ストーリー
ミライの容体を心配するCREW GUYSの面々。リュウはミライが目覚めるまで付き添うと言う。サコミズ隊長は無理にでも睡眠をとるよう指示するが、テッペイはインペライザーの分析、コノミは過去のドキュメントを元に効果的な作戦の立案、ジョージとマリナはアライソ整備長のアシストと、それぞれの役割に向けて行動を開始した。リュウが眠ってしまっているうちに目覚めたミライは、病室を抜け出す。翌朝気づいたリュウは、いつもの高台でミライを待った。
ミライは光の国への帰還を命ぜられたこと、自分が力不足だという評価を受けたことをリュウに告白した。リュウは「何でウルトラマンは、そんなにまでして地球を守ってくれてるんだ」とミライに問う。ミライは地球から300万光年離れたウルトラの星の歴史を語った。かつては人間と同じ姿をしていたという話を聞いたリュウは、「ウルトラマンは大昔の自分たちの星を地球にダブらせて、地球の為に命を懸けてくれていた」と悟る。リュウが振り返ると、既にミライはその場からいなくなっていた。リュウは「まだ肝心なことを言っていない」と一人虚空に叫んだ。
テッペイはインペライザーを分析し、何者かが送り込んだ侵略兵器であると推測した。立案された攻略作戦の内容は、GUYSスペーシーの協力によりインペライザーを重力偏向板で高度80kmに放出し、ライトンR30マインを使用、2.5ギガトンの爆発に巻き込むというものだった。ミサキ総監代行は、4時間後、インペライザーが青沢峡谷に出現すると伝える。総本部に入ったウルトラマンタロウからと思われる通信の解析による出現予測であった。リュウは侵略者の思いのままにはさせないと意気込む。「地球は俺たちだけの星じゃないんだ」リュウは心の中で固く勝利を誓った。
それからおよそ4時間、作戦準備は着々と進んでいた。そして運命の瞬間、完全に修復を終えたインペライザーが出現、同時にウルトラマンタロウも現れた。メビウスが現れないことから、リュウは既にミライがウルトラの星に帰ってしまったのかとの思いにとらわれるが、逆にその思いがリュウを奮起させた。作戦は順調に経過するに思えたが、途中でインペライザーは空間転移で消失してしまい、再び地上に現れた。タロウのストリウム光線をものともせず、無差別爆撃を開始するインペライザー。ガンウインガーとガンローダーは墜落の憂き目に会ってしまう。ミライは変身を試みるが、タロウに制止される。「君はもっと強くなれる。光の国に戻り、さらに力を高めるんだ。来るべき戦いの為に」と告げるタロウは、自ら封印した危険な技・ウルトラダイナマイトにより、命を賭してインペライザーを殲滅させるつもりなのだ。
ミライに気づいたジョージとマリナの言を受け、リュウ達はミライの元へ駆け寄る。その瞬間、タロウはウルトラダイナマイトを炸裂させ、インペライザーを木っ端微塵に粉砕する。激しくエネルギーを消耗したタロウをよそに、インペライザーの破片は再集合して復元を果たした。リュウは「お前の強さをタロウに証明して来い」とミライに告げる。それを聞いたジョージ、マリナ、テッペイ、コノミはミライがウルトラマンメビウスであることを知る。「今お前がやんなきゃなんねぇのは、俺たちと一緒に戦うことのはずだ」と言うリュウは、「命を懸けて戦ってきたのは、また笑顔で仲間に会う為だ」と付け加えた。絶対に生きて帰るというリュウとの約束を胸に、ミライはメビウスに変身する。
復活したインペライザーに立ち向かうメビウスとタロウ。あくまでメビウスの命を重視するタロウに対し、メビウスはリュウから教えられた言葉を投げかける。タロウは納得したが、メビュームシュートとキャプチャーキューブの共同作戦が効果を為さず、さらにインペライザーの猛火にメビウスはまたも倒れてしまう。
ジョージ、マリナ、テッペイ、コノミ、そしてリュウは、それぞれのミライとの約束を訴えかける。そしてサコミズ隊長の呼びかけを耳にしたメビウスは、立ち上がり、自らの身体にファイアーシンボルを描いた。メビウス・バーニングブレイブの誕生だ。インペライザーの強力ビームをストリウム光線で阻止するタロウ。その隙にメビウスは炎を凝縮した光弾を放ち、遂にインペライザーを粉砕した。
「これからも一緒に地球を守りたい」というリュウ達の懇願を受け、タロウは「途方もない脅威」への警告と、メビウスとCREW GUYSへの期待の言葉を残して、光の国へと帰っていった。再会を喜ぶミライとCREW GUYSの面々。リュウが手渡したミライのメモリーディスプレイには、ファイアーシンボルが描かれていた。「ミライ、ありがとな」リュウは心の中で呟いた。
解説
前回のラスト、タロウがインペライザーを取り逃がし、メビウスが倒れ、ミライを救うべく駆け寄ったリュウに瓦礫が…!
