ストーリー
M78星雲・光の国で、新たなウルトラマンが地球へ派遣されようとしていた。その名は、ウルトラマンメビウス。「人間たちと触れ合うことで、ウルトラ兄弟たちのように、大切なものを手に入れると信じている。」そう告げて、ウルトラの父はメビウスブレスを授けた。
地球にやって来たメビウスは、一人の青年「ヒビノ・ミライ」に姿を変えた。少女が誤って空に放してしまった風船を届けたミライは、少女に「ありがとう」と言われ、その言葉に感慨を覚える。
その頃、ディノゾールと呼ばれる宇宙怪獣が地球に接近しつつあった。四半世紀振りの怪獣襲来とあって、ゴルフに興じるGUYSのトリヤマ補佐官は憤慨。
一方ミライは「ウルトラ五つの誓い」を暗証するリュウに出会う。リュウは地球を守るCREW GUYSの一員だった。怪獣攻撃衛星V77が攻撃態勢に入ったが消滅したとの連絡を受けたリュウは、セリザワ隊長とガンクルセイダーに同乗して宇宙へと飛び、ディノゾールを迎撃。初の戦闘故か、次々と撃墜されるCREW GUYS JAPANの戦闘機。いよいよリュウとセリザワのガンクルセイダーのみとなってしまう。大気圏に侵入したディノゾールを止めるべく、セリザワ隊長はリュウを強制脱出させ特攻をかけた。
CREW GUYS JAPANは、リュウを残して全滅した…。
時を同じくして、コノミ、ジョージ、テッペイ、マリナが運命の出逢いを果たそうとしていた。コノミは保育園の職員、ジョージは有名なサッカー選手、テッペイは医者のタマゴ、マリナはオートレーサーの有望株だ。偶然居合わせた4人は、コノミの保育園に残されたウサギを救出すべく奮闘する。
さらに同じ頃、ミライは謎の女の襲撃を受けていた。念動力でミライを襲う女。女は次元の裂け目の中へ消えていった。
遂にディノゾールは東京へと降り立ち、その強大な破壊力を見せ付けた。ミライはテッペイの母ケイコがわめき立てるのを見て、コノミたち4人に合流。4人の危機に、ウルトラマンメビウスへと変身する。地上からディノゾールを迎撃していたリュウは降り立つメビウスを見て「まじかよ」と呟いた。四半世紀振りにウルトラマンが姿を現わしたのだ。
メビウスは、ディノゾールの攻撃をかわすべくビルを盾にし、その強力な必殺技メビュームシュートでディノゾールを倒す。歓声を上げる一般市民をよそに、リュウは「ヘタクソな戦い方」と評し周囲の建造物の崩壊振りを批判、メビウスを罵倒した。
その夜、ミライはGUYSの制服を着てリュウに会いに来た。ミライは「一緒に戦ってください」と告げるや、GUYS全滅に絶望するリュウを連れ、フェニックスネストへと向かう。そこでは新隊長サコミズが待っていた…。
解説
遂に開始となった、昭和ウルトラシリーズの流れを継承する「ウルトラマンメビウス」。21世紀に入った現在においては、あまりに唐突かつ衝撃的な設定に、前情報を目にしたファンが期待を募らせたに違いない。
その期待は、この第1話、特に導入部であるレベルまで満たされてしまうことになった。いきなりウルトラの父が登場し、かつて昭和のウルトラシリーズにおいて画面を彩ったウルトラ戦士たちが、次々と画面に現れては消えていく。幻想的な雰囲気を湛えたシーンながら、決して現実感が乏しいわけではない。レオ、アストラ、80、ユリアンといった、いわゆる「ウルトラ兄弟として活躍していない」戦士たちが、メビウスの門出を見守る。旧来のファンにとって、これほど「光の国」のイメージを喚起する幸せなシーンが存在しただろうか。
さて、その衝撃的で感涙モノの導入部が終わると、今度は地球での出来事が語られるわけだが、これがまた旧来ファンの心をイヤというほどくすぐる。
ウルトラ五つの誓いを諳んじるリュウ。「帰ってきたウルトラマン」の最終話に強い印象を抱くファンならば、「聞こえるかい、郷さ~ん!」と思わず言ってしまうかも知れない。「上司の友達が幼い頃にウルトラマンから教えられた」というリュウの衝撃的なセリフからは、リュウの上司=セリザワ隊長が坂田次郎の友達という図式が浮かび上がる。
続いて、CREW GUYSが出撃するシーン。ここでの戦闘機の効果音、ミサイルの発射音は、ビートルやウルトラホークなどかつてのウルトラメカに使用されたものが当てられ、ミサイルも曳光弾による描写。操演、火薬による素晴らしい戦闘シークェンスを見ることが出来る。
CREW GUYSがリュウを残して全滅してしまうという、「ウルトラマンA」の冒頭で地球防衛軍が全滅した衝撃を上回るシチュエーションは、勿論、新生CREW GUYSのメンバーが集合していくプロセスを強調するためである。そのため、ウルトラには珍しく、特殊能力を持つ一般市民が運命に引き寄せられるかのごとく集合するくだりが描かれていく。こういった描写は、集団ヒーローモノの最高峰である戦隊シリーズによく見られる。今回のCREW GUYSのヒーロー性を高め、「宇宙人」と厳格に規定されたウルトラマンと同列のキャラクターを配置しようとの意図が垣間見られる。ジョージの「流星シュート」は正直やりすぎの感が否めなかったが、ヒーロー性の追及という点では一定の成功をもたらしているようだ。
肝心のウルトラマンメビウスは、きっちりウルトラマンの標準フォーマット通りのタイムスケジュールで登場。変身シーンでは、一度変身して光と化し、上空から降り立つという演出。この、一見間延びしているかのようなシーンでは、ウルトラマンを待つ「間」が大変絶妙で、まさに「待ちわびた」感覚を煽っているのが面白い。また、一介の父親が「ああ。ウルトラマンだ。」と子供に言い聞かせるシーンは、グッと来るものがある。
戦闘スタイルは、強力な武器でディノゾールを一撃の元に倒すという、光の国のウルトラ戦士ならではもの。だが、戦闘が起こったエリアをメチャクチャにしてしまい、それをリュウに批判されるという展開が新鮮。これから先の展開、すなわちメビウスもウルトラマンとして成長しなければならない ~しかも、戦闘力的な成長ではなく、大切なものを守る戦い方を身につけるという成長~ という展開を、無理なく導入している。
以上のように、野心的な設定を随所に盛り込みつつも、伝統芸能を守るかのごとく、各シーンを丁寧に作り上げるこの「ノリ」。このノッた感覚がよく現れた第1話の傑作だ!
データ
- 監督
- 佐野智樹
- 特技監督
- 原口智生
- 脚本
- 赤星政尚