リコの部屋で絶望感にとらわれる孤門は、ビーストの一部に心をとらわれてしまう。その頃、凪は迷いつつも溝呂木を撃つが、溝呂木は簡単に弾丸をはじき返してしまう。ここで何をしているのかと問う凪に、溝呂木は「これはゲームだ」と嘯く。
スクランブルがかかりナイトレイダーは出動するが、ターゲットの位置にいたのは怯える中年男性だった。溝呂木による策略にはめられたことを知り激昂する隊長に、凪は溝呂木が我々の怒りや恐れを楽しんでいると告げる。
一方、孤門はかつて遭遇したビーストの幻に翻弄され、怒りにとらわれていた。そんなダークサイドへの一歩を踏み出そうとする孤門を姫矢が救う。そこへリコが現れ、彼女はあろうことか孤門の目前でファウストとなる! 姫矢もウルトラマンとなって応戦。それを冷笑を浮かべ傍観する溝呂木…。
ダークフィールドへと戦闘の場が移り、ファウスト有利となったとき、ダークフィールドに巻き込まれた孤門の呼びかけがファウストに届いた。ファウストの依代となってしまったリコの記憶はかすかに孤門を覚えていたのだ。溝呂木はビーストを呼び出し孤門抹殺を図るが、それを庇ったのは何とファウストだった!
戦いが終わり、倒れるリコを抱きかかえる孤門だったが、彼女は光の粒となって孤門の腕の中から静かに消えていった。
解説
孤門とリコの悲劇的な「別離」が描かれた、ネクサスがウルトラの中でも異色中の異色シリーズたる根拠を見せ付ける一編。「帰マン」の郷とアキの死別を大きく超える悲劇度。孤門とリコの初々しいやりとりや、多忙ゆえ会えない時分でも互いの信頼感を失わない描写が切々と積み上げられてきたことが、ここで非常に大きな効果を上げている。
一方で溝呂木の「姫矢の暗黒面」的なキャラクターが奮っており、凪の弾丸をいとも簡単にはじき返したり、中年男性に憑依して隊長に卑劣な言動をとるなど、ファウストさえも超えた凶悪度で迫る。その溝呂木の卑劣さに激昂する隊長に、普段は冷静な彼の別面が見られ興味深い。
ファウストは、やはりリコだったのだが、ウルトラマンと同様、ダークサイドの巨人にもデュナミストのようなものが存在し、元々資質を持っていたか、あるいは溝呂木に殺された時点でそれを身に付けたのかは不明だが、リコはファウストのデュナミストたる能力は持っていたのだろうと推察される。それは前話で沙耶が「TLTに入れる数値」としたリコの検査結果からも読み取れる。溝呂木は孤門がナイトレイダーに入ることも、リコが「適能者」になりうることも知っていたのだろうか?
悲劇度が高い割には、ストーリーの暗さの面では前話よりも遥かに抑えられている印象を受けるのだが、それはウルトラマン VS ファウストの派手な戦闘シーンにも依るものだろう。上空へ飛ばされたウルトラマンが体勢を整えてキックへと転じるカットには効果的にCGが使われ、その一種アニメーション的なケレン味に満ちた表現は新鮮で非常に格好良いものとなっていた。