ストーリー
インペライザーの前に倒れるウルトラマンメビウス。しかし、人々の声援が力となり、メビュームダイナマイトを炸裂させる。しかし、ミライは立つこともままならない状態に陥ってしまった。
GUYSスペーシーの調査により、太陽黒点から未知の高エネルギー体が検出された。しかも、その高エネルギー体は、太陽を侵食しているという。時を同じくして、世界中のインペライザーが東京周辺に集合してきた。ミライは集中治療室で眠っている。この未曾有の危機に、GUYSはあらゆる戦力を結集して防衛線を張った。
しかし、あらゆる兵器はインペライザーの歩みを止めることすらなく、フェニックスネストは壊滅的なダメージを負ってしまった。ミライが病室を抜け出し、ディレクションルームにやって来た。「僕たちの思い出の場所ですから」共に戦うと言うミライ。しかしインペライザーの銃口は、確実にフェニックスネストを捕らえていた。ところが、インペライザーは目前で両断される。ザムシャーがやって来たのだ。
すかさず、破片となったインペライザーが再生を試みる。だが、インペライザーの破片はことごとく消滅した。フェニックスネストに現れたのは、サイコキノ星人・カコとファントン星人。カコとファントン星人が、インペライザーの破片を消滅させたのである。サコミズ隊長は、自分達が紡いできた絆に誇りを抱いていた。
そこへ降り立つエンペラ星人。降り立つだけで大都市のビル群はその形を失い、炎に包まれる。エンペラ星人は、3万年前にウルトラの父より受けた傷を撫で、ウルトラの戦士たちを呪いつつ、地球の死滅を予言した。
ザムシャーがエンペラ星人に立ち向かい、カコが念動力を行使するも、それらは無力に等しい。ミライはメビウスへの変身を試みるが、メビウスブレスは消滅、ミライは昏倒してしまった。続いて登場したのは、アーブギアをまとったウルトラマンヒカリ。リュウはそれを見てガンクルセイダーで飛び立つ。リュウの攻撃、そしてヒカリ、ザムシャーの剣がエンペラ星人を捕らえるが、片手で軽くはねつけられてしまう。
フェニックスネストにエンペラ星人とどめの一撃が向けられた瞬間、ザムシャーが盾となった。「これが、守るということなのだな、メビウス」そう言い残し、ザムシャーは散っていった。続いてアーブギアを破壊されたヒカリが、ザムシャーの「星斬り丸」を構え、エンペラ星人に切りかかった。エンペラ星人に一条の傷を与えたが、ヒカリはそこで力尽きてしまう。
リュウは怒りに任せて特攻をかけた。ガンクルセイダーは、エンペラ星人に到達することも適わず、粉々に砕け散った…。
解説
破壊、破壊、そして破壊…。最終三部作の第二部は、中篇に相応しい未曾有の危機。ストーリーらしきものは最小限にとどめ、とにかくエンペラ星人とインペライザーにより破壊され蹂躙される様を丁寧に描いていく。
その描写は、静かに、しかし壮絶に描かれる。バンク映像が混じっていたかどうかは定かではないが、破壊されたミニチュアはいかばかりか。これほど全編に渡って破壊描写が繰り広げられること自体が、前代未聞と言って良いかもしれない。
連続する破壊シーンは、一つずつが手抜かりなく組み立てられており、全てが通り一遍に過ぎていくということのないよう、それぞれに変化がつけられている。これぞ円谷特撮と言わんばかりの、窓ガラスが吹っ飛ぶビル破壊や、炎上描写が重んじられたもの、瓦解する建造物をアオったものなど、そのバリエーションが幾つも出てくる。さながら、破壊描写のカタログといった具合なので、じっくり見る手段のある方は、一つずつ追っていくのも楽しみ方の一つだろう。ただし、弊害がないわけでもない。
例えば、同じようなシチュエーションを見せる、ウルトラマンガイア最終回では、その描写を実景との合成にて巧みに表現していたのに対し、本エピソードはミニチュアセットで殆どを表現することに重きが置かれている。それはつまり、セットの出来如何でリアリティの有無が決定付けられてしまうということだ。残念ながら、あまりにも多彩な破壊シーンを盛り込んだために、ライティングや空気感にセットくさいシーンが幾つか見られ、そのリアリティをスポイルしてしまっている。破壊される建造物を一つ一つとらえたシーンは凄まじい出来なのに対し、破壊後のミニチュアを並べた途端に、スケール感が乏しくなってしまう不手際が散見されるのは残念だ。
だが、旧来ファンの視点から見れば、その空気感もまた楽しみの一つである。さらに今回は、懐かしい曳光弾が乱れ飛び、戦車やいい意味で古めかしい砲台が脇を固めていたりで、実に楽しませてくれる。リアルさをスポイルする危険わ伴っても、このような「伝統」にスポットライトを当てる姿勢には好感が持てる。
さて、本編に目を向けると、よくぞこの危機一辺倒のエピソードにこれだけの仕掛けをしたものだと、感心させられる。まず、前回、ウルトラセブンと同じ症状で昏倒していたミライ。今回は、その状態であった(ウルトラセブン最終回の)モロボシ・ダンを彷彿させるメイクが施されており、その症状の悪化振りを見せ付けていた。いくら人々の声援が力になるとは言え、きちんと力を失っていく様を描いている点は素直に評価できる。
そして何と言っても、ゲスト宇宙人たちであろう。まず、カコであるが、ちょうどこの放送の直前に、第36話「ミライの妹」を収録したDVDが発売されており、復習した直後に本エピソードを見ると、その感慨がより高まる。登場した直後から笑顔を見せるところや、「ありがとう」「ミライの妹」という重要なターム、そして、トリヤマ補佐官によって安否を確認される様子が何より素晴らしい。今回の小ネタの中で最もグッと来るシーンではなかろうか。
ファントン星人は、「キエテ、コシ、キレキレテ」のセリフと共にテッペイと抱き合うシーンが嬉しい。そしてザムシャーは、今回最も「オイシイ」キャラクターとして再登場。インペライザーを苦もなく一刀両断するケレン味、主人公の敵対者ではない微妙な立場、身を挺してライバルをかばう壮絶な最期…。どれをとってもザムシャーでなければ成立しない、オイシイ役どころだ。「サムライ」という形態に抱くイメージの体現でもあろう。その宝刀を、もう一人のライバルであるウルトラマンヒカリが使い、エンペラ星人に一矢報いる展開も熱い。
気付けば、後半にはメビウスが登場していない。エンペラ星人と直接対決すべく登場したのは、ザムシャーとヒカリのみだ。ザムシャーもヒカリも「喋る」キャラクターであり、それぞれ強烈なアイデンティティを持っている(ヒカリがふとセリザワの声を発するシーンは特に強烈)。メビウス未登場でも、ちゃんと絵が成立しており、それぞれのキャラクターの完成度の高さを物語っているようだ。
最後の最後を前に、メビウスを早々に退場させ、様々な助力をことごとく敗北に追い込むという展開は、まさに今回のサブタイトルにピッタリ。最終回の予告編では、早くもカタルシスに満ちたウルトラ兄弟総登場の興奮に彩られており、いかに本エピソードが「未曾有の危機」というものを丁寧に描ききったかが分かる。気付けば、エンペラ星人は殆ど足を動かしていない。まさにウルトラの国の宿敵に相応しい描写であった。
データ
- 監督
- 佐野智樹
- 特技監督
- 原口智生
- 脚本
- 赤星政尚