第34話 ようこそ!地球へ 後編 さらば!バルタン星人

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ストーリー

 ダークバルタンにより、ベース・タイタンの司令室は重力バランスに異常をきたしており、回復の目処が立たない。ヒジカタ隊長はコバに命じ、エリーの眼を見つめさせたり、髪をなでさせたりして、エリーの感情回路に訴えかける作戦に出た。

 勉とタイニーは、ウルトラマンマックス復活のためにタイニーの乗ってきた方舟「アーク」の元へ向かうべく、ミズキにダッシュアルファで連れて行ってもらうことに。その頃、トミオカ長官とヨシナガ教授は、高度な科学力を持ち、地球人を侵略者とみなす宇宙人の攻撃を防ぐ手立てがないことを案じていた。

 コバはエリーに自分の名前を「快い」というファイルに入れるようささやく。ところが、エリーは「既に好きというファイルにあります」と答えた。「私の好きなコバのために正常に戻します」…。

 タイニーは方舟アークでバルタン星に戻って、何か持ってくるという。地球時間で2分もあれば往復できると言う。タイニーはバルタン星へと飛んだ。一方、制御が戻った司令室は、遂に重力バランスと管制を取り戻し、ヒジカタ、コバ、エリーがダッシュマザーで発進。ミズキはダッシュアルファでそれに合流した。

 瓦礫の下のカイトは無事だった。しかし、ダークバルタンはカイトがマックスになるメカニズムを知っているとし、変身に必要なエネルギーを失ったカイトに、マックスになる力はないと断言した。タイニーと勉、そしてその友達の子供たちは、そんなカイトを懸命に探す。ダッシュバード1にミズキ、2にコバとエリーが搭乗し、DASHも本格的に行動を開始した。工場地帯に出現するダークバルタンに攻撃を開始するDASH!

 一方、カイトを見つけたタイニーは、重力操作でカイトを救出。タイニーが水から作り出したエネルギーを、子供達がカイトに与えることで、カイトはウルトラマンマックスへと変身することが出来た。ダークバルタンに立ち向かうマックス。竜巻状の光線でダークバルタンをバラバラにするが、ダークバルタンは無数のクローンを作り出す。マックスも分身能力を使って無数のダークバルタンを迎撃するが、戦況はダークバルタンに有利。トミオカ長官は勝ち誇るダークバルタンに「戦いを仕掛ける者にいかなる正義もない!」と憤る。

 タイニーは、バルタン星から持ってきた「秘密兵器」を取り出して子供達に配る。子供達は、銅鐸状の「バルタンの古代遺跡に残された遺物」を鳴らし始めた。一様にある種の懐かしさにとらわれるトミオカ長官、ヨシナガ教授、そしてショーン。ダークバルタンは、その音色によって戦意を喪失した。ダークバルタンを倒すことなく空へと去っていくマックス。

 そこへ突如ダテ博士が現れ、新開発のメタモルフォーザでダークバルタンを本来の姿へと戻す。それは人間にとてもよく似た姿だった。駆け寄るタイニーは、恐ろしい戦争が始まる前のユートピアを思い出していた。「互いに相手を理解する、和み、平和。今の地球にとってそれが一番必要なことだ」ヒジカタは呟く。

 そして、いよいよタイニーと勉の別れの時がやってきた。タイニーバルタンとダークバルタンは、共に方舟に乗って虚空へと消えた。力いっぱいタイニーの名を呼ぶ勉を、物陰から見守る駐在の警察官の姿があった。

解説

 あらゆる新要素をバルタン星人というキャラクターに投入し、見る者に衝撃を与えた前回。今回はその後編として、バルタン星人のエピソードを完結させる。しかしこれは、バルタン星人というキャラクターそのものの長い歴史を、飯島監督自らが完結させるかのようなエピソードでもあった。

 話をウルトラマン第2話「侵略者を撃て」まで遡る事をお許しいただきたい。そもそも初代バルタン星人は、自らの星を核戦争で失ったために、地球に住む場所を提供してもらおうとした経緯を持つ。しかしこの交渉は決裂し、結局は武力によって強制的な移住を試みることとなる。少なくとも、帰ってきたウルトラマンまでに登場したバルタン星人は、初代バルタン星人を倒したウルトラマンへの報復を企てたという側面が強い。その後、その人気に乗じてザ・ウルトラマンやウルトラマン80にも登場するが、それらは一貫したポリシーを抱いているわけではなかった。

 バルタン星人に明らかな変化が生じたのは、「ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT」においてである。この映画では、チャイルドバルタンと呼ばれる子供が、大人=バルタン星人の愚行を阻止しようとする。ウルトラマンコスモスというシリーズ自体が他のシリーズと一線を画すとは言え、遂にバルタン星人の内部に対立の構図が描かれたのだ。しかしこの映画では、「大人のバルタン」は非を認めつつ「自殺」するという結末を迎える。それを踏まえて今回の前後編を見ていくと、興味深いことが分かる。

