深夜、ビーストが出現、ナイトレイダーは直ちにスクランブルする。現場では吉良沢との連絡が途絶え、豹変した大学生に襲撃される。大学生4人を全員眠らせることに成功したナイトレイダーは、さらにビーストに遭遇。その様子を伺う姫矢、そして溝呂木…。
溝呂木に「貴様はしかるべきで倒す」と言い捨てた姫矢はウルトラマンとなってビーストと対決。ストライクチェスターで援護するナイトレイダーだが、ビーストの見せる幻覚に翻弄される。そして、凪と孤門のコンビネーションで戦況を有利にせしめたのも束の間、メフィストが現れてビーストと共に逃げ去ってしまう。一方、眠らせた筈の大学生は既に死亡していた。溝呂木が死した人間をまたも利用したのだ。「全ては1年前に始まっていた」という凪…。
凪の言葉が引っかかった孤門は、隊長にその意味を尋ねる。1年前…。あるビースト掃討作戦で、面白がる溝呂木をいさめた和倉隊長だったが、溝呂木は凪とペアでの突入を提案した。CICの指令と異なるその作戦を図らずも許可してしまった隊長は、突入を見届けた数分後に、2人からの連絡が途絶え戦慄する。建物の中ではビーストに操られる人間が2人を襲撃し、溝呂木は躊躇せず人間に銃口を向け続けていた。2人が潜入した建物は、紅蓮の炎を舞い上げて燃え上がり、その中からは、凪だけが生還した。
その夜、悪魔-メフィスト-は生れ落ちた…。
解説
今回は、溝呂木の謎を解き明かしていく一連のエピソードのプロローグにあたる。再登場ながら傑出した怪物性を見せたガルベロス、溝呂木によって生ける屍と化した大学生、目の前の溝呂木よりナイトレイダーの援護を優先する姫矢、凪と孤門のコンビネーションなど、溝呂木周辺のエピソード以外にも見せ場が多く、面白さに満ちた一編となっている。
ストーリーの中心は、当然ながら1年前の溝呂木失踪事件である。溝呂木と凪は、互いに特別な感情で結ばれてはいるものの、その根本はやはり「力に魅入られる感情」とも言うべきものであった。溝呂木は凪のビーストに対する憎しみから生じるパワーを買っているように見え、また一方の凪はビーストに恐れさえ抱かない強い溝呂木に憧れているように見える。セリフ音声が一切カットされた事件の回想場面で、何が起こったか正確には分からないが、この時点では凪を助けようとする姿が見られる。
その事件のシーンでは、現場突入前に交わされた和倉隊長と溝呂木の会話を聴くことが出来るが、ここでちょっとした驚きがある。隊長を「和倉」と呼び捨てにしているといった些細なことはともかくとして、驚きというのは、現在のメフィストとしての溝呂木と、この事件当夜の溝呂木にあまりギャップがないことだ。つまり、「ある日突然、悪魔に乗り移られて人格変わりました」といったチープな落とし処に堕していない。ナイトレイダー副隊長・溝呂木と、メフィスト・溝呂木は地続きであり、それ故に未だ凪にこだわっているのだとも言える。
文章が少々深入りしてしまったが、それだけ今回は楽しめた。孤門の迷いからのウダウダ感も完全に払拭され、これから溝呂木と対峙していくであろう孤門に対する、好意的な演出が数々見られるのも要因の一つかと思われる。チェスターのストライクフォーメーションに対して積極的であったり、ガンナーを一手に引き受けていたりと精悍なイメージで統一されていて格好良い。
ところで、石堀君と詩織はちょっとイイ関係なのか…? (前回の「甘えんじゃないわよ」も参照のこと)