ストーリー
GUYSスペーシーが大気圏外に停泊する宇宙船を捕捉した。先制攻撃をかければ良いとするトリヤマ補佐官に対し、それが敵である確証は無いと反論するミライ。怪獣頻出期のトラウマで、地球人に反宇宙人感情があるのだ。「パン・スペース・インタープリター」による、宇宙船搭乗者との通信が行われていたが、翻訳が進んでいない。それを聞いたテッペイは、自ら翻訳をかってでる。テッペイによると、「ファントン星人」と名乗る宇宙人が、6時間後に指定座標に降りるということで、しかも降りて来る地点は日本だった。
サコミズ隊長は出動を命じ、テッペイを通訳係に同行させた。大気圏外より転送で降りてきたファントン星人は、「ある物の捜索に手を貸して欲しい」と言う。「ある物」とはファントン星人の「食糧」だった。
フェニックスネストでは、ファントン星人を盛大に歓待。ファントン星人は母星の食糧難を回避する非常食「シーピン929」を落としてしまったため、回収のために地球に来たという。非常食は非常に小さく圧縮されているらしい。
アカツキ市北区に落下したことは間違いないが、CREW GUYSの隊員達は、捜索に手間取る。ミライは超能力を用いてシーピン929が、とある廃工場にあることを突き止めた。回収作業を完了するCREW GUYSだったが、謎の女が現れ、回収ボックスを破壊してしまった。シーピンは即座に巨大化を始め、さらに肥大化していく。圧縮にはファントン星人の宇宙船が必要だが、故障の為、大気圏突入が出来ない。
サコミズ隊長により、メテオールの使用が提案された。上空60kmに設置したメテオール重力偏向板に、ガンローダーより電力を供給し、シーピンを周囲の空気ごと吸い上げ、ファントン星人の宇宙船が回収できるまで慣性飛行させる作戦である。
作戦遂行中、リュウはセリザワの姿を発見し、追う。その時、謎の女の変身した謎の生命体が出現。シーピンを喰らうつもりなのだ。ファントン星人の事故も仕組まれたものだった。ミライはウルトラマンメビウスに変身し、謎の生命体に立ち向かう。一方、ジョージとマリナは作戦を成功させ、シーピンを上空に吸い上げていく。途端、謎の生命体はメビウスを食べる行動に転じた。
セリザワは、呼びかけるリュウにテレパシーで「誰だお前?」と言い放つ。リュウの目前でセリザワはツルギに変身し、謎の生命体に光線を放つものの、謎の生命体は逃亡。ツルギの放った光線は街に甚大な被害をもたらしてしまう。怒りに震えるメビウス。愕然とするリュウ…。
ファントン星人は去る前に、「ツルギの目的はボガールの抹殺」という重要な言葉を残した。これにより、青い巨人の名前がツルギであり、謎の生命体の名前がボガールであることが判明した。
また、ファントン星人はその折、テッペイに「僕、君、友達」と告げており、ミライは宇宙人が必ずしも敵じゃないことを、皆に理解してもらえたのだった。
解説
第7話にして、早くも登場となったコメディ編。同時にテッペイ編でもあり、さらに連続ストーリーの重要ポイントをも果たす。これら混沌とした要素により、本エピソードは盛り沢山な印象を放つ。しかしながら、コメディとしての雰囲気は一貫しており、その完成度は高い。
ファントン星人そのものは、コメディタッチの本編に相応しいキャラクター造形であり、「健啖宇宙人」の異名が現わすとおり、大食いで偏食のない様子が可笑しさを誘う。訛りのひどい宇宙語という設定は、いわゆる「インチキ外国語」っぽい雰囲気で一貫し、本当に何だか分からない言葉ながら、意味はありそうだと言う秀逸な雰囲気を持つ。
「宇宙語」に関する、旧来ファンにとっての嬉しいトピックは、二つ。まずは「パン・スペース・インタープリター」という翻訳機器。これは、ウルトラマン・第16話「科特隊宇宙へ」でイデ隊員が開発したもの(この時は電子計算機の124875回路として製作)。もう一つは「キエテコシキレキレテ」という宇宙語。同じくウルトラマン・第2話「侵略者を撃て」で、イデ隊員が練習していた宇宙語である。「僕、君、友達」の意味だが、バルタン星人に「君の宇宙語は分かりにくい」と評されている。イデの宇宙語研究の確かさは40年を経て証明されたわけだ(?)。奇しくも、両方バルタン星人絡みのエピソードであるところが興味深い。
さて、テッペイの活躍編が、どう料理されるかというところが今回最大の焦点である。これまで、コノミ、ジョージ、マリナと、そのキャラクターに合致した的確なバトルシーンを用意して盛り上げてきたが、今回は趣を異にする。テッペイには、キャラクター的にバトルシーンが想像できないという制約を、逆手に取った構成で唸らされるのだ(コノミとバトルシーンが結びつかないということは、この際、置いておく)。
テッペイに関するトピックを挙げて見ると、主役編とは思えないものであることに気付く。
宇宙語翻訳のスペシャリストとしての腕を、サコミズ隊長に買われ、テッペイが珍しく前線に出る。ただし、このシーンには、戦闘が勃発する余地がなく、実に平和的だ。また、CREW GUYSが遂行する任務は、全てフェニックスネストに常駐したテッペイにより、イニシアティヴが執られている。しかしながら、これはいつものことであるように思える。
これら特筆すべきことでもない2要素を中心としつつも、テッペイが主役に見えるよう、あらゆるシーン作りの工夫が凝らされているのだ。キャラクターの設定を最優先するという命題の中、キャラクターの描写を最優先して見せた…と言えば良いだろうか。これは実に難しい作業である。言い方は乱暴だが、目立たない「縁の下」を目立たせるには、かなりのテクニックと、キャラクターへの愛情が必要だ。本エピソードは、それがかなりの水準で達成されているものと評価できる。
冒頭に「連続ストーリーの重要ポイントをも果たす」と述べたが、それは「ツルギ」や「ボガール」といった名称が、CREW GUYSで周知されたことだ。ファントン星人という、宇宙からの来訪者の口より語らせるのが自然で、この点の構成力も評価したいところ。
また、ツルギが光線の誤射(実際はボガールが直前に逃亡)し、街を破壊してしまうところは、第1話「運命の出逢い」におけるメビウスとの対比になっており、早くもイデオロギーの違いを明確にしている。このあたりの「分かりやすさ」の意図にも素直に拍手を送りたい。
データ
- 監督
- 梶研吾
- 特技監督
- 菊地雄一
- 脚本
- 赤星政尚