ストーリー
コノミはメガネを外し、コンタクトに変えてみた。リュウとジョージは将棋、マリナはバイク雑誌を眺めて溜息。ミライとテッペイはオオシマ彗星の観測をモニターしている。トリヤマ補佐官とマルは剣道の稽古。GUYSの面々は、それぞれ思い思いの暇を過ごしていた。
その頃、オオシマ彗星上で、宇宙剣豪ザムシャーと、その命を狙うマグマ星人が戦っていた。マグマ星人は二人がかりでザムシャーを襲う。そのオオシマ彗星は地球への衝突軌道を取り始めた。地球に衝突した場合、5千万ギガトン以上の衝撃発生が予測される。GUYSスペーシーのV99は、シルバーシャークGによる破壊を決定した。しかし、ザムシャーによってその砲弾は跳ね返され、シルバーシャークGは大破。続いてザムシャーは、マグマ星人へとどめを刺した際に彗星をも木っ端微塵にしてしまう。
さらにザムシャーを狙う者があった。バルキー星人だ。ザムシャーは地球へ行くことを画策しており、バルキー星人はその後を追う。オオシマ彗星は無数の破片となり、日本へ落下すると予測された。リュウはガンフェニックスで出ようとしたが、グロマイト戦での整備不良が尾を引き、オーバーホールの最中。ミライはガンブースターで飛び出した。ところが、ザムシャーとバルキー星人飛来のため、帰還を余儀なくされる。地上にもシルバーシャークGが配備されており、マルはそれを起動した。
ところが、バルキー星人が着地したことにより、フェニックスネストの一部機能が麻痺し、シルバーシャークGの起動機構に問題が発生。一方ザムシャーとバルキー星人は地上で「果し合い」を始める。その影響でシルバーシャークG一基が破壊されてしまった。GUYSメンバーが一丸となり、残り一基のシルバーシャークGを起動させるべく、予備電源に手作業で回路をつないでいくという緊急作業が始まった。
ミライがザムシャーに地球飛来の目的を訪ねると、ザムシャーはツルギが目当てだと答えた。ツルギが地球に居ることをファントン星人から聞いたというザムシャーは「我が強さ証明せんがため」ツルギとの果し合いを望んでいるのである。ミライが地球の直面する事態を説明したが、ザムシャーは全く意に介さない。シルバーシャークGに刀を突きつけ、ツルギを要求するザムシャー。シルバーシャークGは起動を果たし、同時にミライはメビウスに変身してザムシャーを阻止した。
直ちに流星群の破壊オペレーションが開始された。射撃主はリュウとジョージだ。ザムシャーはメビウスをして「ツルギがそんなに弱いはずはない」と言う。そこへウルトラマンヒカリが登場、ザムシャーと切り結ぶ。
一方、流星群の破壊はリュウのアシストもあって極限の中、順調に推移。最終の巨大流星の破壊はジョージに委ねられる。最高のプレッシャーの中、最高のシュートを放ったジョージは見事に流星を粉砕。歓喜溢れるフェニックスネスト。同時にザムシャーの愛刀「星斬り丸」が折れ、ザムシャー対ヒカリの勝負もついていた。しかしヒカリは、「星斬り丸」は既にメビウスがシルバーシャークGを守った際に折れていたという。「何かを守るために戦う強さ」こそがメビウスの強さだと告げるヒカリ。ザムシャーは一時の敗北を認めて去っていった。
極限状態を脱したGUYSに休息の時が訪れる。コノミはコンタクトからメガネに戻した。「宇宙人は?」というリュウに、サコミズ隊長は「ミライが何とかしてくれたよ」と答えるのだった。
解説
冒頭で「コノミ編?」と思わせておいて、実は全く異なるサスペンスフルな展開を見せる秀作エピソード。ケレン味を追求したザムシャーの言動と、オオシマ彗星の破片襲来に対処するGUYSの奮闘をハイテンポで描く。
