忍びの12「最強決戦!奇跡の合体」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 蛾眉雷蔵、散る!

 これで、1クール毎に強力な幹部を登場させる方針が何となく見えてきた事になりますが、果たしてどうなるか。

 実の処、1クール中で蛾眉雷蔵自体にはあまり見せ場がなく、単なる「強い敵」という役割しかなかったのは少々残念ですが、天晴の成長物語を明確化するキャラクターという意義は全うしたのではないでしょうか。

 十六夜九衛門との関係がもう少し丁寧だったら、なお面白かったのですが、その辺り、キンジの登場が早すぎて未整理になってしまったのかも知れませんね。その辺は惜しい処です。

天晴の生還

 前回、蛾眉雷蔵との一騎打ちが行われ、その後、満身創痍の天晴が巨大戦に参加するという流れが見られました。

 どうやって生還したのか、また勝負の行方はどうなったのか、わざと見せないまま今回を迎えたわけですが、冒頭では蛾眉雷蔵が見事に生気横溢な様子を見せていたので、いよいよ謎が深まりました。

 その種明かしは、これまた本エピソード中盤までなされる事なく、興味を引いたまま他のキャラクターの動きを追っていく構成となっていたのが面白い処。結局、蛾眉雷蔵は変身解除となった天晴を崖下に蹴り落として勝利を確信したものの、実際はシノビマルによって天晴は救われていたという「答え」が用意されていました。蛾眉雷蔵は天晴が死んだものと誤解していた...というのが真相です。

 「もっと強くなって出直して来い」とか、十六夜九衛門が乱入してきたとか、そういった展開でも勿論不足はなかったと思いますが、今回の答えこそが最も蛾眉雷蔵らしいと言え、また前回の展開を受けてのシノビマル活躍を描いたという点で見事だったと思います。

 ちなみに、こういう展開での定番は、「死体を確認しろ!」と怪人が命じて戦闘員が探し回るというものですが、それがなかったのも蛾眉雷蔵らしいなぁ...と思った次第です。彼にとっては戦いの結果(満足度)が全てであり、相手の生死にまでは無頓着であったというわけです。

キンジと五人の関わり

 キンジは今回、完全に狂言回しです。

 彼自身、家族に関する「何か」がある事を匂わせていたり、ニンニンジャーの面々が蛾眉雷蔵対策(?)に追われる中、それを邪魔するのは無粋であると感じていたり、好天に再び挑戦してみたり。キンジのキャラクター性が強く感じられる辺り、彼のドラマを展開する為の種まきは順当に行われていますが、基本的には天晴達の周辺から傍観する立場です。

 最初に接触したのは霞。霞の便利キャラは既に確立した感があり、今回もシュリケンジンとバイソンキングの機構を解析して両者を合体させられる可能性がないかを探っていました。しかし、さすがにそこまで便利ではないよという抑えが効いたのか(笑)、今回はあくまでキングシュリケンジンの完成を忍タリティ由来としています。今回の霞の役割はキンジからバイソンキング誕生の秘密(好天の著書を参考にして作った...!)を聞き出す事と、キングシュリケンジン完成への理論を補強する事。その両者は霞の好奇心を交えて巧く説明されていました。

 続いて物陰から、八雲、凪、風花の特訓を見守ります。

 この特訓シーン、八雲が天晴に次ぐ実力者である事を描きつつ、それぞれが成長振りをアピールする重要なシーンになっていました。

 その要は勿論、素面アクションでしょう。かなり動きが良くなっている事が分かります。近年では珍しく、八雲が風花の頬をなぎ払うカットが挿入される等、意外とハード。私はここでキンジが「稽古のお相手を致しやしょう」とか言って加わるのかなぁ...と思っていたのですが、そんな事はなく(笑)。あくまでキンジは彼等の邪魔をしないというスタンスで動いています。

