多くの戦隊では、この辺りで追加戦士が「登場」するのですが、何と今回は追加戦士が「退場」するという掟破り!
それもあって、かなりのインパクトを持つ回ではあるのですが、何故かギャグテイストに彩られた楽しい一編としての面が強く出ており、その意味でもインパクトがあります。
今回結論付けられたのは、「お命頂戴」が彼等にとってスポーツのように爽やかなものであった事。クライマックスでの「刺客と...」「その標的だ!」というセリフはそれを象徴していました。この複雑怪奇な関係性を、よくぞ描き切ったものと感嘆せざるを得ません。
ウミボウズ
今回の妖怪は、ゴムボートをモチーフとする海坊主。「海坊主」と言えば「シャリバン」な私ですが(笑)、海坊主自体は妖怪の中でも超メジャー級です。ゴムボートをモチーフとしているので、海坊主との親和性も高く、巨大戦ではサーファーマルとの一戦になるという点でも、モチーフの統一感に恵まれた妖怪でした。
オリジナルの海坊主としては、船舶等の前にヌッと現れて恐怖に陥れるというものが大方のイメージですが、今回のウミボウズはそれをさらに拡大解釈して、過去の恐怖体験を追体験させるという能力を持っています。十六夜九衛門にとっては、恐れの収集にうってつけの能力ですね。
ところが、今回ウミボウズを生み出したのは晦正影であり、更には、キンジへの興味を元としたカスタムメイドの性格を持ちます。しかも、ガマガマ銃が反応しないよう結界を張ってから誕生させる等、その狡猾な手口を幾重にも描いているのが見事です。ガマガマ銃と忍者スターバーガーの妖怪探知性能の違いまでも見抜いていたように思え、いかに晦正影が策士であるかが窺える一幕でした。
キンジは、このウミボウズの罠にまんまとはまり、父と兄の死を追体験する事になります。
キンジのトラウマ
父と兄が妖怪の手にかかったという話は、かなり前から明らかになっていましたが、実際に映像として描写されるのは今回が初めてです。もっと突っ込んだ「謎」が隠されているのかと思いきや、意外にも前情報からの発展は皆無で、やや拍子抜けしてしまいました。
しかし、スタジオ撮影によるイメージシーンに重きを置いていた為、朧気な回想シーンっぽくもあり、余計にキンジのトラウマがえぐられるような感覚はありましたね。一流の妖怪ハンターとなる為にラストニンジャを目指すキンジの原動力を、我々は目撃する事になります。
一方で、この「原動力」がキンジを縛り付けてしまっており、それ故に十六夜九衛門の誘いを保留にしてしまう等の迷いを見せ、結局は天晴達に対しても全力ではぶつかって行けなかったという面も、過不足なく描かれました。好天がキンジの弟子入りを固辞したのは、その辺りが理由でした。しかし、好天はもっと先を読んで別の思惑を持っているのではないかと思われる節も...。
標的達
「お命頂戴」はもはや「コーナー」と呼ばれるレクリエーションとなり、そこには既に緊張感はありません(本人達は真剣ですが、「いい汗かいた」と天晴が感想を漏らす程にスポーツ化しています)。また、キンジの弟子入り期限が本日だと知ると、それぞれが個性的な「果し状」を作ってキンジとの対決の場を用意しようとする楽しいシーンが設けられ、既に修行の一環と捉えられている節もあります。
私としては、「命のやり取り」という面が薄められた事によって、「ニンニンジャー」に非常に良い効果をもたらしたと考えています。雰囲気が殺伐としないという効果が覿面なのは言わずもがな、忍術を極めてスポーティに描く事で、一般視聴者から乖離しないキャラクターとしての成立も見られるわけです。
ここでは、最早戦隊ヒーローは、メインターゲットである幼児が意識する「大人」である必要性が感じられなくなっています。「ゴレンジャー」から「バイオマン」迄は、誤解を恐れずに言えば、いわば「月光仮面のおじさん」の系譜にあるレッドなりサブリーダーなりが存在していましたが、それ以降はメンバーの若年化が顕著(「チェンジマン」と「フラッシュマン」はギリギリの線)になり、時代を下って「オーレンジャー」のような例外を除けば、子供と地続きである「等身大の若者」を活写する事に重きを置くようになりました。それ故に戦隊はシリーズとしての成功を継続していると言っても、一面においては過言ではないでしょう。そしてそれは、メタルヒーローにも平成ライダーにも波及していったわけです。
