忍びの11「シノビマル、カムバーック!」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 キンジが伊賀先家に入り込んで、本格的に引っ掻き回し始めるというエピソード。

 前回のラストで、好天がキンジと天晴達を互いに戦わせるよう仕向け、今回よりそれが試行される事となります。...が、これが実にいい意味でユルい!

 期待を裏切らない陽性の展開で、これまでの「ニンニンジャー」の雰囲気をブーストしているとさえ言える、なかなか凄いものとなっています。

キンジの一手

 まず、キンジが天晴の隙を窺い、実際に襲撃するシーンが冒頭に用意されます。そこはさすがの天晴、身代わりの術で容易に回避。忍者としての向上が窺われ、後半の蛾眉との一戦での成長振りに説得力が加わっています。

 しかし、基本的には「タマの取り合い」といった殺伐とした方向には進まず、何となくスポーツの匂いを漂わせているのが特殊です。思いっきり刃を突き立てていたりはするんですけどね(笑)。

 また、キンジが朝食を用意する等、伊賀先のハウスキーパー的な役割を買って出ているのも特殊。勿論、標的が近ければ襲撃も容易といった目論見なのですが、伊賀崎家としては何となく歓迎ムード(しかし朝食の内容には各々それらしい注文を並べ立てているのが可笑しい)な辺り、ユルさが炸裂しています。ちなみに、朝食の前のシーンではそれぞれのパジャマ姿がお披露目となり、個性を生かしたものとなっていました。

 それと、キンジが喋る妙な日本語には、ちゃんとエクスキューズが用意されていて驚きました。曰く、日本語は落語や時代劇から習得したとあり、マルシアさんが「水戸黄門で日本語を勉強した」というエピソードを思い出してしまいました。妙な説得力があって可笑しいですよね。

八雲とキンジ

 冒頭のシーンから天晴との対決構造が明確になるのかと思いきや、今回のメインは八雲でした。

 イギリスの「魔法忍者」とアメリカの「リアルニンジャ」。キンジの魔法批判に始まり、果てはイギリス英語とアメリカ英語の発音の違いに至るまで対立します。これらの対立構造も殺伐としてはおらず、細かい事を気にする両者の些細なツッコミ合いといった馬鹿馬鹿しさ全開の雰囲気で、やはり陽性の雰囲気。本編終盤に至って、キンジは八雲が魔法を使っている事について認める事になるのですが、それが霞の出任せ(「八雲は忍術に自信がない故に魔法を使っている」との説)を鵜呑みにした結果であるのも可笑しい処です。

 なお、今回前半の八雲はガシャドクロに対抗する為、キンジと共に早々に巨大戦に移行しており、他の四人とは別行動になっています。ドラゴマルとロデオマルのドタバタな巨大戦が描かれ、実に楽しいシーンとなっていました。このバトルにはシノビマルも参加する筈だったのですが...というのが後半のドラマのテーマ。

エンラエンラ

 やかんがモチーフという、これまでの妖怪の中では最もシンプルな出で立ちのエンラエンラ。煙の妖怪という事で、その能力も吸入した者をいじけさせるという「イジケムリ」となっています。デザインは何となく「デンジマン」のベーダー怪物を彷彿とさせる「日用品モチーフの不気味な怪人」といった感じで、結構恐ろしいナリをしているのですが、声が岩田光央さんである事も手伝って非常にコミカル。

 この「イジケムリ」の所為でシノビマルがいじけてしまうばかりか、凪と風花もその犠牲に。特にシノビマルは、合成カットの構図の巧さと相俟って、その可愛らしさが強調されていました。

才女・霞

 今回もまた、霞の活躍が目立ちます。

 まず、喋る事が出来ないシノビマルの心の声を解析する装置をいきなり取り出し、傍に居たメンバーからどこから取り出したのかとツッコまれるやり取りがインパクト大。レトロなガジェットながら、その性能はすこぶる高く、「便利キャラ」としての霞の存在が確立しつつあります。雰囲気は殆ど奇天烈斎様...。

 後半では、いじけた凪と風花が遊具の中から出て来なくなった為、天岩戸隠れの神話よろしく、賑やかに踊ってみせるという、これまた奇抜な作戦を展開。八雲がそれに付き合っている姿が可笑しいのも定番のコミカル演出ですが、出来れば素面でやって欲しかったなぁ...という気も。何故か今回は、ドラマの重要なシーンにおける素面率が小さく、ロケーションとスケジュールの関係なのかなぁ...と勘ぐってしまいました。

 遊具から出て来た後も、凪と風花の説得は更に続きます。霞は設定上「KYの毒舌キャラ」という事になっていますが、どうもその設定は山谷さんの雰囲気に引っ張られて変化せざるを得なくなっているようで、今回は毒舌というより「ウソも方便」といった方向性にシフトしています。前述の、「八雲は忍術に自信がない故に魔法を使っている」という発言はここで登場し、凪と風花も自分達の悩みがちっぽけなものだった...と突如我に返るのでした。霞の現実主義的な言動には八雲もタジタジで、「ニンニンジャーの黒幕」といった雰囲気が見事に可笑しいですね。

自虐!?

 ちなみに凪と風花は、自分達が空気キャラに堕しているのではないかといじけているんですが、戦隊では例年、目立つキャラとそうでないキャラがどうしても二極化してしまう傾向があるんですよね。

 近作ではかなり気を付けられている印象もあるのですが、今シーズンでは凪と風花のメイン回以外でのフィーチュアが少ない事もあって、メタ的に妙な実感があるんですよね。

 風花は妹キャラのインパクトが強めなのでまだ良いのですが、忍者馬鹿、魔法忍者、事態逆転担当の才女、支離滅裂な妖怪ハンターといった並み居る強烈キャラクターの中にあって、凪は本当に良い意味で普通の少年なので、なかなか大変なポジションに居ます。これからの活躍が切に望まれます。

サブタイトルの怪

 今回のサブタイトルは、恐らくウエスタンスタイルのキンジ由来で、西部劇の名作「シェーン」の有名なラストシーンから採られているのですが、対象がシノビマルなので、二段階ひねりのような状態に(笑)。

蛾眉再び

 今度こそ決着といった雰囲気で展開される激闘!

 蛾眉を睨み付ける天晴の表情とセリフに、演者の成長振りが感じられるのもあって、見応えあるバトルの見事な露払い。そしてバトルそのものは、互いに二刀流で高速に切り結ぶという、もはやどうやって殺陣を付けているのか分からない境地になっていて、こういう時代劇も見たいよなぁ...と思わせるものでした。

 興味深いのは、決着そのものが意図的にカットされている事。突如、フラフラなアカニンジャーが巨大戦に参戦するという切替で、蛾眉に勝ったのかも...と思わせる驚きの場面転換になっていましたが、ラストで倒れ込むという強烈な引きが待っていました。恐らくは次回で蛾眉と何があったかを回想的に描くのだと思います。

雑感

 キンジをメインに立ち回らせると思わせておいて、八雲や霞、天晴をどんどん動かしていくという「ズラシ」が効いた回でした。狂言回しとしてのキンジの有用性を垣間見せたとも言えるかも知れません。

 自由なキャラが多いので、正直な処、蛾眉をどう絡ませるかという点に苦慮しているようにも見えるのですが、次回はその辺りの巧い見せ方に期待したいですね。主人公側のキャラ数に比べて、牙鬼陣営は未だ二人しか登場していないので、やや力不足にも見えてきました。その辺り、2クール目での充実を期待しています。