 この「邪魔をしない」というスタンスが、後のシーンにおける天晴に対する言動に繋がります。天晴が驚異的な回復力で再び戦場に赴くと、キンジは「天晴の為に一生懸命努力し戦っている彼等の邪魔になる」として天晴を止めに入るのです。この関わり方はキンジと天晴のスタンスの違いを如実に表すものとして、実に興味深いですね。

 天晴は問答無用で四人が自分を待っている筈だと言い、キンジはそれを無粋だと感じる。そのスタンスの違いを分かつ最大の理由が「血縁」だと結論付けてしまう天晴。かなりエキセントリックな論法だとは思いますが、これから先、キンジを家族論で動かしていくには良い段取りだったのではないでしょうか。

決戦

 これまで、天晴と蛾眉雷蔵の戦いは常に1対1で行われ、常に天晴は、自分がそう感じているか否かに関わらず孤独な戦いを強いられてきたのですが、今回は八雲達四人がはっきりと蛾眉雷蔵との戦いを意識した事や、その姿勢を見たキンジがその行く末を見たくなったのか、妖怪ハンターとしての興味を捨てて天晴をバックアップした事もあり、表面上は一騎打ちなれど、バックに仲間の存在が濃厚に感じられるものとなりました。

 その仲間意識が忍タリティを高め、合体忍シュリケンを生み出します。天晴は単騎斬り込み隊長から、仲間の力を受けて(=意志をまとめて)代表として戦えるリーダーへと成長を遂げたと言えるのではないでしょうか。1クールの締め括りとしては及第点以上の成果表明だったと思います。

 その合体技は激烈な強さを発揮し、完全なるレッド偏重に見えてしまうきらいはあったものの、ここで天晴の存在をグッと持ち上げておいて、他のメンバーがそれを超えようとしてくる展開は期待出来そうです。そこにキンジを関わらせ、更にヒネリの効いた展開を見せてくれる事を期待します。

蛾眉雷蔵の末路

 結果的に蛾眉雷蔵は天晴「達」に敗れる事となったのですが、彼はあらゆる面で戦いのみを好む武人であり、それ故に天晴はある種のシンパシーを抱いていた事が描かれます。

 敗れた蛾眉雷蔵は清々しい死に様を望み、十六夜九衛門がそれを許さず巨大化させる...。天晴はそんな蛾眉雷蔵を憂い、「成仏させてやる」と。キングシュリケンジンを完成させた天晴達がそれを果たし、蛾眉雷蔵は謝辞を送りつつ爆発四散します。この一連の流れにおいて、「巨大化」が好む好まざるに関わらない事象である事や、巨大化前の意志に反して戦闘ロボットと化してしまう等、一種の悲哀を含んだ描かれ方がなされました。

 「デンジマン」の終盤における、ヘドラー将軍巨大化を嚆矢とする悲哀が、2015年になって再現されるとは思いも寄らず、驚きと共に感心してしまいました。

十六夜九衛門

 蛾眉雷蔵すら捨て駒とする姿勢を露わにし、一気にその黒さを増した十六夜九衛門。一方で、好天唯一の(失敗した)弟子であるという驚愕の事実が明かされ、いよいよ十六夜九衛門のキャラクターにも深みと凄味が増してきましたね。

 私事ですが、丁度「スター・ウォーズ」シリーズを見返していた処なので、アナキン・スカイウォーカーをダブらせてしまいました。十六夜九衛門の過去についても詳細に知りたい処ですね。キンジの持つ写真と共に「引き」として強調されていたので、もしかするとキンジの過去とも関係があるのかも知れません。いずれにせよ、興味深いトピックではあります。

次回

 次回より、蛾眉雷蔵に代わる「晦正影(つごもりまさかげ)」なる幹部級怪人が登場します。またまた名前を読むのが難しいキャラクターですが...。大抵、武闘派の次は頭脳派なのが定石なので、恐らくはそういうキャラクターだと思います。それ故に、今度は八雲や霞といった頭脳派にスポットが当たるクールになる可能性も...!?