第37話 父の背中

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ストーリー

 「ウルトラの父 降臨祭」。怪獣頻出期、冬の時期に何度かウルトラの父が現れ、奇跡を起こしたことを記念した催しである。ウルトラマンメビウスが地球に出現したことで、今冬、ウルトラの父が降臨するのではという予想から、街は賑わっていた。CREW GUYSでも、備えを万全にしつつ、ディレクションルームでパーティを開催することに決定。ミライがその買出しに出かける。

 ミライが出会った少年・コウキは、父親との「ウルトラマン レストラン」の降臨祭フェアに行く約束を、急な仕事が入ったことですっぽかされ、落ち込んでいた。「お父さんは僕のことを嫌いなんだ」と言うコウキに、ミライは「お父さんもきっと悲しかったはずだよ」と言って慰める。そこへ怪獣が降下中との連絡が入る。現れたのは倒した相手の死体をコレクションするという、趣味の悪い宇宙人・ジャシュラインであった。例の時空波に引かれ、地球にやって来たのだ。

 CREW GUYSは直ちに発進した。一方コウキは避難の最中、誤って転倒し捻挫してしまう。ジャシュラインはメビウスをおびき出すべく、街の破壊を開始。「GUYSのお仕事、頑張って」コウキは背中を貸そうとするミライを、そう言って送り出した。

 メビウスに変身したミライは、ジャシュラインに立ち向かうが、卓抜した格闘術の前に苦戦。遂にはジャシュラインによって金の像に変えられてしまう。メビウスを援護するリュウ、ジョージ、マリナもジャシュラインに対する攻撃をそのまま返され、気を失ってしまった。ジャシュラインは珍妙な勝利の舞に興じ始めるが、カラータイマー部分が金に変化していないことに気付き、手にしたブーメラン状の武器で、カラータイマーを破壊せんと何度も打ち始めた。その振動が容赦なく街を襲い、コウキが階段から落下。間一髪それを救ったのは、コウキの父親だった。コウキが降臨祭に行ったのではないかと心配し、仕事をキャンセルして駆けつけたのだ。コウキは父親に自分のわがままを詫びる。

 ジャシュラインはさらなる力を込めて、メビウスを打ち据える。「きっとウルトラの父が助けに来てくれる」そう言うコウキに、「子供の頃、本物のウルトラの父を見た」と自慢するコウキの父。しかし、カラータイマーにはとうとうヒビが入ってしまった。そして、メビウスのカラータイマーが今まさに破壊されようという瞬間、天空より光線が放たれ、ジャシュラインの手を止めた。まばゆい光の中から現れたのは、ウルトラの父であった。ジャシュラインは「宇宙警備隊大隊長をコレクションに加える」と俄然ヤル気を発揮する。

 ウルトラの父は、ジャシュラインを軽くあしらい、羽織ったマントをかぶせてしまう。ジャシュラインが自由を奪われている隙に、メビウスのカラータイマーにエネルギーを注ぐウルトラの父。復活したメビウスは、目前にウルトラの父が居ることに驚きを隠せない。かぶせられたマントより逃れたジャシュラインは、ウルトラの父とメビウスを金に変えてしまおうするが、ウルトラの父はウルトラアレイを取り出してその能力を完全に封じてしまった。

 メビウスはバーニングブレイブとなって、ジャシュラインに猛攻を加える。怒ったジャシュラインは地殻を刺激して地球を大爆発させようとしたが、メビウスはメビュームバーストで粉砕した。

 ウルトラの父の助力に対し、申し訳ないという気持ちを吐露するメビウス。ウルトラの父は「それでも負けてはいない」と告げる。カラータイマーが金に染められなかったのは、メビウスがジャシュラインに屈しなかった証だという。街の人々の歓声を受け、「君自身が諦めない限り、それは敗北ではない。彼らの希望であり続ける限り、君はもっと強くなれる」と教えたウルトラの父は、悠然と空の彼方へ去っていった。

解説

 ファン待望の、ウルトラの父登場編。「ウルトラマンメビウス」では、第1話より姿こそ見せているが、実際に戦闘に参加した描写はなく、まさに今回は待望の「降臨」となった。

 ウルトラの父の地球来訪と言えば、真っ先に思い浮かぶのが、ウルトラマンA・第27話「奇跡!ウルトラの父」であろう。ここでのウルトラの父の威容は素晴らしく、ウルトラ兄弟を超越した存在であることを印象付けた。しかし、当時はまだ客演の手法が洗練されておらず、主役のエースを立てる為の演出が「ウルトラの父の死」という悲壮感溢れるものとなってしまったのも事実だ。その後、同第38話「復活!ウルトラの父」で文字通り復活。ウルトラマンT・第39話「ウルトラ父子餅つき大作戦!」では怪獣モチロンに説教(!)をする為に登場、同第51話「ウルトラの父と花嫁が来た!」ではウルトラフェザーと呼ばれる孔雀の羽のような武器を携えて登場した。以降はウルトラマンレオやウルトラマン80にてわずかなシーンで確認できるに留まる。

