ストーリー
太陽黒点が異常な活動を示している。
一方、週刊誌にヒルカワの記事が載った。ウルトラマンメビウスが人間の姿でGUYSに潜伏しているという内容だ。そして、GUYSスペーシーの防衛ラインを突破し、13体のインペライザーが地球に到達した。世界主要国の首都に降り立つインペライザー。東京も例外ではない。
「皇帝」と名乗る声が人類にウルトラマンメビウスを追放しろと命じ、東京のインペライザーが起動する。ミライはメビウスに変身してインペライザーの進撃を阻止。ところが、別のインペライザーが2体も出現し、途端に危機へと転ずる。ガンフェニックストライカーの一撃とメビュームダイナマイトにより辛勝するも、インペライザーはなおも送り込まれてくる。成す術なく、メビウスは昏倒して消えてしまった。
「皇帝」の声は、人間達に3時間の猶予を与えた。その間に、メビウス追放か否かの総意を示せというのだ。時を同じくして、報道番組に出演するヒルカワは、ミライがメビウスであると発言、世間に大きな波紋を広げる。やがて、国家安全保障局の査察官シキが、フェニックスネストを訪れた。
シキはウルトラマンメビウスの引渡しを要求してきたが、ミライは人間の姿を維持することすら困難な状態であった。トリヤマ補佐官は、ミライを誠実でかけがえのない部下だと称し、シキを牽制する。そこへサコミズ隊長が現れ、トリヤマ補佐官の言葉がGUYS JAPANの総意であると断言した。シキは、サコミズを「総監」と呼ぶ。驚く一同。「私もウルトラマンと一緒に戦いたかった。君たちと共に」サコミズは、総監という立場を隠して隊長職に就いていた理由をそう説明した。シキは重ねて総監辞任を要求。サコミズは「最後の仕事」をさせてくれと依頼する。その頃、太陽黒点の異常活動を、ウルトラマンヒカリが危機感を持って見つめていた…。
サコミズ総監は、会見を行った。「メビウスは、CREW GUYSの一員です。昔、私が亜高速で宇宙を飛んでいたとき、侵略者から地球を守るため、人知れず戦っているウルトラマンを目撃しました。その時、彼は言いました。いずれ人間が自分達と肩を並べる日が来るまで、我々が侵略者の盾になる、と。彼らは人間を愛してくれた。そして人間を命懸けで守り続けてくれたのです」。サコミズの言葉に息を呑む人々。さらにサコミズはウルトラ警備隊・キリヤマ隊長の言葉を引用し、「彼らの力に頼るだけでなく、私たちも、共に戦うべきだと伝えているのです。一人ひとりの心の声に従い、最後の答えを出してください」と結んだ。報道各局には、メビウスを応援するメッセージが殺到、政府はメビウスを侵略者に引き渡さないという決定を下した。
タイムリミットが到来、世界各国でインペライザーが起動した。ミライは動くこともままならない身体でメビウスに変身する。ガンフェニックストライカーの援護射撃を、「皇帝」エンペラ星人の火球が遮った。そしてさらに、ガンフェニックストライカーはエンペラ星人の火球に撃墜されてしまう。インペライザーの猛攻に、メビウスは手も足も出ない…!
