キンジに関する一連の流れの中では、家族がテーマとされていました。キンジが退場した直後という事もあってか、今回は八雲の家族に関するトピックを扱うエピソードとなりました。
...と書きつつ、笑いが収まらないのが今回の特徴。
例の「マミー」が出てくるわけでもなく、メインに据えられたのは、マミーからのプレゼント=芝刈機!
しかも偶発的にキンジが日本への再来を果たすという、ドラマの種をことごとくギャグですっ飛ばしてしまう凄まじい回でした。
オトロシ
巨顔に長い髪の毛という出で立ちの妖怪「おとろし」。突如現れて人々を驚かせるという、妖怪の典型とも言える存在です。
今回のオトロシの造形物は、オリジナルに忠実な意匠を中心とし、モチーフとなる芝刈機が各部に配されるというパターンになっています。
芝刈機自体が一般に馴染みが薄いものなので、登場した時点では何がモチーフになっているか、やや分かり難いという面も。しかしそれが、八雲の目的や言動を巧くぼかしていて、ミステリー譚としての機能を物語へとスパイス的に反映させていました。
目から放つビームによって、対象を一定時間だけ操ることが出来るという能力を持っていて、天晴達はその能力に翻弄される事になります。その能力が時間制限付きであるのに加え、対象も一人だけといった具合に限定的なので、対処に当たって作戦会議が行われるといった「戦隊らしさ」の発露を助ける事にもなりました。
なお、サブタイトルによって、八雲がオトロシ自体に思い入れがあるようミスリードされますが、そこに深いドラマを期待してはなりません(笑)。
戦隊に限らず、敵怪人が主人公に近しい存在である事が判明し、そこから悲劇的な運命をドラマチックに描き出すというパターンは、世界的に有名な「スター・ウォーズ」の例を出すまでもなく百出ですが、今回はそれを完全に茶化し、パロディとして扱っている節がありますね。まあ「ニンニンジャー」はあらゆるドラマチックなパターンをパロディ化しているとも言えます。
名参謀・霞
実は今回、ドラマの牽引役は霞だったりします。
数々の小さい事象から「気付き」を得て頭脳を回転させ、「仮面ライダードライブ」の泊進ノ介が如く閃きを見せる等、ここでもパロディ精神を発揮。一種のミステリーとして進行するドラマの中にあって、霞は正に名探偵役を担っていました。
オトロシの特徴を戦闘の混乱の中で正確に把握し、屋敷に帰ってきた時点で既に対処法を考案。いかにも学生らしくホワイトボードを用いて作戦を分かり易く提示してみせたりと、後見人キャラである旋風を差し置いて参謀を務めているのが凄い。
更に、操られているにしては不自然な八雲の様子(これは「拳で会話」するタイプの天晴が真っ先に気付いたもの)を元に、八雲のガーデニング雑誌からオトロシの正体を推理。続いて現場でオトロシに付けられていた八雲のネームを見るに至り、その正体を確信。他のメンバーがオロオロしている間に、頭脳を駆使して事件の核心を探り当ててしまいます。素敵過ぎますよね(笑)。
ニンニンジャーの参謀格は、キャラクター配置上は典型的なクール・ブルーである八雲の筈ですが、既に霞がそのロールを確立しつつあります。人物配置が面白い事になってきました。
八雲の芝刈機
そして今回のキーアイテムは八雲の芝刈機「カーリー」。
イギリスでの生活が長い八雲にとって、ガーデニングは重要な趣味である...というのはまだ許容範囲。しかし、そのガーデニングに用いる芝刈機を、仲間を欺いてまで守りたかったという心情は、やや理解の範疇から外れています。まあ、大切なものを壊したくない気持ちは理解出来ますが、八雲の苦悩する様と芝刈機がどうしても重ならない(笑)。
それはストーリーテラー側としても把握していた模様で、この芝刈機に関する一件は殆どギャグとして描かれています。オトロシに「YAKUMO」とネームが入っていたり(マミーの贈り物なのに、「CLOUD」じゃないのは謎。分かり易さを優先か?)、苦悩を語る八雲の姿に凪と風花が密かなツッコミを入れたり。天晴だけはそんな八雲を真っ向から理解していましたが、霞は単なる興味深い事象として、好奇心を募らせていましたからねぇ。