さて、天晴達のキンジに対する印象は、「いい人」に尽きます。だから、キンジの為に大勝負の場を設けたい。そのポジティヴな感情を晦正影も読めなかったのか、ウミボウズの早期敗北へと繋がりました。冒頭で振り返った「刺客と...」「その標的だ!」というキンジと天晴のセリフ。互いに気の置けない存在になりつつも、互いに刃で切りつける事を厭わないという、矛盾に満ちた関係を如実に示しつつ、それが勝利へのきっかけとなっていく様は、爽快そのものでした。
サーファーマル
今回新登場のオトモ忍、それがサーファーマルです。
潜水艦形態からサーファー形態にチェンジする見事さと、それを大胆なシーン設計で魅せる特撮班の仕事振りはやはり素晴らしいですね。「天空のオトモ忍」を差し置いて、先に海のオトモ忍が出て来てしまう辺り、出し惜しみなしの大盤振る舞い。しかも、キンジがアメリカに帰る際の乗り物になるというのが、これまた笑えてしまいます(密航ですよね)。
シュリケンジンサーファーも登場。海での戦いという非常に珍しいシーンが登場し、巨大戦の可能性を垣間見せてくれました。
日付変更線の罠
キンジがアメリカ時間で考えていた為、日本時間では既に期日を過ぎていた...という、私も想像すらしていなかったオチ。何となく好天はこうなる事を予想していたような気もするのですが...。知っていたら前日に現れてキンジに不合格を言い渡す筈ですからねぇ。
それにしても、突如現れてカレーのポットで二人の剣を阻むという凄技を見せる辺り、やはり好天は只者ではない! 最近は回想シーン等での出演ばかりでしたから、今回の出番は満足のいくものでした。
キンジが去るシーンでは、叙情性を完全に置いてけぼり...(笑)。天晴達と繋がった五本の紙テープを持ちながら後ずさりするという、信じ難いほどシュールなシーンが作られ、最後の最後までコミカルな関係性が強調されました。寂しそうな去り際とそれを見送る五人は渾身の芝居で魅せてくれますが、その芝居とシーン設計のギャップが実に可笑しく、これが「ニンニンジャー」の世界観なのだと見せつけられた思いがしますね。
毛色は違いますが、今回の「弟子入り試験最終日」は勘違いだったというオチからすると、よく見られる「転校秒読みの勘違いコメディ」や「不治の病勘違いコメディ」と同系列だったと読み取れますね。
要は期限が迫っていると勘違いしてドタバタ劇を繰り広げるパターンですが、今回もかなりそれに近いわけで、どう片付けてもコメディにならざるを得ないんですよね。キンジとしては勘違いが悪い方向へ出てしまったので実に気の毒ですが、天晴達にとっては日常に戻る為の通過点。キンジを「キンちゃん」と呼べるまでに関係性を深めたという意味で、ちょっとホロリとさせるコメディのパターンにピッタリはまり、前例達の良い踏襲となったようです。
次回は八雲が
「マスクマン」の地底剣士ウナスとか、その辺を想起させられるような予告ですけど、ちょっと変化球っぽい話で、楽しみですね。
キンジの今後についての煽り文句がテロップに出て来ましたけど、次回は出演なしで行くのでしょうか? この辺の展開も楽しみにしています。真の追加戦士として戻ってくるのか、それとも...。興味は尽きません。
竜門 剛
例年、追加戦士の初撮影は夏の映画、というタイミングだったので、確かに今回は異例中の異例でしたね。劇場版では出番があるようなので、夏ごろには帰ってくるのでは・・・(たぶん)。
本文では触れられていませんでしたが、海坊主の罠を見破るために天晴を囮にする霞が・・・(汗)。
天晴を信じているのか、ただ、ぞんざいに扱っているのか微妙な線ですが、どんどんマンガちっくな腹黒キャラになりつつありますねぇ。個人的には好きですが。
良い子のみんな!嫌いなピーマンもチンジャオロースにすれば食べられるぜ!
天地人
確かに海坊主というと、自分もシャリバンを連想してしまいます(笑)
しかし、出来れば霞と風花の恐怖体験も何だったのか知りたかったですね(ん?)
あと、キンジの回想(恐怖体験)シーンに出てきた、父と兄を倒した妖怪ですが、オオカミのような唸り声と外見を見ると牙鬼軍団とは別系統の妖怪という事で間違いないでしょう。
そうすると最終クールでは、変身忍者嵐みたいに海外の妖怪軍団とか出てきたりして(ないない)
最後に海坊主の罠を見破るために天晴を囮にする霞ですが、ほかのメンバーの性格を考えて、あえて天晴を出したのではないでしょうか。
八雲も大丈夫そうに見えますが、彼をよく知っている霞だけに意外な弱点を危惧したのではないかと。
凪と風花はやっぱり恐怖体験には弱いようにも思いますし、何より霞自身がこの手のヤツが一番イヤだったりして・・・
それではまた