姫矢は遂に心停止、松永は懸命に蘇生を試みる。イラストレーターの助言でビースト振動波を照射することにより、姫矢はその生命活動を再開する。しかし、その身体は既に限界であり、次に変身すれば命はないとイラストレーターは忠告。だが姫矢はフォートレスフリーダムから忽然と姿を消した。
その頃、根来に呼び出されていた恵は、現れない根来を待っていた。そこへ姫矢が突然現れ、目前で倒れ伏してしまう。恵は姫矢を自分の部屋へと運び、目覚めを待っていた。目覚めた姫矢を心配する恵。
そんな折、UFO研究家の拠点に匿われていた根来は、ガセネタ収集に邁進する彼らに憤慨する。ところが、70%のヨタ話に30%の真実を混ぜて流布することにより、もみ消されずに済むという理論に思わず身を乗り出す。リーダー格の山田の話では、アメリカ・コロラド州で20年前に初めてスペースビーストが発見されたというが…。
一方、ナイトレイダーは、チェスターの新たなフォーメーション、「ハイパーストライクチェスター」を完成させていた。ハイパーストライクチェスターには、ウルトラマンのオーバーレイ・シュトロームと同等の威力を誇るウルティメイト・バニッシャーが搭載された。松永が姫矢の人体実験から得たデータを生かしたことを知るや、孤門と和倉は痛烈に批判する。しかし、松永は揚々と得られた強さを誇示するのだった。ビースト振動波を感知したナイトレイダーは直ちにスクランブル、ビースト振動波は同時に2箇所確認された。「黙示録の始まりだ 凪」溝呂木のメッセージが凪のパルスブレイガーに届く。
ビースト出現を感知した姫矢は、自分に関わる人を危険に晒したくない一心で恵を振り切って行ってしまった。
解説
「安息」というタイトルらしく、一旦姫矢の周囲に整理を付けようとするエピソード。とは言え、姫矢自身に関わる人があまりいないため、主に恵とのやり取りに終始している。それはそれで正解かも知れないが、恵自身のキャラクターはこれまであまり掘り下げられていなかった為、姫矢にとって恵が特別重要な人物であるという印象は薄め。それよりも、姫矢が傷身をおして戦いに赴くということの方が重要だ。
ところで今回、ウルトラマンの登場は冒頭とエンディングでのこれまでのエピソードの登場シーンのみに終わってしまった。それでも比較的派手なシーンを選出していることで、飢餓感を抑制してはいる。姫矢編のクライマックスが近いことを考えると、やはり「整理」の意味で総集編的な構成をしたのだと、半ば好意的に解釈したい。
姫矢の時間はゆっくり流れたが、一方で姫矢の周辺はかなりの展開を繰り広げた。ナイトレイダーは新しいチェスターのフォーメーションを獲得し、その際の松永の喜々とした表情に戦慄。溝呂木も密かに活動を再開し、位相を転々として次々と人間を捕獲するビーストが出現。また根来は信用の是非が図れない連中からもたらされた、「スペースビースト」という単語を初めて耳にする。この3点の出来事は、まだ有機的に絡み合うことなく並列的に展開されているが、姫矢編のクライマックスで一気に焦点へと向かっていくであろうことは容易に想像できる。となると、今回はやはり、「姫矢編クライマックス」の贅沢な序章ということになる。
最後に今回の要チェックポイントを一つ。それは松永とイラストレーター・吉良沢のスタンスの違いである。「常人」である松永は、少数の犠牲者を故意に看過するような指針を嫌いつつも、躍起になって姫矢から光の秘密を引き出そうとする。一方の「常人ならざる者」である吉良沢は、ビースト殲滅作戦の完成度に心酔しつつ、同様の常人ではない姫矢に一種のシンパシィを持つ。これは「不安」と「自信」の対立とも解釈でき、TLT内部の脆さというものが、もしかしたらこの二人によって露呈されるのではないかと予感させるのである。