しかしながら、八雲自身は真剣そのもの。故に可笑しさがさらに深まるといった具合です。コメディの常套手段ですね。
なお、オトロシの項とやや重複しますが、自分が大切にしているものを諦めなければならないというストーリー展開も、特撮ドラマには散見されるものです。他にも類似パターンとして、自分がかつて大切にしていたものを利用されるというものもあり、このテの傑作は「シャリバン」のドールビーストが登場するエピソードだと思います。非常にハイブロウな話で、コメディの入り込む隙すらないハードなエピソードだけにインパクトも強く、今回とは正に対極にあると言っても良いでしょう。
結局、その真意が仲間にバレてしまった八雲は、芝刈機よりも妖怪退治を優先する事になりますが、ここからのアクションがコメディの反動なのか、通常より激しい集団戦の様相を呈していて迫力があります。八雲の忍術で意趣返しされたオトロシが、残ったジュッカラゲを一掃するシーンがありましたが、それだけ物量があった事を示していて見事でした。
キンジが帰還してからは、芝刈機を温存する可能性を見出す事になり、最終的には全て丸く収まります。嬉々として芝刈りを楽しむ八雲の姿を、エピローグで拝む事が出来るわけです。それにしても、加藤家はあんな豪邸だったのか...。
キンジ・リターンズ
ハワイでバカンスを楽しんでいたキンジ。弟子入りを諦めて悲嘆に暮れているのかと思いきや、妖怪退治もせずに休暇とは...(笑)。
オープニングでは、キンジに関するナレーションが廃されたにも関わらず、キャストのクレジット自体はオミットされていなかったので、何らかの形で1シーンだけでも登場するのかな...と思っていたら、まさかの展開が待っていました。
キンジの帰還は、敵になって帰ってくるとか、仲間の大ピンチに新たなオトモ忍を従えて颯爽と現れるとか、そういったものを予想していたのですが、その辺りのドラマを全部すっ飛ばして実に実に適当に(!)処理されたのであります。
その流れは、ニンニンジャーピンチ → サーファーマルが居てくれれば → キンジにサーファーマルの手裏剣を渡し忘れていた → じゃあ使ってみよう → キンジを乗せたままサーファーマルがやって来る → 合体と同時にキンジもスターニンジャーへ → 八雲に芝刈機救出のヒントを与える → 忍ばずワッショイ...となります。
ご都合主義、予定調和の極み! これ褒め言葉です(笑)。淀みない流れ。難しい事を考えなくて済む物語の爽快感。「ニンニンジャー」を象徴するラストでした。
エピローグでは、キンジが天晴達の励ましによって再び弟子入りに挑戦する事になりましたが、果たして...?
次回は
天空のオトモ忍がいよいよ登場。「戦隊歌手」とも言える山形ユキオさんがゲスト出演されます。単なるパワーアップ編にとどまらない、一筋縄では行かない展開が期待出来そうですね!
竜門 剛
いやもう、なんと形容したら良いのやら・・・。もちろん、褒め言葉ですが。
それぞれのキャラが固まってきたと同時に、いい感じに崩れてきました。キャラが薄いと悩んでいた凪も、唯一の常識人としての立ち位置がハマってきましたねぇ。
そしてスターニンジャー。早っ!のひとことに尽きます。何て適当なんだスタッフ!グッジョブだ!
やっぱりニンニンジャーは、こうでなくっちゃ!
そーいえば、珍しく九衛門がいなかったなぁ・・・。
天地人
しかし、八雲はどうやってオトロシの技(?)にかからなかったんだろう・・・
そんな細かい事にこだわらないのがニンニンジャーのだ(おいっ)
スターニンジャーですが、かつてこんな理由で再登場した戦隊戦士はいなかったんじゃないだろうか(笑)
とにかく今回は肩の力を抜いて楽しませてもらいました(って、毎回そうじゃないの)
そーいえば、珍しく八衛門(違)がいなかったなぁ・・・。
それではまた