついたという事なんでしょうね。
明らかにキンジの目が紫に光ったのは、今後の伏線でしょうが、何故十六夜九衛門はあれほどキンジに執着するのでしょうかね?
十六夜九衛門の目的も別にありそうな気もしてきますが、意外とあっさり無かった事にされそうな予感も(って、どっちなんだ)
それではまた
優人
キンジの話は、今回で一段落といったところでしょうか。管理人さんが指摘された場面に加えて、オオカミオトコの最後の言葉「妖怪ハンターはいずれ根絶やしになるだろう」が伏線になりそうだなと、個人的には感じました。主要キャラなのに、ほとんど正体がわからない九衛門の秘密も明かされ始めて、ニンニンジャーも「熱いなこれ、燃えてきた~~!」と盛り上がってきましたね。
ただ個人的にちょっと残念だなと思ったのが、説明セリフが多かったことですかね。説明セリフはあってもいいと思いますが、自然な会話の流れで処理してほしかったです。キンジの家族写真の説明は、完全に独り言でしたからね。
竜門 剛
シンプルかつ王道なキンジの成長物語でした。好天が九衛門とキンジを重ねたり、キンジをはさんで好天と九衛門がそれぞれを連想したりと、後々への引きも十分でした。爪の傷などは、完全にフラグでしょうねぇ。
スターニンジャー超絶は、もうちょっとスターニンジャー寄りのデザインだと嬉しかったですね。パッと見がほぼアカニンジャー超絶と変わらないので、スペシャル感が薄かったです。たぶん、スーツの使いまわしとかで、あまり無理はできないのでしょうが。