第10話 GUYSの誇り

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ストーリー

 ナイトブレードでボガールモンスにとどめを刺そうとするツルギを、リュウが阻止する。ツルギは邪魔をしたリュウに攻撃を仕掛けようとするが、セリザワの意思がそれを許さなかった。ボガールモンスに隙を突かれ傷ついたツルギは姿を消し、メビウスの攻撃を受けたボガールモンスもまた姿を消した。

 「ウルトラマンの心を捨てた」というセリザワ=ツルギに、ミライは「それはウソだ。心は簡単に捨てられない」と主張する。地球を犠牲にしたとしても、また地球という鎧を纏わなければならない。そう告げるミライを前に、ツルギはセリザワの記憶と感情がなだれ込んでくるのを感じていた。捨てたはずの感情が一瞬甦ったと微笑んだツルギだが、復讐の決意は変わらない。ミライは「捨てられるはずが無い。その感情が優しさであるのなら」と確信していた。

 GUYSでは、ボガール殲滅作戦が立案された。太平洋上の無人島に6つのパラボラを設置し、そのパラボラから磁場フィールドを発生させ、バリアを作ってボガールモンスを閉じ込めて殲滅する作戦だ。磁場フィールド内での大爆発は、外部に影響を与えないという算段である。作戦主体はGUYSオーシャン。CREW GUYSはそのサポートを担当することになった。

 コノミは、メビウスがフィールド内に現れる可能性を加味していないと指摘。リュウもツルギが現れる可能性を指摘した。思うところのあるリュウとミライは司令室を出て行く。「希望を探すこともサポートの一つ」と、サコミズ隊長は隊員たちに呼びかけた。

 リュウは、ミライに「ツルギは俺が倒す」と息巻く。「そんなことをしたら、リュウさんはずっと重荷を背負うことになる」とミライは言うものの、リュウにはミライの本意が分からない。ミライはこの時、自らが犠牲になってボガールを倒す決意を固めた。一方、CREW GUYSの面々は、磁場フィールドよりメビウスとツルギを救出する手段を模索していた。

 そして遂に、GUYS JAPAN独自の作戦が立案された。ガンローダーにキャプチャー・キューブ照射機能を搭載し、磁場フィールドにその特性を利用して穴を開け、そこからメビウスとツルギを救出、ボガールモンス爆発の直前に穴を塞ぐ作戦が練りだされたのだ。ミライとリュウは嬉しかった。「PRIDE OF GUYS」の作戦名が与えられた刹那、ボガールモンスが出現し、フェニックスネストへ向かってきた。ミライがガンウインガーで陽動することになった。

 ミライは無人島への陽動に成功し、メビウスとして戦うべく秘密裏に磁場フィールド内へと進入する。そこにはセリザワ=ツルギも居た。ボガールモンス殲滅用の1200ミリシンクロトロン砲台は、瞬く間にボガールモンスによって破壊されてしまう。それを予想していたツルギは、ミライに力を貸して欲しいと頼んだ。ツルギの体には既に限界が来ていたのだ。「必ず勝つ!」ミライは仲間の誇りを背に、ウルトラマンメビウスに変身した。セリザワもツルギも変身した。

 ボガールモンスに立ち向かうメビウスとツルギ。強力無比なボガールモンスに苦戦するも、徐々に素晴らしい連携プレーを展開し始め、遂にボガールモンスを倒した。キャプチャー・キューブを照射し、磁場フィールドに穴を開けるリュウ。しかし、ツルギは生命の限界を自覚して、ナイトブレードをボガールモンスに突立てたまま動こうとしない。メビウスは大爆発の直前にツルギを抱え、磁場フィールドより脱出。ボガールモンスは磁場フィールド内で大爆発を起こした。

 メビウスによって助けられたものの、その生命は風前の灯となったツルギ。その様子はメビウスを始めリュウたちCREW GUYSにも衝撃を与えた。ツルギは光に包まれて異空間へと消えた。異空間の中に現れたのは、ウルトラの母だった。

解説

 「ハンターナイト・ツルギ編」の最終局面ともいうべきエピソード。

 地球人と触れ合い、ツルギに対峙することで、ウルトラマンとしての自覚を増してきたミライ=メビウスと、ウルトラマンの心を捨てて復讐に燃えるツルギ。その二者が、目的を同じくしたとき、ツルギもまたウルトラマンの心を取り戻す。そのプロセスが、CREW GUYSの面々の思いと共に熱く語られる。

