第6話 深海の二人

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ストーリー

 ミライは、リュウと海岸でトレーニングする折、奇妙な気配を感じ取る。付近には謎の女がおり、対峙するセリザワの姿があった。セリザワは特殊なアイテムを用い、超人的な能力で謎の女を牽制するが、謎の女には逃げられてしまった。

 先日出現したサドラは、別個に1体、計4体の出現が確認され、霧吹山山中に現れた1体がモニターに映し出された。マリナにはサドラの声が変化し、断末魔の苦しみを上げているように聞こえた。

 その後、射撃訓練場で素晴らしい腕を見せるマリナの姿があった。「人間は集中力が7秒程度しかもたない」と言うマリナは、その一時の集中力を高める術を心得ていた。マリナの聴覚に関心を寄せるミライに、ジョージは「ずば抜けた聴覚が、ある意味マリナの弱点でもある」と言った。マリナは以前、カドクラに同様の指摘を受けていた。ミライに「どうしても超えられない壁がある」と告白するマリナは、エンジンの変化やベルトの軋みが聞こえてしまい、恐怖の為に反射的にアクセルを絞ってしまう自分を説明した。リュウを「何も考えていない熱血バカ」と評して羨むマリナ。

 テッペイとコノミがサドラの画像を解析した結果、謎の生命体によって瞬時に捕食されていたことが判明した。怪獣を捕食する生命体からは、悪意を感じるというミライ。そこへトリヤマ補佐官が現れ、「深海へ行ってくれ」と告げる。十六島南西20キロの海底で異変が起こり、水深4千メートルで異常な水温上昇が見られたのだ。

 リュウとジョージが行くことになったが、水の中が苦手なジョージは、頑なに拒む。リュウに指名されたミライは、マリナを推薦した。その日、マリナに散々馬鹿にされていたリュウは、憤慨しつつも出動した。ガンスピーダーで海底へ潜行するリュウとマリナ。その聴覚で的確にナビゲートするマリナは、怪獣の卵を発見。しかし、水温の上昇は怪獣由来ではなく、その卵に何者かが熱を放射している可能性が高いと、テッペイにより分析された。マリナは「笑い声が聞こえる」と言った。その声の主は謎の女であった。謎の女が発した怪光により、卵が孵化、中からツインテールが登場した。

 パワー不足で攻撃できないガンスピーダーのピンチを察し、ミライはウルトラマンメビウスに変身。ツインテールのいる深海に向かった。しかし、海中でのツインテールの素早い動きに、苦戦を強いられる。テッペイがツインテールの三半規管を発見したのを受け、リュウはガンスピーダーでの攻撃を決意。マリナはエンジン音の異常を感知し、浮上を提案するが、リュウは強引にエンジンを回すと、エンジンのノイズを停止させた。「この身を預けてるマシンを、信用しねぇでどうする」と言うリュウ。「信じてるから、集中できる」という言葉に、マリナは溜飲が下がる。

 ガンスピーダーの的確な攻撃により、メビウスは危機を脱してツインテールを撃破した。「時には熱血も役立つことがあるのね」とマリナはリュウに礼を言った。

 その時、謎の女が、サドラを捕食した生命体へと変身。謎の生命体は、メビウスを捕食しようとする。地上では、セリザワが「ツルギ」へと変身。ツルギは、そのまま海底へと向かい、謎の生命体を光線で追い払い、メビウスを救った。

解説

 マリナがメインのエピソード。優れた聴覚を持つマリナが、その聴覚を生かして任務を遂行していく様が描かれる。同時にその聴覚の為に、「超えられない壁」を作ってしまっているという設定が秀逸。

 ライディング技術は抜群であるが、その聴覚が限界を作ってしまうというライダー時代のマリナ。メカのコンディションが気になってしまい、あと一歩の無茶が出来ないというシチュエーションに重ねられて、キャラクターのドラマと対怪獣バトルのドラマを両立させている。そこに「単細胞」と評されるリュウが絡み、リュウのドラマを垣間見せるところなど、語り口は上々だ。このリュウの絡みでは、「フィジカルな弱点をメンタリティで超えていく」という、70年代ウルトラ以来の美徳をも体現していて興味深い。

 前回と同様に、謎の女とハンターナイト・ツルギの存在も語られているが、前回ほど散漫な印象はない。これは、マリナが優れた聴覚の持ち主であるということが、謎の女=ボガールの存在を察知するという帰結を得ることに加え、冒頭でのセリザワと謎の女の対決が、視聴者の興味を惹きつけたことに起因している。さらに、終始一貫してマリナの聴覚に関するメリットとデメリットに言及し、周囲がその二面に積極的に絡んでいく様子が、ストーリーの運行を強固にしているのも、理由として挙げられるだろう。

 さて、怪獣に関する今回最大のトピックは、やはりツインテールの復活であろう。グドンが登場したとき、ツインテールがセットで登場しないことに、残念な思いをしたファンは多かったであろう。ところが、何とツインテールには「ピン」での活躍というステージが与えられていたのだ。

 しかも元来は、ツインテールが海中での活動を主とする怪獣であるという新設定が登場。テッペイに「海の中ならグドンに勝ったかもしれない」と言及させるなど、「グドンに倒された弱い怪獣」というレッテルを払拭する効果は抜群。体を平らにして泳ぎまわる様子は、意外性もあって嬉しい描写だ。ただし、テッペイの「グドンに捕食されている」という言葉は些か承服しかねるところ。実際に「帰ってきたウルトラマン」を見ると、グドンはツインテールに噛み付いてはいるものの、実際に食べているわけではない。「ツインテールがグドンの好物」という「常識」は、当時の児童誌あるいは学年誌での記述が一人歩きしたものである。

 続いて、謎の女の正体について。放映開始当初、大方の予想を「怪獣を操る元締め」的なものに誘引しておいて、実は捕食の為におびき寄せていたという、「衝撃の正体」を現わすことになる。しかし、それほど衝撃が伝わらない。実際に捕食される様子がはっきり分かるのは、サドラのみであるし、謎の女とボガールでは、かなり印象が異なる為だ。例の「舌なめずり」に相当な怖さがあるので、いっそのこと謎の女の姿のままで、例の舌を怪獣に絡めて捕食する描写が欲しかった(無理であろうことは承知した上で、だが)。それでも、捕食したい怪獣を選別している様子や、人間体での異常な能力の高さを考えあわせると、高度な知能を有する高次の生命体が、「食べる」というより低次な欲求を満たす為のみに行動しているという、潜在的な不気味さが漂っている。

 そして、今回最大のトピックの一つに、「セリザワ=ツルギ」の図式成立がある。

 冒頭、謎の女と対峙する際に、明らかにウルトラマン系のアイテムを所持していることが分かるシーン。同じく対峙の際、瞬間移動能力によって謎の女に肉薄するシーン。この二つのシーンから、既にセリザワが普通の人間ではないことが分かる。蛇足だが、この直後の「ウルトラ五つの誓い」を暗唱するリュウとミライを見つめる場面がイイ。

 さらにクライマックスで、待ってましたとばかりに変身シーンが登場する。メビウスブレスとは異なる、攻撃性を備えた変身アイテム「ナイトブレス」や、その変身シーンにおける、硬質な金属質の背景画など、ダイレクトにカッコ良さをアピール。しかも、変身シーン自体はウルトラマンの伝統形を継承しており、鎧の下がウルトラの種族であるかのような印象を与えている。恐らく、これは重要な意味を持つに違いない。

データ


監督

高野敏幸

特技監督

高野敏幸

脚本

川上英幸