 それは、穏健派であろうが過激派であろうが、等しきバルタンの星の民として、救われる結末が描かれていることだ。これまでのバルタン星人は、一様に母星を捨てて放浪してきたが、遂に帰るべき場所を母星に定めた。「さらば!バルタン星人」というサブタイトルは、飯島監督自身の言葉ではなかったか。原点回帰、過去のスター怪獣の登場といった、マックスの作り上げた芳醇な土壌は、バルタンの完結編を描くのに最適な場だったと言えるだろう。

 さらに興味深いのは、ある種の文明批判が込められていることである。かつてウルトラマンの怪獣を多数造形した高山良作氏(故人)や、初期ウルトラシリーズに問題作を多数残した佐々木守氏は、ユートピアとしての縄文時代に憧憬を抱いていたと言われる。飯島監督が直接的にその影響を受けたか否かは判断しかねるが、今回のバルタンの起源の描写は、明らかにユートピアとしての縄文時代(銅鐸は弥生時代だが)が意識されており、一度でも初期ウルトラシリーズについて「研究」したファンならば、胸が熱くなる思いをしたのではないだろうか。タイニーもダークも同じく、ことあるごとにクローン技術について言及するが、真に生命力に溢れた時代を振り返ることで、母星の再生を果たそうとする姿は、科学万能を痛烈に批判したレトリックと受け止めることが出来る。

 以上のように、バルタン星人に関するあらゆる要素を、平和的解決に昇華してみせた今回だが、逆にあらゆる要素を語りつくすことに終始しようという姿勢が、破綻を招いてしまった面も否めない。

 前編のテンポの良さとジュブナイルとしての完成度に比べると、今回はどうしても見劣りしてしまう。コバとエリーの中途半端かつ冗長な交流(これはこれでファンにとっては嬉しい展開ではあるが)や、タイニーが母星から持ち出した銅鐸状の物体に対する、各キャラクターのモノローグに蛇足感が感じられること、ダテ博士の登場がかなり予定調和的で唐突であることなど、明らかに尺不足が原因と思われる点が多い。特に銅鐸状の遺物に関しては、バルタンの星を平和にする力を持っていながら、何故母星で使われることがなかったのかという疑問が生まれてしまう。

 ここは好意的に解釈し、地球における心の安らぎをもたらす音色、つまり根源的に癒される音色が、バルタンの子供と地球の子供によって鳴らされることにより、初めて決定的な効力を発揮できたのではないか、としたい。クローンで種の増減をコントロールできるバルタン星人には、「個」が存在しないが、地球の子供は自然な生殖でしか誕生しない(少なくとも現在は)。異なる「個」が交わり、和を成すことで、真の理解が得られた。そう解釈してみてはどうだろうか。

 さて、最後に映像面について触れておきたい。前編ではファンタジックな映像でストーリーを彩っていたが、今回はより挑戦的でエキサイティングな映像が続出した。その最たるシーンは、ダークバルタンとウルトラマンマックスの分身対決であろう。マックスは体術の多彩さに比して、超能力の少なさが特徴とも言うべき存在だったが、今回のような秘められた能力が露出することで、よりヒロイックで神秘的な光の巨人に昇華した。このシーンは、別撮りされた対決シークェンスを沢山合成するという、非常に手間のかかる作業を感じさせるとんでもないシーンだ。そのほかにもレトロな合成が施されたバリアや、竜巻状の破壊技など見所が多い。

 勿論、タイニーバルタンと勉が交流するシーンでは、前回に続いて丁寧な作業による合成が随所に見られる。それはファンタジーとしての側面を持ちつつ完結した今回の、雰囲気を損なわない良心の表出だ。バルタン星人というある意味難しい題材に挑んだ姿勢に、敬意を評したい。

オマケ

 ある意味、今回最も衝撃的なシーンは、カイトが子供達の目前でマックスに変身してしまうところだろう。いわゆる「正体バレ」とは違い、カイト=マックスであることは子供達にとって周知であるかのような、極めて自然なシーンとして描かれている。

 かつてウルトラマン第26・27話「怪獣殿下(前後編)」で、ハヤタがベーターカプセルでウルトラマンに変身することを、子供達が知っているような描写があった。劇中にほんの微量のメタフィクション的要素を持ち込む手法は、シリーズ黎明期から見られるのだ。

 また、今回はオープニングの登場モンスタークレジット部分で、バルタン星人の懐かしい笑い声がオーバーラップしたのもポイントだろう。