 それにしても、ラストのツルギ絶命(?)シーンが無ければ、殆ど最終回のようなノリのエピソードである。ミライが隊員たちとの深い絆で結ばれていて、イデオロギー的な敵対を展開するツルギと、ウルトラマンらしい「闘い」によって和解していく。それが、地球人との協力によって、未曾有の危機回避に繋がっていく…。プロットとしては、一つの連続ドラマに決着を付けるに相応しいものだ。

 メビウスとツルギの関係がある一点に収束する過程では、セリザワを始め、リュウやCREW GUYSの面々すべてが関わってくる。特に、ツルギが「イレモノ」と称したセリザワの重要性は、語るまでもないだろう。憑依した人間の意思からウルトラマンが影響を受けるという展開は、実はウルトラシリーズ中、様々に展開されてきた。「帰ってきたウルトラマン」では、郷秀樹の精神的ショックにより、ウルトラマンの生命の危機を誘発した例がある。「ウルトラマンA」では、北斗星司と南夕子の意思によってAの能力の使用決定がなされたこともある。極め付きは「ウルトラマンG」で、体を借りているジャック・シンドーとウルトラマンは、常に哲学的な対話をしている節があるのだ。

 しかしながら、今回のツルギのパターンは、それらとは一線を画す。ツルギは一時的であれ、地球人には敬意を持たない上、ウルトラマンの心を捨てた存在だ。セリザワの持つ「優しさ」に影響され、地球人の心を認識してウルトラマンの心を取り戻す。この展開からは、地球人の意思とウルトラマンの意思の等価性を強く感じさせる。過去のシリーズでは、その程度はあるにしろ、ウルトラマンは宇宙的意思の観点に立っている時点で、地球人に対する優位性を感じさせるものが多かった。それだけに、このツルギとセリザワの関係は印象深いものとなった。

 ところで、映像的にも、この重要エピソードを盛り上げる様々な工夫が持ち込まれている。

 「ボガール殲滅作戦」の詳細な作戦プランの映像は、ミサキ総監代行の落ち着いた説明を伴って、的確で理解しやすいものとなっている。実はこの作戦の趣旨が完全に、しかも容易に理解できていないと、今回の盛り上がりを楽しむことが出来ない。重要なシーンだけに、丁寧に作られている印象だ。ここでのミサキ総監代行の、メビウスやツルギの犠牲も厭わない冷静な姿勢にも少々驚いたが、その後にサコミズ隊長が打開作立案を提案することを、分かっていたかのような微笑が意味深で素敵だ。

 そして、今回の肝となる、メビウスとツルギの共闘である。ボガールモンスに関しては、このあたりで既に食傷気味であることは否めないものの、このバトルは相当に細かく構成されている。

 まず、セリザワ=ツルギがミライに共闘を持ちかけるシーンから始まる。既に身体に限界が来ているという理由が、流れに逆らわないスムーズな展開を成立させている。しかも、その理由はラストの行動にまで波及しており、この時点で相当に計算された裏面を伺うことが出来る。二人の同時変身シーンは、「ウルトラマンガイア」における、我夢と藤宮の同時変身シーンを彷彿させる盛り上がりだ。

 そして、ボガールモンスとの決戦では、実に細に入った演出が付けられている。変身直後から追ってみると、当初は二人に動きがバラバラなのに気付く。片やパンチを決め、片やキックを放とうとする。互いの動きが互いの攻撃の効果を有効に使わないため、苦戦する様子が描かれる。

 ところが、徐々に二人の動きがシンクロするようになる。左右で同じ攻撃をしたり、互いの力を上手く利用した攻撃を放つようになるのだ。ちなみに、ここではウルトラマンタロウのスワローキックを思わせる、メビウスの空中回転キックが披露される。兄弟の技を教えられたのではという想像を膨らませる、ちょっといいシーンだ。

 極め付きは、二人が互いに頷き、完全な「共闘」をし始める場面。ここでは、久々のCGによる派手な空中戦が描かれ、メビウスのシンボルである∞(インフィニティ)を描いて攻撃する。この共同戦線の美しさはウルトラバトル史上に残るものだと言えよう。

 ラスト、遂にウルトラの母が登場。オープニングには毎回登場しているが、本編では初登場だ。本編終了後の「メビナビ」では、「銀十字軍」というタームが登場。旧来のファンには嬉しい響きである。

データ


監督

小原直樹

特技監督

菊地雄一

脚本

川上英幸