第22話 日々の未来

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ストーリー

 レッサーボガールはGUYS総本部により、ボガールと同属であると判断された。一方テッペイは、バン・ヒロトのことについて調べていた。バン・ヒロトは火星生まれで地球に降りたこともないという。

 その頃、ミライはサコミズ隊長ならびにミサキ総監代行と共に、バン・ヒロトの父親でアランダスの船長であるバン・テツロウに会いに行った。サコミズ隊長とミサキ総監代行はすぐに退出。残されたミライは、バン・ヒロトの遺品である懐中時計をバン・テツロウに渡した。

 バン・テツロウは思い出していた。アランダスが痛ましい事件に遭遇する直前、バン・ヒロトは5年前にナメゴンに襲われて命を落とした母の遺骨を、地球の墓に収めると言っていたことを。そして、地球での友達が早く欲しいと呟いていたことを。その後、突如空間に開いたウルトラゾーンにより、アランダスは制御を失ってしまう。バン・ヒロトは手動で貨物室を切り離して乗組員を救うために、自らが犠牲となる道を選んだのだ。貨物室で孤独な死への旅に就いたバン・ヒロトは、ウルトラマンメビウスが必死にアランダスを助けようとする様を目撃した。しかし、メビウスはアランダスを救うことが出来なかった。この親子の別れを目撃し、勇敢な行動に感心したメビウスは、地球に降り立つ際にバン・ヒロトの姿を借りることにした。バン・ヒロトの姿で現れたメビウスを、当初バン・テツロウは受け入れられなかった。だが、メビウスをサコミズに託したバン・テツロウは、一緒には暮らせないが、その姿でいてくれと言う。バン・テツロウは、メビウスに「君のこの星での日々の未来に、幸多からん事を…」という言葉を贈った。

 バン・テツロウが静かに語る思い出を聞いていたミライは、突如何かに気付く。到着した場所で、ミライはレッサーボガールの群れに襲われる。メビウスブレスで応戦するミライだが、レッサーボガールは共食いによって巨大化を果たしてしまう。ミライはメビウスに変身しようとしたが、阻止され倒れ伏してしまう。直ちにCREW GUYSが出動した。レッサーボガールの舌に捉えられるガンウインガー。レッサーボガールは口を巨大化させて飲み込もうとする。リュウの必死の叫びに気付いたミライは、メビウスに変身してガンウインガーを救う。バン・ヒロトを救出できなかった悲しみを、二度と繰り返さない。それがメビウスの信条だ。

 メビウスはレッサーボガールの舌に翻弄される。そこへサコミズ隊長のガンブースターが現れ、直ちにガンフェニックストライカーにバインドアップ。ガンフェニックストライカーのメテオールでメビウスの危機を救った。メビウスは怒りのメビュームシュートでレッサーボガールを粉砕した。

 「いつまでも、その姿で居てもらうわけには、いかんだろうな」という、バン・テツロウの言葉に、ミライは「いえ、居させて下さい、この姿で。僕はヒロトさんの分も生きます」と答えた。バン・テツロウは礼を言うと「だが、ヒロトなら私の胸の中で生きている。君は君の人生を生きるんだ」と告げた。

 闘いに間に合わなかったと仲間に思われたミライを待っていたのは、ガンフェニックスのペイント作業。リュウはバン・ヒロトとの関係に疑問を持つが、ミサキ総監代行により、ミライは宇宙暮らしが長く、バン・ヒロトとは宇宙で知り合ったと説明された。談笑するCREW GUYSの面々。ミライは、バン・ヒロトに代わって地球での友達を得たのだ。

解説

 ミライの由来が語られる、ミライ編の後半にして深い感動を生むエピソード。前回では、ウルトラゾーンやガンフェニックストライカー、そしてバン・ヒロトという人物を紹介するエピソードに徹していたが、それも今回の重要なストーリーをスムーズに運ぶ為の仕掛けであった。

