第25話 毒蛾のプログラム

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ストーリー

 バキシムに関するアーカイブ・ドキュメントを分析した結果、異次元人ヤプールの存在が確認された。GUYS総本部はヤプールに対抗すべく、異次元物理学のスペシャリスト、フジサワ アサミ博士をCREW GUYS JAPANに派遣。サコミズ隊長は何故か慌てふためく。その時、超獣ドラゴリーが出現した。

 直ちにミライとリュウはガンフェニックスで出撃したが、バキシムと同じく空の割れ目から逃亡してしまった。コノミはドラゴリーが何かを探しているみたいだと言う。現場に向かったジョージとマリナは、蛾の羽のような物体を発見する。

 フジサワ博士がフェニックスネストに到着。サコミズ隊長は、コーヒーを52分前に飲んだことを指摘される。フジサワ博士はコーヒー嫌いのようだ。そこへジョージとマリナが登場。ジョージとフジサワ博士は強烈に惹かれあう。フジサワ博士はジョージに「愛の詩集」を渡し、「いいと言うまで読んではダメ」と言う。フジサワ博士にメロメロのジョージにマリナはご機嫌斜めだ。

 フジサワ博士はガイズタフブックで瞬時にメテオールを作成し、そのメテオールでジョージに自分を撃たせた。一方その頃、テッペイはフジサワ博士のレポートを読み終え、ドラゴリー出現の理由についてCREW GUYSのメンバーに説明していた。ドラゴリーは33年前に、妖星ゴランを破壊する為のミサイル基地を襲撃すべく送り込まれており、ヤプールによって蘇ったドラゴリーは低い知能故に、33年前の目的のままに行動しているというのだ。

 その時モニターに、フジサワ博士とジョージのフラメンコを踊る様子が映し出された。憤慨するマリナをよそに、サコミズはヤプールに対抗するメテオールの説明を、フジサワ博士に求める。フジサワ博士によると、異次元のゲートを塞ぐという「リージョン・リストリクター」をインストールしたメモリーディスプレイが、ケースの中に入っているのだが、それは水に浸けると半径20kmの範囲が吹っ飛ぶ危険極まりないものだと言う。フジサワ博士は何かを感じ取り、ジョージを部屋から退出させた。直後、ジョージが悲鳴を聞いて部屋に飛び込むと、フジサワ博士の体内に巨大な毒蛾が入り込むのを目撃、ジョージは電撃によって気を失った。

 フジサワ博士はドラゴリーに憑依され、プールに居た。ドラゴリーはフジサワ博士の記憶を読み、リージョン・リストリクターのケースを落とそうする。ジョージがプールに飛び込み、間一髪のところで水に浸かるのを阻止。ドラゴリーはフジサワ博士から抜け出た。何とケースは単なるビックリ箱になっており、フジサワ博士はジョージに撃たせたメテオールによって自分の記憶を改竄、自ら囮となってドラゴリーをおびき寄せたのだ。「これからが勝負よ」フジサワ博士の言どおり、ドラゴリーは研究棟の近くに出現。リージョン・リストリクターはジョージに渡した「愛の詩集」の中に隠されていた。

 ミライはウルトラマンメビウスに変身してドラゴリーに立ち向かう。優勢から劣勢に転じたメビウスはジョージのアシストによって救われる。ドラゴリーは空の割れ目に逃げ込もうとするが、ジョージの放ったリージョン・リストリクターによって異次元のゲートは閉じられ、逃げ場のなくなったドラゴリーは、メビウスブレイブによって粉砕された。

 事件後、ジョージは実は泳げるのだが、海には良い思い出がなかったことを打ち明ける。ジョージはフジサワ博士にデートに誘われた。ところが、デートの内容は「海底散歩」であった…。

