ストーリー
コバとショーンはエリーを連れて、クリスマスプレゼントの買出しに出かけていた。「クリスマスになると何故皆んな嬉しいのか、何故、皆んな急にプレゼントをあげるのか」と質問するエリーに、ショーンは「クリスマスだからだよ」、コバは「たこ焼きには、たこが付き物だろ、同じようにクリスマスにはプレゼントが付き物なんだよ」とヘンな答えでその場をしのぐ。ショーンは買い忘れがあると言い、エリーに荷物番を頼んでコバと共にどこかへ行ってしまった。一人になったエリーに、見知らぬ少女が「メリークリスマス」とささやかなプレゼントを手渡す。
その時、妙な叫び声を聞いたエリーは、その声の主の元へ行ってみる。ローテクな探知機のようなもので、上空の何かを探す男に近づいたエリーは、探知機を「ここです」とズバリな方向へ向けた。その方向には、男が「ユニジン」と呼ぶ何かが一瞬見えた。男が「もうすぐユニジンが現れるぞ」と言った途端に機械は故障し、エリーはそれに感電して倒れてしまった。エリーの通信システムは停止してしまっており、ベース・タイタンからエリーの位置をキャッチすることが不能に。エリーには、人命救助や犯罪の阻止など様々な機能が備わっていると説明するヒジカタ隊長は、焦る隊員たちに落ち着けと言うが…。
一方その頃、エリーは基本機能を回復していた。男は古理博士という人物で、エリーを修理したのだ。古理博士はユニジンを捕らえるには、トネリコの木が必要だとするが、エリーは国有林を勝手に切るのは犯罪だと言う。博士はさらに反論し、ユニジンが現れるのは12年に一度しか現れないと説明。このチャンスを逃したら、失望で心臓が止まってしまうと言う。人命救助と解釈…しかかるが、博士が走って逃げるのを見て、心臓は意外と丈夫なのが分かり「ホッとしている」エリー。
足りないトネリコの木をどうしようか悩む古理博士だったが、通りかかった老人が持つトネリコ製のステッキを拝借することに。古理博士はエリーにユニジンの存在を語る。時空予測盤を発明し、12年に一度出現するユニジンを観測してきたが、正確に特定できたのは今回が初めてらしい。
さて、24日の夜に備え、壊れた時空予測盤のバッテリーが必要だ。エリーは「バッテリーの拝借」が犯罪行為だとして、古理博士に止めるよう説得するが…。カイトが入手した電気店の防犯カメラの映像に「オ返シシマス トリ急ギ」の紙を掲げたエリーの姿が! その後、店の裏に捨てていたバッテリーが紛失。ショーンは映像の中の古理博士に気付く。「ペテン師博士だ」ショーンは古理博士をそう呼んだ。
古理博士とエリーは、4つのトネリコの枝を立てて、ユニジンの捕獲への準備を進めていた。エリーは、何故今回に限って時空予測盤が正確に働いたのか、という疑問を呈するが、博士は「それにはワシもビックリしている」と答えた。一方、カイト達はユニジンの存在が常識的にありえないという見解から、「ペテン師博士」にエリーが騙されていると考え、エリーを捜索していた。
古理博士の古い家に来たエリーと博士は、時空予測盤を修理しはじめた。博士は12歳のときにクリスマスツリーの飾りになる赤い実を求めて森に入り、初めてユニジンと遭遇、それ以来、皆にも見せてやりたいと思ったと言う。幻を追いかけてきただけかも知れないと漏らす博士に、エリーは複雑な感情を抱く。外へ出てトネリコの枝を確認しているエリーの元に、カイトたちが駆けつけた。必死でエリーを説得するカイト達だったが、博士にユニジンを捕まえさせてあげたいというエリーに呆然。一方、ミズキは博士に対して強い口調で迫るが、「ペテン師じゃないの?」「はい」の会話一つでコロッと態度を変えてしまう…。
その時、時空予測盤が激しく反応! そこへ遂にユニジンが現れた。ユニジンが飛び立とうとした瞬間、ユニジンはトネリコによる陣に捕獲された。しかし、ユニジンがその場に留まり過ぎた所為で、周囲のものが時空の狭間に消え去ろうとしている! カイトはウルトラマンマックスに変身してその影響を防ぐが、その余波は強力だった。それを見た古理博士は水晶にユニジンを捕らえるのを止め、トネリコのステッキを地面から抜いた。
「時の中を走っているほうが、ユニジンは幸せだろう」古理博士が呟く。ユニジンがいた場所には、博士が12歳の頃、手に入れることが出来なかった赤い実のついた枝が…。それを博士に渡す為にユニジンは同じ森に現れたのでは、そう推測し「博士が嬉しいから私も嬉しい」と言うエリーだった。
「クリスマスは、誰もが誰かを喜ばせたい日、誰かを幸せにしたい日」エリーはそう答えを出した。雪も降り始め、ホワイトクリスマスになりそうだ。
解説
12月24日、クリスマス・イヴというこの上ない放映日を得た今回は、前回に続き太田愛氏の作品。やはりファンタジー系の作風を得意とする氏ならではの、夢のあるエピソードに仕上がった。