まず、明らかに旧来ファン向けの登場となったのは、マグマ星人とバルキー星人。過去のシリーズに登場した際は、狡猾な印象(ただし、知的な言動をとるわけではない)を有した侵略者であったが、今回登場した「同朋」たちは地球に対する興味のない連中だ。典型的なヤラレ役ではあるが、意外にも登場シーンの尺が長く、ファンにとっては嬉しい登場となった。考えてみれば、タロウに登場するチンピラ系宇宙人や、レオの愉快犯的「星人」は、メビウスの世界でメインゲストを張るには少々不足な印象がある。
今回はメビウスが完全に脇役になっている。ザムシャーの目当てはツルギ、つまりヒカリであり、メビウスの事に関してはザムシャーの知識の片隅にもなかった。今回突如明らかになったこととしては、ツルギという光の国の人物が科学者の肩書を持つにも関わらず、相当に腕の立つ人物として名を馳せていることだ。このことは、かつてウルトラセブンが恒点観測員という仕事をしていたにも関わらず、宇宙警備隊でも有数の戦士として有名だという後世の評価と似ている。また、今回はメビウスとヒカリの年齢的な関係が、ちょうどセリザワとミライのポジションに相似しているかのような言動を見ることができる。そのヒカリが、「何かを守るために戦うから強い」という評価をメビウスに対して与えることで、メビウスの成長振りを窺わせるという構造にもなっており、エピソードの完成度に貢献している。それにしても、今回のヒカリはアングルやポージング等、全てがカッコいい。
その「何かを守る」というシーンで、GUYSのメンバーの様々なバックボーンがイメージシーンとして登場するが、これがなかなか興味深い内容。特にトリヤマ補佐官とマルのプライベート映像に驚かされる。サコミズ隊長とミサキ総監代行にイメージシーンがないところは実に意味深であるが…。この一連のシーンは、一致団結し緊急事態を懸命の努力で回避したGUYSの姿を、手に汗握る構成で見せてきた後に置かれているため、実に美しく感慨深いものとして心を打つ。そのGUYSの喧騒の中での事態打開シーンでは、それぞれのキャラクターを生かした行動が演出されており、非常に完成度が高い。テッペイが最後の射撃にジョージにを抜擢したりと、団結の様子が的確かつコンパクトに描かれている。中でも「壊れたら新しいの買ってやる」というトリヤマ補佐官のセリフが秀逸(イメージシーンに登場する孫に対して、いつも言っているようだ)。また、彗星爆破に関してはメビウスも全く手を出しておらず、GUYSを全面的に信頼していることが分かる。
一方気になるのは、コノミがコンタクトレンズに変えてみたことだ。「何の意味があったのか」という疑問は、この仕掛けが無かった場合のことを考えてみれば良い。ヒントは、ラストのサコミズ隊長の「ミライが何とかしてくれたよ」というセリフにある。つまり、身近にいるコノミの変化に誰も気付かないくらい、オオシマ彗星の一件はGUYSの極限の集中力を要した。だからミライがメビウスとなって、しかもヒカリまで現れてザムシャーを宇宙へ帰らせたことにさえ、サコミズ隊長を除いて誰も気付いていない。コノミの変化に一人だけ気付いていたサコミズ隊長の描写は、「ミライが何とかしてくれたよ」という、実に意味深なセリフを際立たせる為にあったのだ。勿論、コノミファンへのサービスという面もあるだろうが…。
蛇足ながら、今回登場した「シルバーシャークG」という兵器についてウンチクを一つ。元ネタとなった「シルバーシャーク」は、ウルトラマンA・第39話「セブンの命!エースの命!」に登場したTACの秘密兵器である。ファイアーモンスを一撃で粉砕した超強力兵器だ。
データ
- 監督
- 原口智生
- 特技監督
- 原口智生
- 脚本
- 赤星政尚