解説

 ヤプール編第二弾。前回のバキシム編は、市民感謝祭のような楽しい場面がありつつも、ヤプールらしい陰湿な手口が描かれたのに対し、今回は常にコミカルな味と、フジサワ博士という強いインパクトのキャラクターで進行。ヤプール編と言いつつ、ヤプールの一般的なイメージとは全く異なるエピソードになっている。

 今回のメインは、間違いなくフジサワ博士。平成ウルトラシリーズの常連である、石橋けい氏に合わせて書かれたのではないかとの推論を許すかのような、強烈で可愛げのあるキャラクターである。そこに絡むジョージのキャラクターも、ここまで開花してきたコミカルな面を存分に生かし、更なるステージへと進むかのような暴走振りを発揮している。

 それにしても、いかにドラゴリーの知能が低いとの言及が成されているとは言え、ヤプールの裏をかいた人物は、このフジサワ博士が初めてではないだろうか。行動も奇抜だが、考えている作戦はもっと奇抜。まさに奇抜なキャラが振り回す奇抜なエピソードである。ヤプール編としても異色作だが、メビウス全体を通しても異色作たる資格は充分だ。

 本エピソードは、30数年前の過去のエピソードとのリンクが密接に行われていることでも特筆すべきエピソードである。これまでの旧怪獣登場エピソードでは、その怪獣が過去どのような能力を持っていたかに言及するか、あるいは類似エピソードを再構成する手法に留めていた。しかし、今回は過去に起こった「事件」の完全なる後日譚として進行。アーカイブ・ドキュメントのみの登場となった怪獣(ムルチ)や宇宙人(メトロン星人Jr.)に関しても、テッペイによって幾度か名称を連呼され、聞き流せない存在となっていく。これはメビウス単独で見た場合に、そういう事件があったという充分な説明を成していると同時に、コアなファンを微笑ませる要素の織り込みでもあり、二世代ファンのダブルスタンダードを模索する上での手本とも言えそうな内容だ。

 ただし、その「過去の事件」である、ウルトラマンA・第7話「怪獣対超獣対宇宙人」と第8話「太陽の命 エースの命」にあった、隊員の身を裂くような悲哀といった要素は全く継承されることがなかった。メビウスというシリーズに、この種の陰鬱さは合致しないということなのだろう。

 さて、少々やり過ぎな感も否めないほど楽しいのは、勿論フジサワ博士とジョージ絡みのシーンであるが、他のキャラクターにも色々と肩の力を抜いたお遊びが用意されていた。他のキャラクターに触れる前にジョージの特筆事項を記しておくとすれば、それは何と言っても「泳げないのではなく、海そのものが苦手」という驚愕のどんでん返しだ。エピローグでの、ジョージの海での災難に関する回想は実に楽しく、ジョージのキャラクターにおけるコミカルな面が突出した瞬間だと言えよう。

 サコミズ隊長はコーヒー嫌いのフジサワ博士を警戒し、慌てふためく。飄々として冷静で謎めいた隊長というイメージが、徐々にコミカルな要素に侵食されていく様は、見ていて楽しい。「クールガイズ」という基地内支給品と思しき薬品にも注目。マリナは、いつの間にかジョージのことが気になってしょうがない様子に。伏線としては用意されていたものの、今回ほどあからさまな様子には、意外性を覚えた。そして、リュウは「大賞」に輝くほどリアクション上手であることが判明。確かに言動はいつも大振りで分かりやすいが、このような面でも発揮されるとは…と書いていて笑ってしまうような楽しさがある。

 今回は、ヤプールという名称は登場したものの、ヤプール本人は未登場となった。それでも、フジサワ博士の戯れに能面が登場したり、博士の謎めいた行動を通して、ヤプールの雰囲気を感じさせているのは見事。見えざる敵の存在感は、大いに確保されていると見るべきだろう。コミカルながら、なかなかの傑作だ。

データ


監督

北浦嗣巳

特技監督

北浦嗣巳

脚本

川上英幸

フラメンコ指導

土井まさり