解説
「最終章三部作」と銘打たれた、長編構成の最終第一回。ウルトラ兄弟客演エピソードで、CREW GUYSとウルトラマンメビウスの絆を再確認してきたが、まずは最終第一回で地球人(というより日本人だが)全体とウルトラマンとの絆を確認するという構成である。
それに絡め、重要な要素が次々と紐解かれる。
まず、ヒルカワをちゃんと引っ張り出し、マスコミを機能させ、さらに政府、民衆へとミライの秘密を波及させていく段取りは、実に美しい。少々理想主義的に走っている感もあるものの、民の総意が、ウルトラマンを自らの同胞と受け止めるというくだりは心地良く、これはウルトラマンメビウスというシリーズならではの展開であろう。またそれは、ウルトラマンが日本のパーマネントキャラクターであるという、制作側の自信ともとれる。
そして、ついにGUYS JAPAN総監の正体が判明する。そのシーンで重要な役割を果たすシキに、斉藤洋介氏というキャスティング。斉藤氏の起用というトピック自身に、制作側の並々ならぬ意気込みを感じさせると共に、その独特の口調でサコミズの秘密をさらりと告白させるところに、あざとさを廃した演出の完成を見る。
サコミズ隊長が総監であるという事実は、大方の予想通りだったのではないだろうか。その為の伏線的演出は、随所に見られた。ただし、聞くところによれば、総監の設定は中盤まで調整が入っていたようであり、周到に仕掛けられた伏線であったようだ(有名な「東光太郎説」も可能性はあったわけだ)。ただし、結果論からすれば、総監がサコミズであることに違和感がないどころか、そのポリシー、志の高さが常々描写されてきたサコミズでなければ、総監としての説得力はなかったであろう。今回のサコミズの演説は、演ずる田中実氏の力強くも静かな口調により、その湧き出る信念の泉が見る者を引き込む。この瞬間、視聴者は劇中のビジョンを見つめる民衆と一体化するのである。
さて、エンペラ星人は旧来のウルトラファンならば、殆どがその名を知っているであろう、メジャーキャラクター。名前はメジャーでありながら、その詳細に関しては完全に謎であり、悪い言い方をご容赦いただけるならば、名前だけ登場させてウルトラの国の歴史の深淵を描写したに過ぎないものであった。メビウスのように、昭和ウルトラシリーズを掘り下げる作品がなければ、その存在は無視され続けたのではないだろうか。例えば映画「ウルトラマン物語」では、ウルトラ兄弟最強の敵という存在を描きながらも、それがエンペラ星人ではなく、TV作品「アンドロメロス」より拝借したジュダなるキャラクターであったことからも伺える。
エンペラ星人の声には、内海賢二氏が起用され、その宇宙に響き渡るような浪々とした声質を得て、大ボスとしての風格は完璧なるものとなった。そのエンペラ星人が送り込んだのは、複数のインペライザーである。最終章に大量の敵を送り込んでくるという構図は、「ウルトラマンガイア」や「ウルトラマンマックス」あたりに前例がある。また、世界の主要都市が脅迫にさらされるというパターンは、古く「ウルトラセブン」で既に見られた。本エピソードは正に「ウルトラ最終回」の要素を満載したものと言える。
ただし、その圧倒的な強さで鮮烈な印象を残したインペライザーが、今回はかなり弱体化している印象を否めない。かつての強敵が量を伴って再登場した折には、弱体化してしまうという、特撮TVドラマの不文律を踏むこととなったのだが、インペライザーの登場から約半年を経ていることを考えると、メビウス自身の強さや、ガンフェニックストライカーの「パワーマキシマム」は、インペライザーを撃退できるほどになったと解釈できる。実際、ウルトラマンレオとの一件で習得したスピンキックや、メビュームダイナマイトが見られたのは、素直に喜ばしいことである。このインペライザー登場シーンは、いずれも合成とミニチュアの親和性、カット割りのウマさが抜群であり、最終章ならではのスケールの大きさを感じることが出来る。
他にも、沢山のネタが満載だ。
久々に登場したトリヤマ補佐官が男気を見せるシーン(これまでで最もトリヤマ補佐官がカッコ良く見える名場面)を初めとし、「脈拍360、血圧400、熱は90度近くもある」というモロボシ・ダンと同じ症状を見せるミライ、サコミズの演説の中に「ウルトラ警備隊・キリヤマ隊長」という言葉が出てくること、「ウルトラマンネクサス」の平木隊員役・五藤圭子氏の登場(母親役という点に年月の推移を感じる)…。そしてウルトラマンヒカリ、久々の登場も見逃せない。
最後に、本エピソードが目指したものについて述べておきたい。
平成ウルトラシリーズは、人類の力が光を生み出し得るという視座で繰り返し描かれてきた。ただしそれは「奇跡」というレベルにまで昇華されることと、リアルであることの葛藤でもあった。しかし、メビウスは昭和ウルトラシリーズの流れを重視し、あくまで宇宙人と地球人という視点に立っている。それは、地球人の声援がメディアを通じてウルトラマンの耳に届くという、非常にリアリティを重視した点に帰結している。このエピソードは、平成ウルトラシリーズが描いてきた、「地球の力」を昭和ウルトラシリーズのテイストで換言した、ウルトラシリーズ集大成なのだ。
データ
- 監督
- アベユーイチ
- 特技監督
- 菊地雄一
- 脚本
- 長谷川圭一