Episode 19 要撃戦 -クロスフェーズ・トラップ-

 姫矢を撃とうとする凪を和倉隊長は制止する。彼は溝呂木とは違うと断言する和倉は、姫矢に共闘を申し入れるが、彼は静かに立ち去る。姫矢の身体はかなり危険な状態に陥っていた。

 その頃、新たなビーストが出現し人間を捕食し始める。和倉達と石堀・詩織は合流して直ちに行動を開始。そこへウルトラマン現れビーストを迎え撃った。しかし、ビーストは半透明となってウルトラマンの攻撃を無力化してしまう。それが位相間の移動能力によるものだと気付いたウルトラマンはメタフィールドで一気に勝負を付けようとするが、傷とエネルギー不足のためビーストの逃亡を許してしまう。

 イラストレーターは位相を跨いだ罠を仕掛けるクロスフェーズ・トラップを発案。限界時間は180秒。しかも、ビースト誘導のために10万人規模のベッドタウンを避難勧告なしにしておくという危険な作戦である。

 一方、グラビアアイドルの七夏とその撮影チーム保呂草と潤平は、姫矢のストーンフリューゲルを目撃、落下地点で姫矢を助ける。保呂草は姫矢の「最後の写真」に震えた一人であり、ある種の憧れを抱いていた。

 いよいよクロスフェーズ・トラップ作戦が開始された。ビーストを実体化に成功したナイトレイダーは直ちに攻撃へと転じる。保呂草は未知の戦いに驚き、すぐさまカメラを構えてそのシーンを収め始めた。しかし、保呂草はビーストに捕食されてしまう…!

 ビーストの進行方向の人間は退去していなかったのだ!

解説

 ここのところ傑作が続く。今回はある種ガイアを彷彿させる画面作りと筋運びとなっており、情緒あふれるロケーションによって都会的で硬質なネクサス世界にちょっとした風穴を開けた。

 今回ゲストとなった七夏、保呂草、潤平の3人は、どことなくガイアの玲子、田端、倫文を思わせ、その言動がクールでダークなネクサスワールドにおける違和感をもたらす。それは充分すぎる新鮮さとなって提示されるため、一瞬ネクサスではない番組を見ているような気分さえ味わわせてくれた。

 勿論、タイトルが示すとおり、今回の主幹はナイトレイダーによる大規模作戦「クロスフェーズ・トラップ」である。位相間移動するビーストを位相を跨いだ罠に引っ掛けるという、SFマインドに満ちた作戦である。どちらかと言うと精神論に終始しがちなナイトレイダーの、有能な作戦遂行者としての側面が強調されたことが興味深い。描写的には普通の怪獣モノっぽいものだったが、それが逆に新鮮だったのではないだろうか。

 一方、姫矢の状態悪化が一層はっきりしてきたのが今回のポイントか。放映前からデュナミストが複数人であることは知られていたが、放映プランとしても、2クールあたりでデュナミスト交代を狙っているようなので、そのあたりをドラマチックに演出しようという意図が垣間見られる。

 ビースト・ゴルゴレムは造形とキャラクター設定が見事にマッチした傑作ビーストだ。電飾が施されているのもポイント高し。また、口が伸びるギミックも楽しい。しかしながら人間を捕食するシーンはより直接的となり、なかなかショッキングだ。ここまで直接的に「人間を食べる」行為が描写されたのは、過去にもタロウぐらいのものだろう。

 少しイベント的なエピソードながら、和倉が姫矢に共闘を申し入れたり、凪が和倉の制止に素直に従ったりと、ウルトラマンとの距離が少しずつ縮まっていることを丁寧に盛り込んでいる。まさに大河形式の見本とも言える一編だ。