ストーリー
準備中。
解説
「ウルトラマンメビウス」の映画版にして、「ウルトラ兄弟サーガ(仮にこう呼ばせて頂く)」の最新映画。
「UTLRA N Project」の映画第2弾として「ULTRAMAN2」が企画されたが、諸事情により断念。神戸ロケという要素を持ち越し、ウルトラマンシリーズ40周年の記念祭的な映画に仕上げられたという経緯がある。
前述のように、ウルトラマンシリーズ40周年という要素を前面に押し出した制作姿勢は、ストレートかつ贅沢でマニアック。つまり、典型的な親子二世代向けムービーとして完成せしめている。
何はさておき、この映画の特徴は、タイトルそのままに「ウルトラ兄弟」であろう。
「ウルトラ兄弟」という呼称は、「ウルトラファミリー」「ウルトラ戦士」へと推移し、平成シリーズ展開中に一度は失われたかに見えた。ところが、この映画ではタイトルに堂々と掲げ、高らかに「ウルトラ兄弟」復活を宣言している。
第2期ウルトラで登場したこの呼称は、後にコアなファンの間で賛否を巻き起こしており、否定論者の間では、専らウルトラマンの矮小化の因子として挙げられた。しかしながら、21世紀に入り第2期ウルトラの再評価機運は非常に高まっており、「兄弟」という要素も多大な魅力の一つと認識されるようになってきた。そして、絶妙のタイミングで、今回の映画が登場と相成るのだ。実際、「板野サーカス」は、旧来ファンのこだわりを突き放すような側面(ある程度狙っていると思われるが)こそあるものの、超越者たる「ウルトラ兄弟」の戦い振りを存分に描いていると言えよう。また、要所要所で聴かれるBGMは「ウルトラマンT」の挿入歌「ウルトラ六兄弟」のアレンジ。ウルトラ兄弟を象徴するこの曲をフィーチュアするあたり、ファンの琴線をよく理解している。
各種特撮映像もそうだが、やはり豪華なゲスト(と言うには語弊すら感じられる存在感だが)俳優陣にも触れなければならない。
ハヤタ役の黒部氏は、自前の眼鏡をかけて登場。マックスのトミオカ長官とは、見事に別個のキャラクターが成立している。ミライと最初に邂逅、兄弟のまとめ役として要所要所で脇を締めており、4兄弟における長兄らしい役回りが印象的だ。ダン役の森次氏は、口髭を生やして登場。ミライとは近似した境遇を経験している点が考慮されてか、終始優しくも厳しさを秘めた語り口が胸を打つ。郷役の団氏は、年相応の(といっても一般的には随分若々しいが)威厳に満ちた面構えで登場。逸る北斗を抑えつつも、それに乗じて兄たちに進言する様子が泣かせる。また、自らの経験に基づいた戦いの時の心構えを説く姿も、説得力抜群だ。北斗役の高峰氏は、「ウルトラマンA」放映当時を思わせる若々しさを湛えて登場。グラスが床に落ちる寸前、指にウルトラリングの光る手がそれを救うという最高のシーンで登場し、4兄弟における末弟らしさを失わない血気盛んな言動が実に嬉しい。また、4人の変身シーンは新撮となっており、旧変身シーンを意識した構図やエフェクトが取り入れられている。
俳優陣の尋常ではない熱気を受けてか、演出も冴え渡っている。勿論、マニアックな側面を含めての冴え渡りようだ。テンペラー星人に「出て来~い」と言わせたり、メビウスやウルトラ兄弟を閉じ込めたクリスタル状の物体が、ガッツ星人ならではの十字架型だったり、ナックル星人が相変わらず狡猾だったり、ザラブ星人の声が、オリジナルキャストの青野武氏だったり…。これだけ旧作のテイストを大事にすると、当然ウルトラ兄弟側も秀逸な反応を見せてくれる。例えば、宇宙人軍団を見上げての郷のセリフ等にそれが現れている。
