第20話 総監の伝言

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ストーリー

 ディガルーグの一件が解決し、殺到するマスコミ関係者たちを前に、トリヤマ補佐官は口を滑らせメテオールの秘密と危険性について口外してしまう。総監に呼び出されたトリヤマ補佐官は、無理やりマルを同行させた。総監室で待っていたのはミサキ総監代行で、トリヤマ補佐官は厳しい口調で叱責される。「自分の娘に叱られてるみたいだ」とマルに漏らすトリヤマ補佐官は、総監さえ居れば本当の思いを理解してくれるとぼやく。

 怪獣の脳神経に直接作用する誘導音波を発振するハーメルンプロジェクトの視察に、ミサキ総監代行とトリヤマ補佐官が招聘された。トリヤマ補佐官は腹痛を装い、マルに代わりを依頼。マルはミサキ総監代行の通信内容から、総監も視察に現れると確信した。

 GUYS対怪獣研究所に訪れたマルとミサキ総監代行は、オトワ主任技師により、ハーメルンプロジェクトの概要とウィンダムによるデモンストレーションが行われた。ウィンダムに妙なダンスを躍らせるオトワ主任技師だが、ミサキ総監代行は絶賛。マルはトイレと称してその場を去ると、総監の姿を探し始めた。

 一方、日本海の海底で、不審な振動波が確認された。テッペイの調査によると、特殊誘導音波の発振実験のスケジュールと、その不審な海底の振動波が同期しているという。日本海の海底には、ケルビムが潜んでいたのだ。そして、GUYS対怪獣研究所の近郊に、アーストロンが出現し、GUYS対怪獣研究所に向かい始めた。オトワ主任技師は特殊音波の発振を試みるが、何者かの発振に阻まれて効果を成さない。GUYS対怪獣研究所の研究員は全員退避することになったものの、マルの姿がないことに気付いたミサキ総監代行は、マルを探し始める。

 CREW GUYSは発進したものの、ミサキ総監代行とマルが研究所に残っているため、メテオールによる迎撃作戦を展開できずにいた。ケルビムも上陸してしまい、対処に窮するGUYS。その頃、マルを発見したミサキ総監代行は、マルに何故妙な行動をしたのかと問う。マルは、総監を探していたと答えた。マルは総監が視察に来るものと思い込んでいたが、実はミサキ総監代行の通信は、来月に総本部で行われる会議の打ち合わせだったのだ。マルはトリヤマ補佐官に会って貰えるよう、頼み込むつもりだったと言う。トリヤマ補佐官は失敗続きで自信を喪失しているため、総監の励ましの言葉が欲しかったのだ。

 CREW GUYSの危機に、ミライはウルトラマンメビウスに変身。一方でリュウはミサキ総監代行とマルを発見、救出に成功する。アーストロンに立ち向かうメビウスの前に、ケルビムも出現。ケルビムは誘導音波に共鳴し発振することで、アーストロンを自在に操り始めた。苦戦するメビウスを救う為、サコミズ隊長は自ら責任を負って出撃し、誘導音波発生装置を破壊することに。サコミズ隊長が発生装置を見事に破壊すると、ケルビムとアーストロンは同士討ちを始めた。隙を見て、メビウスブレイブとなったメビウスは、アーストロンとケルビムを瞬時に撃退する。

 総監室に呼び出されたトリヤマ補佐官は、意気揚々と総監室に向かうが、やはりそこに総監の姿は無かった。しかし、ミサキ総監代行はメッセージを預かっていると言う。サコミズ隊長が総監のメッセージをトリヤマ補佐官に伝えた。「トリヤマ補佐官の経験と包容力を生かし、GUYS JAPANを支えて下さい」という内容だったが、何故サコミズ隊長が総監のメッセージを?

解説

 コメディ基調のエピソード。そして、何とマル補佐官秘書の主役編である。マルのようなキャラクターにスポットを当ててしまうところに、メビウスというシリーズの真骨頂がある。

 トリヤマ補佐官とマル補佐官秘書のコンビは、当初よりほぼ毎回登場しており、日和見主義的官僚の典型として描写されつつも、そのコミカルな言動が潤滑剤として作用している。たまにキャラクターの別の側面に触れて、活躍の場を与えられたり、単なる「オチキャラ」でないところが奥深い。

 マルはトリヤマ補佐官にツッコミを入れるタイプのキャラクターとして設定されているが、今回、トリヤマ補佐官のことを第一に考える、実に実直で上司思いの部下だということが判明。振り返れば、ツッコミの数々はトリヤマ補佐官の立場を慮ってこそだったのだ(いや、単なるノリもありそうだが)。本エピソードでは、コントばりのコミカルなシーンを連続で展開しつつも、ミサキ総監代行とのやり取りには感動すら覚える。

 さて、今回はアーストロンが登場する。アーストロンは、帰マンの第1話に登場したのも手伝ってか、割とスター級の扱いを受けている怪獣だ。しかし、今回はその根本的な可愛らしさを最大限に生かし、ケルビムに操られる設定を与えられコミカルな動きを付けられている。その演出には旧来ファンはかなり違和感を覚えたかも知れないが、その造形的な可愛らしさにインスパイアされた演出としては、至極適当だったと言っていいだろう。上司と部下怪獣というシチュエーションは、「ウルトラファイト」的でもある。

 ケルビムの再登場は、何となく間に合わせ的な感が漂うが、造形面から共鳴器官の設定を創出したり、再登場のエクスキューズを卵の孵化に求めるなど、アイデアは良い。旧怪獣と新怪獣が並ぶと、怪獣デザインの方法論の変遷が手に取るように分かるが、今回も例に漏れず良く分かるショットが満載。ただし、両怪獣とも二足歩行型であり、コミカルな演出によってか、それほど違和感を感じさせないのが面白い。

 今回は姿を一切見せない総監の謎についても言及。言及と言いつつ、結局は姿は見られず謎のままなのだが、実に怪しいミサキ&サコミズコンビを見せることで、謎の解明に一歩近づいた…ようで謎を深めてしまった。サコミズ隊長が総監の伝言をトリヤマ補佐官に伝えるシーンでは、総監の伝言がサコミズ隊長の言そのものであるかのように見える。総監像はサコミズ隊長とミサキ総監代行によって作り上げられている虚像ではないかという憶測も成り立ち、まだまだ謎は見る者の興味を引いていく。

 冒頭における総監の噂話は、旧来ファンに対するサービスだろう。ちなみに、戦闘機を自在に操りウルトラマンを援護したのは、MATの伊吹隊長。2人で凶悪な宇宙人の惑星を全滅させた(これは少々の誤解がある)のは、ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長。ジープで追い回して隊員を特訓したのは、勿論MACのモロボシ・ダン隊長だ。

 そのサコミズ隊長は、今回初出撃。これほど前線に出ない隊長も珍しいが、このタイプの隊長は出撃したときの姿が実にカッコいい。メビウスキャラの内、最も謎に満ちたサコミズ隊長が今後の展開の鍵を握っている?

データ


監督

小原直樹

特技監督

鈴木健二

脚本

長谷川圭一