ストーリー
メテオールの新機能・マケット怪獣の実験をすべく、GUYSはとある山中に来ていた。第一号マケット怪獣はミクラス。「弱そう」「不細工」「可愛い」という評価を与えるマリナ、ジョージ、コノミ。記録では、ミクラスは人類の味方という見解だが、怪獣を倒したことが一度もないという。ミクラスはコノミと目が合って表情を変えた。
テストにはディノゾールのホログラムが使用された。まず、リュウがミクラスを召喚するものの、岩につまずいてアウト。ジョージは流星シュートを命ずるも失敗。テッペイはミクラスの行動パターン分析に夢中になり時間切れ。マリナはミクラスに拾い上げられ、そのまま時間切れとなりテントに落下、負傷してしまう。ミサキ総監代行は思わず溜息。そんな中コノミが召喚したミクラスは、時間切れにはなったものの、覇気を見せた。
その頃、宇宙怪獣ケルビムが、地球に向かって飛行していた。ケルビムはGUYSスペーシーV77の破壊により生じた穴を突き、日本領空へと侵入。直ちにCREW GUYSは出撃する。負傷の為マリナは待機し、コノミが出動することになった。そして、ケルビムの強力な尻尾の攻撃を受け、ミクラスを市街地で実践使用する判断が下された。コノミはミクラスを召喚するが、ミクラスは物怖じし、恐怖のあまり逃げ出すコノミを追いかけて、ビルを破壊してしまう。ミクラスが時間切れと共に消えると、ケルビムは空へと飛び去った。一部始終を見つめていた謎の女。ミライが気付いて追ったが、既に消え失せていた。
トリヤマ補佐官の叱責を受け、コノミは自らの恐怖心を吐露。自分の存在価値に疑問を持つコノミを、ミライは「メビウスより、ずっと短い制限時間で戦わなければならないミクラスは、凄い」と言って励ましたが…。
テッペイの分析により、ケルビムは遠距離の敵に火球で、近距離の敵に尻尾で対抗していることが判明。至近距離戦に持ち込むには、ミクラスを近距離に出現させるほかない。その為には優秀な監督者=コノミが必要だ。
一方、コノミは保育園に逃避する。ところが、園児たちはCREW GUYSとしてのコノミを応援していた。コノミは堪らず教室を飛び出す。そこへマリナ達が現れ、「本当は臆病ではない」コノミの力が必要とであることを告げる。
再びケルビムが出現した。サコミズ隊長の責任ということで、メテオール解禁が指示され、コノミはミクラスを召喚した。「絶対に逃げない」というコノミの叫びに、ミクラスはケルビム相手に奮戦し始める。しかし、ケルビムの尻尾の威力の前に苦戦。ミライはウルトラマンメビウスに変身する。
ケルビムの特性を知るメビウスは、至近距離線に持ち込むが、角という武器が待っていた。メビウスのピンチに際し、コノミの放った弾丸がケルビムに命中。メビウスはメビュームブレードでケルビムを倒した。
改良の余地ありとして、ミクラスは回収されることとなった。「ありがとう。君のおかげで、今日は4分間戦えた。」ミライはコノミに対し、心の中で感謝した。
解説
メテオールの新機能である「マケット怪獣」登場編。栄えあるマケット怪獣第一号には、「ウルトラセブン」でカプセル怪獣としてファンに強い印象を残す、ミクラスが選ばれた。
「ウルトラセブン」に登場するカプセル怪獣は、セブンことモロボシ・ダンが変身不可能なシーンで使役される、いわゆる「場つなぎ」的な役割。勿論、セブンを差し置いて敵を倒してしまうほどの能力はなかった。ただし、それぞれの愛嬌ある戦いぶりもあって、その活躍ぶりには人気が集まることとなった。
さて、ウルトラマンメビウスに登場するマケット怪獣は、いわば「レプリカ」である。そのレプリカをどう扱うかという点に、当然注目されるわけだが、概ね良好であったという評価が妥当ではないだろうか。
まず、マケット怪獣がテクノロジーの産物であるという部分は、ナノマシンや高エネルギー分子ミストといった、リアリティ溢れるタームで表現されている。また、その硬質な設定をバックボーンとするにしては、あまりに愛嬌のあるミクラスが登場することに関しては、アーカイブデータに依存したという部分が強調されている。
特に後者を考えるとき、アーカイブデータが、ファンの最大公約数的な印象をパッケージングしていることが分かる。エレキングに尻尾でグルグル巻きにされ、感電する可愛さ。ガンダーの冷凍光線を浴びて震える様子。しかし、遥かに強い相手に勇敢に立ち向かう勇姿。そのあたりが上手に受け継がれているように思う。今回の描写は、些か愛嬌を強調し過ぎる面は否めないものの、「ミクラス=愛嬌」というイメージを抱くファンは多い筈だ。ファンの最大公約数的イメージであるアーカイブを具現化する存在。少なくともミクラスはそう捉えて良い。
では、映像的な部分ではどうだろうか。真っ先に感嘆するのは、その登場シーンである。光がらせん状に渦巻いてミクラスが登場するシーンは、カプセル怪獣の登場シーン・イメージを正当に継承している。ケルビムの尻尾に苦戦するのは、エレキング戦を彷彿。臆病な動作は、ミクラスというよりは、むしろ同じカプセル怪獣であるアギラを継承しているように思える。
ミクラスの話に終始してしまったので、少し今回の他の見所について言及しておきたい。
今回はコノミの主役編でもある。ミクラスの性格とのシンクロを図りつつ、第1話のシーンを織り交ぜることで、コノミの真の強さをCREW GUYSの面々が知っているという展開を持ち出す。この一連の筋運びには、ひたすら感心。キャラクターの掘り下げが、初盤で既に行われ始めているのも凄いが、今回のコノミのように特定のキャラクターだけでなく、周囲のキャラクターの言動にも最大限の配慮がなされているのがイイのだ。
コノミが前線に出なければならない理由が、マリナの負傷(しかもミクラスが原因!)とミクラスの必要性という二重で仕掛けられる等、ストーリーにも破綻がない。メビウスは、1話完結と大河ドラマ性の両立を、今のところ非常に順調に進めているようだ。
最後にちょっとしたシーンを3つ。一つは、ミライとコノミの「デュワッ!」。コノミの眼鏡が赤い縁のものに変わったのは、この為だったのかも? もう一つは、メビュームブレードでケルビムが一瞬両断されているところ。切断技に関しては敏感な昨今では、珍しいシーン。最後の一つは、ミライが「それって、ウルトラセブン!」と失言(?)する場面で、サコミズ隊長がすかさず話題をそらすくだり。サコミズ隊長が密かにミライをフォローしていると思われるシーンは、第2話あたりから散見されるが、果たして?
データ
- 監督
- 村石宏實
- 特技監督
- 村石宏實
- 脚本
- 小林雄次