一方、CREW GUYSは完全に蚊帳の外扱い。「ウルトラマンメビウス」の映画版としては、その点かなりの物足りなさを感じてしまうだろうが、これはGUYSつまり人間の物語ではなく、ウルトラマン達の物語であり、ウルトラマンが主役の映画なのだ。メビウスが地球人と一心同体になったのではなく、ヒビノ・ミライに変身しているというシチュエーションが、この映画を成立させているのである。即ち、地球人としてのアイデンティティが入らないところで、「地球人を愛する宇宙人」が繰り広げるドラマ、それがこの物語だ。
監督の小中和哉氏の談話では、この映画は「ウルトラマンT」のバーベキューの回(第33話「ウルトラの国大爆発5秒前!」、第34話「ウルトラ6兄弟最後の日!」)のリメイクというニュアンスが語られている。なるほど、非常に的を射た表現であることが分かる。ZATはウルトラ兄弟に憑依され、外見こそZATだが完全にウルトラ兄弟の物語。メビウスに慢心こそないものの、タロウの役回りはそのままメビウスに受け継がれ、30年を経ても、4兄弟の役割はほぼ同じ。北斗が熱く先走り、郷がそれに同調し、ダンは可能性を模索し、ハヤタが決断する…。「T」の該当話を見た者にとっては、デジャヴ感覚すら覚えるだろう。「T」の第33話と第34話の脚本は佐々木守氏だが、「T」のメインライターである田口成光氏の得意とする、怪獣ドラマと人間ドラマが別個に並行しつつ同じベクトルに向かうという展開も、この映画では取り入れられている(例えば、アヤやタカト)。
デジャヴ感覚にとらわれたとき、「T」の第33話と第34話が、いかに当時の主な視聴者のニーズを最大限に体現していたかが分かる。本映画はウルトラ映画史上でも記録的なヒットとなり、このようなテーマや昭和ウルトラの類稀なるキャラクター性の魅力が、再び評価されるときが到来したのだ。逆説的に言えば、今後のウルトラが、「ウルトラマンレオ」が制作された当時のような岐路に立たされるのはほぼ間違いない。次なる展開に大いに期待したい。
最後に、仕掛けられた小ネタに言及しておく。ウルトラ映画恒例の「縁の人ゲスト出演」は、今回、堀内正美氏(神戸市長 松永役)、山田まりや氏(ミドリカワ市長秘書役)、布川敏和氏(コウダ助役)、風見しんご氏(海洋学芸員 広川さん役)。あえて説明するまでもないだろうが、風見氏以外は、役名までかつて出演したシリーズを踏襲。さらには、松永市長に至っては、携帯電話の着メロが「ナイトレイダー出動のテーマ(※実際の曲名ではありません)」という徹底振り。他にも、タロウがストリウム光線を放つとき、「ストリウム・光線っ」と言い放っているのが高得点。再編集系の映画を除くと、ゾフィーがM87光線をまともに放つのも今回が初めてだ。また、セブンの掛け声は恐らく新録(さすがは森次氏)。他の兄弟はオリジナルをサンプリングしている。残念なのは、エースの掛け声に納谷悟朗氏の声が使われていなかったことだ(トーンを落として雰囲気を出そうとしている痕跡は見られる)。
また、エンドロールでは、40周年記念パーティの様子が映し出され、年を重ねつつも普遍的な魅力を放つ諸氏の姿が拝める。本編中、兄弟たちが回想するシーンに登場するキャラクターは「友情出演」という形でクレジットされ、このパーティにも顔を見せてくれる。さらには40周年記念らしく、平成ウルトラや海外撮影作品も含めた歴代ウルトラの映像がフィーチュアされている。まさにお祭りムービーの趣であり、非常に楽しい余韻を残してくれた。
データ
- 監督
- 小中和哉
- 特技監督
- 小中和哉
- 脚本
- 長谷川圭一