 ある程度年季の入ったファンならば、ミライとバン・ヒロトの関係は、「ウルトラセブン」のモロボシ・ダンと薩摩次郎の関係に酷似していることに気付くだろう。しかし、ここで一つ興味深い相違点が存在する。それは、モデルとなった人物が、既にその生命を失ってしまっているということだ。モロボシ・ダンと薩摩次郎は、共に同じ姿を有した別々の人物として、当時地球上に存在した。しかし、ヒビノ・ミライとバン・ヒロトは、姿こそ同じであるものの、地球上にはミライしかいない。

 これは劇中明確ではないのだが、もしウルトラゾーンに飲み込まれていく彼を助けることができたならば、初代マンや帰マンのように、一心同体となるつもりだったのではないだろうか。現に、メビウスはバン・ヒロトの自己犠牲の行為に感動したと言っており、これは「帰ってきたウルトラマン」の第1話で帰マンが郷秀樹に対して述べた文言に酷似する。メビウスがバン・ヒロトの姿を借りたという、形式的の言及では足りない印象を抱くのは、勿論本エピソードの情感溢れる描写あってのものだが、シリーズの1類型として分析するならば、ヒビノ・ミライは救うことの出来なかったバン・ヒロトの人生をもその姿に宿した、新しいパターンであると言えないだろうか。

 さて今回は、メビウスがヒビノ・ミライという地球人になったいきさつを描いたわけだが、それに伴って「ウルトラマンメビウス」というシリーズに散りばめられた「謎」を、明かしつつより深める場面が見られた。それは、サコミズ隊長に関する謎である。

 サコミズ隊長。普段は飄々としつつも切れ者の一面を見せる、CREW GUYSの優秀な隊長である。この人物の言動には謎が多く、特にミライがメビウスであることを、あたかも知っているかのような振る舞いが多々見られた。その「あたかも知っているような」言動の理由がある程度判明するシーンを、本エピソードは内包しているのだ。具体的には、バン・ヒロトの父バン・テツロウに、地球に着いたばかりのメビウス(この時点ではミライという名を名乗っていない)とサコミズが会いに行くというくだりである。バン・テツロウの劇中のセリフからは、明らかに息子の姿をした人物が宇宙人、ひいてはメビウスであると知っていることが窺える。同じくサコミズもそのことを知っていない限り、これらのシーンは成立しない。

 つまり、サコミズ隊長は(恐らくは後に同行したミサキ総監代行も)、ミライがメビウスであることを当初より知っていたのである。これは既に「ほのめかされている」というレベルではなく明確な事実なのだ。サラリとそれとなく、しかもセリフによる明快な説明なしにそれを描いてみせるなど、予想もしない展開と秀逸な語り口でただ驚くばかりである。一方で、バン・テツロウに「キャプテン・サコミズ…いや、今は…」というセリフがあり、サコミズ隊長に何か別の面があるのではないかと思わせる。サコミズ・ミステリーは、これからも継続するのだ。蛇足だが、これらのシーンで見られた、ミライの畳の部屋での座り方によって地球の風俗習慣にメビウスがどれだけ馴染んだかを表現するという手法は、非常に面白く芸が細かい。

 本エピソードは、バン・ヒロトの犠牲という重いテーマに影響されてか、全体的に陰鬱で静かなムードに包まれている。しかし、バランスをとるかのように、レッサーボガール戦は派手に演出されている。ガンフェニックストライカーのメテオールによる攻撃は、実にアニメ的なケレン味に満ちているし、メビウスのアクションも印象的なワイアーアクションで魅せる。また、ミライの姿でメビウスブレスを出現させ、そのまま光線技を放つというサプライズ・シーンも用意されており、充実度は高い。

 今回で、ボガール種がとうとう根絶され、怪獣の誘引となるファクターは設定上失われ(たように理解され)た。果たして、今後はどのように怪獣出現の理由が用意されるのか。

データ


監督

村石宏實

特技監督

村石宏實

脚本

赤星政尚