前回が、SF的設定をバックボーンに据えた上で、キャラクターのメンタルな側面でストーリーを牽引していったのに対し、今回は思い切りファンタスティックな背景の前で、サイエンティフィックなキャラクター(つまりエリーだが)を動かすという手法をとっている。これにより、徐々に描かれてきたエリーの内面的な部分が、一気にクローズアップされることとなり、クリスマスイベント的なストーリーとキャラクタードラマの両立が高次元で成された。
エリーの言動を追っていくと、「防犯」や「人命救助」といった大義的な側面と、「感情の理解」という、よりパーソナルな側面が交互に現れては、古理博士のペースにはまっていくことがわかる。古理博士という、少々浮世離れしたファンタジー系のキャラクターが、ロジックの塊とも言うべきエリーの内面を解きほぐしていくという展開は、ベタではありつつもやはり暖かく爽快である。また、ファンタジーではありながら、ユニジンの影響で時空の狭間に物体が落ちていくといった描写や、時空を楕円軌道で周回しているというユニジンの生態には、SF的な匂いが多分に含まれ、古理博士自身も時空予測盤という、ちょっと聞いた感じが難解な言葉を使用する。即ち、SFファンタジーという言葉に即した展開を崩していないのである。これはマックスのシリーズから逸脱しない的確な語り口だと言えよう。
SF的な匂いが漂うにも関わらず、太田氏ならではの落とし処は健在。博士が12歳の頃に赤い実を捜した森へ、何故再びユニジンが現れたのか。それはユニジンが赤い実を届けたかったからというのだ。限りなく個人的な内面に関わる落とし処を用意する。それはスケールの矮小化を招きかねないが、ここでは一定以上の成功をもたらしているようだ。クリスマスという時候を考慮すると、「誰もが誰かを喜ばせたい日、誰かを幸せにしたい日」とエリーが言ったように、極めて個人的な感情に帰結することを許すことができる。そういう特別な日にこそ成立し得るストーリーだと言えよう。シリーズの季節性を極めて上手く活用した好例だ。
ところで、言うまでもないことだが、今回の主役は完全にエリーである。アンドロイドというキャラクターをフルに生かして、人間臭さの極致を思わせる古理博士とのギャップを楽しむかのように、ストーリーが流れていく。特にエリーが事あるごとに自らの「感情」を分析する姿が愛らしく、胸に手を当てて考えるという妙に人間らしい仕草をして見せる。人間の感情は脳が作り出す筈なのに、人間の多くは胸から感情が発露するかのように感じる。胸に手を当てるという仕草はそれを端的に現わすポーズとして効果的だ。また、これはエリー役の満島氏が図らずもそうなってしまったことなのかも知れないが、ラスト、クリスマスについてエリーなりの答えを出すシーンでは、何となく涙ぐんでいるようにも見える。ここで目を潤ませるという演出は、ストーリー上必然とは思えないため、あえて完成シーンを採用した現場の計らいが窺い知れるというものだ。クリスマスの夜に、エリーにも奇跡が起きた…というところだろうか。
エリーが主役ではあるが、エリーを探して奔走するDASHの面々もなかなか見せ場があって面白い。コバの、たこ焼きを引き合いに出すイイ感じにいい加減な言動を筆頭に、古理博士と対峙したときのミズキの怖い詰め寄り方と、あまりに早い変わり身、妙に真面目に走り回るカイトなど、細かな笑いの要素が効果的に散りばめられ、全体的に楽しげな雰囲気作りに成功している。
今回はユニジンの、神々しいまでに幻想味溢れた姿形、その生態故に、ウルトラマンマックスの出番は殆どない。それでも、時空の狭間に周囲が巻き込まれるという、ショーンの回想によるヨシナガ教授のコメントが見事に繋がり、マックスの登場を促した。このヨシナガ教授のコメントが、古理博士を疑わせる要素になったり、マックス登場の要素になったりするところが実に上手く、少量のファクターで色々な結果を展開させるという分かり易い手法が良い。
ユニジンの造形も、硬質感と生物感、そして幻想性を巧みにブレンドした秀逸なデザインで、ファンタジーとしての作品に花を添えた。合成も実に華々しく使用されているが上品で、幻想性の昇華に一役買っている。造形、特撮、ストーリーが見事に三位一体を成した、一級のファンタジーとして記憶されよう。
オマケ
今回はメインタイトルのBGMがクリスマス・ヴァージョンに。また、オープニングでのサブタイトルや怪獣クレジットに、クリスマスに相応しいベル音が響く。こういう粋な演出が、番組の完成度を左右すると言っても過言ではなかろう。
また、コバのセリフから、彼には甥っ子や姪っ子、祖母がいることが分かる。また、隊長のセリフからは、エリーに防犯や人命救助といった機能が備わっていることも判明。ささやかながら、設定レベルに食い込んでいくところは、マニアレベルのファンはよくチェックしておきたいところだ。
それから、DASH隊員はショッピングなどのプライベートな時間を、隊員服で過ごすことが許可されていることも判明。これは、これまでのウルトラシリーズでは、あまり見られなかった光景だ。