 今回は、ウルトラマンA・第27話「奇跡!ウルトラの父」から、像と化したウルトラマンを助けに来るという構図を、同第38話「復活!ウルトラの父」から、冬に起きた奇跡という要素を拝借している。特にウルトラの父がサンタクロースの姿で登場した後者は、ファンにとって印象深い。その為、ウルトラの父の声を演じている西岡徳馬氏が、サンタクロースの姿で登場することを期待してしまったが、残念ながらそのようなシーンはなかった。放映日がクリスマスにごく近いということを考えると、「降臨祭」がクリスマスに結びついても違和感はなく、少々残念である。

 しかしながら、登場したウルトラの父は、やはりファンにとって期待通りのウルトラの父であった。空から地響きと共に降りてくるのではなく、まばゆい光球から徐々に姿がはっきりしてくる様子からして、既に拍手喝采モノである。腕組の状態から、拳を腰に当てるポーズに変遷する様を、わざわざ絶妙なカット割で見せる贅沢さ。あらゆる攻撃を受け流すように、ジャシュラインをあしらう余裕を表現した殺陣。「復活!ウルトラの父」でのファザーショットの色合いを再現した光線(出来れば実際に撃つところを見たかった)の効果。西岡氏の威厳に満ちたセリフ回しに加え、西岡氏新録による戦闘時の掛け声。何を取っても、ウルトラの父の理想像に近い。ヒッポリト星人を、当時こんな風に倒して欲しかったなどと思ってしまうほどの、堂々たる威容であった。

 一方で、今回少々引っかかるのは「降臨祭」である。確かに、ウルトラの父はテッペイの言うように度々出現しているが、全部が全部「この時期」ではなく、秋・冬・春に分散している。確かに、前述のサンタクロースの話と、モチロンの話は冬だが、こと「奇跡的な話」にモチロンの話を加えるには些か抵抗がある。劇中のエクスキューズでは、「ウルトラの父が現れるのは冬だ」的な印象が強い為、ディープなファンとしては違和感を禁じえない。やはり、「クリスマスに出現して奇跡を起こしたことがあり、ウルトラの父降臨とクリスマスが同時に祝われる」とした方が、より神秘的で自然だったのではないだろうか。

 さて、本エピソードのストーリーに関して分析してみると、実に「ウルトラマンT」的でありながら、「メビウス」的であることに気付く。「ウルトラマンT」的なのは、ジャシュラインの愉快犯的性格や、ウルトラマン達の関係と人間の血縁関係をダブらせて語る手法だろう。特に後者は、言葉少ななウルトラマン達の心情を、人間関係に置き換えて分かりやすく語る田口成光氏の巧みな語り口を彷彿させる。「メビウス」的なのは、前述の田口氏の手によるエピソードに散見された、ある種の悲壮感が感じられず、爽やかな路線を貫いているところである。これにより、ゲストウルトラマンの客演エピソードを、別次元で成立させているのが面白い。「メビウス」とは、CREW GUYSの群像でありながら、ウルトラマン達の群像をも描く懐を備えていると言っても、過言ではなかろう。

 続いて、思わずニヤリとしてしまう要素をピックアップしてみたい。まずはウルトラの父が現れた際の、テッペイの興奮振り。「ウルトラマンタロウだ!」「レオキックだ!」など、ウルトラマンが現れるたびに突出して喜びを表すテッペイだが、今回は視聴者の興奮を代弁するかのように、諸手を上げて声も裏返る素晴らしい演技を、内野氏は披露してくれた。今後も期待に違わぬ興奮振りを披露して欲しいものである。もう一つは、ジャシュラインがウルトラアレイの一撃を受けた際の、もがく姿。あの演出は、どう見てもジャミラ(ウルトラマン・第23話「故郷は地球」に登場)が水を浴びて、もがく姿を意識しているとしか思えない。実際には、意識していないのかも知れないが、ソフトをお持ちの方は、比べてみるのも一興。その酷似振りに思わず笑ってしまうことだろう。

 最後に、何故ウルトラの父は現れたのかについて考えてみよう。メビウスの危機もさることながら、ここはやはり、「降臨」を期待する地球人に対する、一つのサービスに近い精神であると解釈したい。全宇宙に目を配る、宇宙警備隊大隊長の懐は、まさに大宇宙の広さなのだ。

データ


監督

アベユーイチ

特技監督

アベユーイチ

脚本

谷崎あきら、赤星政尚