強力な「引き」のオンパレードで終えた前回を受けた今回。ところが、この「引き」はあっさりと処理されてしまう。タロウはインペライザーの次なる出現場所を予測して、(恐らく)宇宙空間で待機。ミライは満身創痍ながらも早々に目覚めることが出来、リュウは作戦行動が可能なくらいの傷を負ったに過ぎない。しかも、リュウがミライをどのように助けたかすら描かれない。
しかしながら、そのあっさり感全てが計算ずくのように思える。それほど、ミライとリュウの真の信頼関係や、後輩想いで思慮深く頼りになるタロウ、前回から本当につなげたかった要素が実は「それぞれの約束」だったという熱さ、各々の要素が際立っている。それらが一気にメビウス・バーニングブレイブへと収束する様は見る者にある種の快感すら与える。なるほど、前回より継承されるべきあらゆる要素・要因を取捨選択し、それぞれにプライオリティを与える作業が、見事に成功しているのだろう。
昭和ウルトラ信望者であれば、かなりの確率で、フォームチェンジ、タイプチェンジといった形態変化をメビウスに導入することに違和感を覚えることと思う。しかしウルトラマンメビウスという作品は、形態変化に関するソリューションを、かなりフィジカルな方法で成立させていることに気づく。メビウスブレイブは、ナイトブレスの物理的作用であるし、メビウスインフィニティーは、ウルトラ兄弟の干渉による結果だ。
今回のメビウス・バーニングブレイブは、ともすればメンタルな面をクローズアップしているようにもとれるが、実際はタロウのセリフに裏付けられたメビウス自身のポテンシャルが、現時点において最大限に発現した結果であるとの解釈が自然だ。CREW GUYSとの約束は「命を懸ける価値のある行動のきっかけ」であり、メビウスをパワーアップさせた直接要因ではない(現にカラータイマーは点滅したままだ)。だが、きっかけである以上CREW GUYSに対して意思表示したい。その結果がファイアーシンボルを自らの身体に描くという行為であった。勿論、そこにはミライの「GUYSの一員である」というアイデンティティの発露も含まれる。ウルトラマンが真に防衛チームの一員となった瞬間だ。
さて、これだけメビウスとCREW GUYSを中心に盛り上がりを見せるエピソードでありながら、随所に旧来ファンを喜ばせる要素も散りばめられている。筆頭はウルトラマンタロウの存在だろう。前回でも相当なファンへのアピール振りを見せてくれたが、今回は「禁断の技」ウルトラダイナマイトを見ることが出来る。このシーンは特殊効果の美麗さや迫力ある演出、加えて「私を見くびるな!」という鳥肌モノのセリフにより、満足度の高いシーンとして完成している。あえて些細な点を挙げるとすれば、「ウルトラダイナマイト!」の呼称がタロウ自身によって為されなかったこと(しかし、これはテッペイが言うとこによって、より衝撃度を増している)、禁断の技である所以が、歴史的に裏設定レベルに留まってしまっていることぐらいか。ちなみに、爆発四散の様子が「猟奇的」でないという不満は、内山まもる氏の描写に拠るところが大きい為、ここでは触れないこととする。
タロウに関してのトピックは、登場前に空がキラリと光る際の効果音がウルトラバッヂのものだったり、カラータイマーの点滅音がちゃんとタロウオリジナルの効果音だったり、「命を懸けて戦うのは、笑顔でまた仲間たちに会う為です」というメビウスの言葉に頷く様が、かつて白鳥健一の為に戦ったのを思い出すかのような演技だったり、空へ飛び立つ際に篠田三郎氏を彷彿させる叫びを石丸博也氏が披露してくれたりで、枚挙に暇がない。映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」における、タロウ描写の不満を一気に解消する内容と言って差し支えないだろう。
タロウ以外では、特にインペライザーの火力描写が凄い。上半身が回転し、無差別とも言える爆撃が炸裂する様は、本編側のナパームとの相乗効果も出色の出来であった。そして、ミライがメビウスであるということが皆に知られる一幕についてである。30話という時点でのバレ展開も相当異例であるが、あえてここでは割愛する。それよりも、リュウのミライに対する激励をきっかけに、驚くあまり事実を受け入れられないジョージとマリナが描写されるのに続き、テッペイとコノミがメビウスブレスに言及することで全員が事実を受け入れるという、実に理にかなったシーン運びがなされていたことが重要である。前線とデスクワークの違いを端的に示した好シーンであると共に、メビウスに変身する前のミライと会話する機会を作ったことで、大きな意味のあるシーンだ。
最後に、ミライが語った「ウルトラの星」の歴史に触れておきたい。この設定自体は、ウルトラマンT・第24話「これがウルトラの国だ!」に登場したものをベースにしている。だが、ウルトラマン達が、かつての自らの姿への郷愁を地球人に重ねているという設定は、ウルトラマンのメンタリティを語る上でも、リュウのプライドとの相克を解決する上でもコロンブスの卵的な発明であり、実にウマい。このあたりは、脚本の赤星氏ならではと言えよう。
データ
- 監督
- 佐野智樹
- 特技監督
- 鈴木健二
- 脚本
- 赤星政尚