ストーリー
若者2人が、長野県和奈村のとある山中に隆起地帯があるとの噂を聞き付け、現場にやってきた。一休みしていると、突然地中より熊ほどの大きさの珍獣ゴモラザウルスが出現した。フリドニア共和国の山岳地帯に生息するというゴモラザウルスが何故日本に出現したのか。ジャーナリストの宮原香波は、20年前にGSTEという組織によって密輸されたものだとコメントする。さらに、GSTEは生物兵器の開発を行っており、和奈村が潜伏先として有力だとの言を呈する。
DASHが調査のため現地に入った。まずは巣を見つけるのが先決とするヒジカタ隊長。そこへ香波が現れ、場所は大体見当がついていると告げる。香波の父・宇野は、バイオテクノロジーの権威で、「品種改良」によってゴモラを生物兵器に仕立て上げているという。その道中、大きな地震が起こり、突如陥没した山道にヒジカタ隊長と香波が落下してしまった!
必死に捜索するDASHだったが、地磁気の異常によって難航していた。ヒジカタ隊長と香波が洞窟の出口を求めてさまよっていた頃、地上では突如巨大なゴモラが出現。ゴモラはダッシュマザーに岩石を浴びせた後、地中に潜ってしまった。一方、ヒジカタ隊長と香波はGSTEの施設にたどり着いていた。そこでヒジカタ隊長は、去年の日付がプリントされたフリドニア共和国からの物資を見つける。ゴモラが密輸ではなく、資金援助を受けた研究だったと確信する香波は、父・宇野の研究ノートを発見する。そこには、破壊の為の孤独な研究を続けた父の狂気が刻々と記されていた。そこに現れるゴモラザウルス。ヒジカタ隊長の射撃によって退散させるも、研究所は激しい揺れによって倒壊してしまった。
脱出を試みる隊長に、香波は父・宇野に対する心情を吐露する。GSTEという犯罪加害者の家族が、被害者の怒りを受け続けなければならない辛さ、それを償わせたかったと言う。ゴモラの巨大化実験場にたどり着いたヒジカタ隊長と香波。宇野がゴモラに殺されたのだと推測する隊長に、香波は巨大なゴモラこそが父だと言う。
エリアJN354に巨大なゴモラが出現。ダッシュマザーで飛び立つDASH。隊長も地上へと脱出した。フォーメーション・オメガ7でゴモラを追撃するDASHだが、頑丈な表皮は砲撃を受け付けない。ヒジカタ隊長に避難するよう促される香波だったが…。
カイトの乗ったダッシュバード1はゴモラの尻尾によって撃墜されてしまう。カイトはウルトラマンマックスに変身してゴモラに立ち向かった。一方、香波はゴモラに近づいていた。避難を説得するヒジカタ隊長だが、香波は疲れたと一言。彼女は死を選ぶつもりでいたのだ。それを「甘ったれるな!」と一喝する隊長。
一方、マックスは切断したゴモラの尻尾の思わぬ反撃を受けて苦戦。尻尾をマクシウムカノンで粉砕したマックスは、マックスギャラクシーを召喚してゴモラを倒すのだった。ヒジカタ隊長は、人は誰でも何かと戦っているのだと香波を諭す。
ゴモラの遺体は、フリドニア共和国が引き取ると申し入れてきた。香波は、GSTEとフリドニア共和国の繋がりを明らかにする決意を固め、初めてDASHの面々に笑顔を見せた。
解説
怪獣人気投票で第1位に輝いたゴモラが、満を持して登場の今回。尻尾が強力、地中に潜る、切られた尻尾が暴れるといった、ゴモラの特徴を最大限に生かしつつ、等身大ゴモラなどを登場させて新しいイメージを創出すべく注力した痕跡が見られる。
ただし、近作の(あらゆる意味で)濃い内容からすると、印象の薄いエピソードになってしまったことは否めない。ストーリーやヒジカタ隊長などの心情描写は非常に優れているのだが、どうも絵空事が淡々と進行しているような印象が強い。それは「ゴモラザウルス」の出自に関する不備に起因するものだろう。
今回のゴモラは、ウルトラマン第26・27話「怪獣殿下(前篇・後篇)」に登場したゴモラに比べると、設定に限れば非常に生物的なリアルさが求められている。それは等身大ゴモラが、熊の如く「ケモノ」として扱われているところに顕著だ。逆に、実験によって怪獣化したという経緯は、怪獣モノの王道としてゴモラ並のスター怪獣に相応しいものであったと言えるだろう。問題はそれらのバックにある設定だ。
「GSTE」という組織、「フリドニア共和国」という国家。ここにリアルさを感じられないのが最大の欠点である。フリドニア共和国の国家利権とGSTEの目的が今ひとつ結びつかず、浅薄な陰謀モノに堕してしまっている。そこを敢えて秘密にして視聴者にイメージ喚起を促したとしても、あまり興味を引く構造でもない。宇野が一人のマッドサイエンティストで、そこにフリドニア共和国が近づいたというのならば、不気味なイメージを喚起できるが、なまじ組織にしてしまったことで硬質感を与えてしまい、結果的に想像する余地も失われてしまった。想像する余地がないのならば、徹底的に描く必要があるのだが、30分番組では未消化になるのが当然である。ヒジカタ隊長の信念と行動力にスポットが当たっているだけに、惜しいエピソードだ。
ところで、単純にゴモラ活躍編として見た場合は、そのビジュアルに圧倒される。冒頭にも書いたが、ゴモラの基本的な能力はすべて網羅し、新たな側面を追加する形で新怪獣を創造する試みを強く感じさせる。
まずは、等身大ゴモラが登場するシーン。旧作ファンに意外性を感じさせると同時に、そのドキュメンタリー・タッチな画面作りで、リアルな生物としてのゴモラを認識させる。地中に潜る姿がどことなく可愛らしいのも良い。可愛い繋がりで行けば、ヒジカタ隊長の一撃によって退散する等身大ゴモラも非常に可愛い。
続いて、巨大ゴモラが勢い良く登場するシーンと、マックスとのバトルシーン。前者は、ゴモラの巨大感がいやが上にも強調された名シーン。後者では、初代ウルトラマン登場時のゴモラと同様、尻尾を切られ尻尾が暴れるという、ファンにとって嬉しいシーンが実現した。尻尾が切れて暴れ始めた当初は、何となく不自然な動きが気になったが、そのあと意思があるかのように振舞う尻尾に妙に納得。光線を受けても爆発せずに倒れこみ、遺体が回収されるというオチまでの流れは、「怪獣殿下」を彷彿とさせて、これまた嬉しい。
映像のクォリティは高いのだが、ストーリーの説得力に乏しい。アイデアが振るっているだけに、惜しいエピソードだ。しかし、2回以上見るとディテールが見えて俄然面白味が増す。ファンの方は是非お試し頂きたい。
オマケ
ヒジカタ隊長にスポットを当ててみたい。現時点で、実は隊長ほど振幅の広いキャラクターはいない。現在までで強烈な印象を残すのは、やはりコメディでの壊れっぷりであるが、頼れる隊長像も見逃せないポイントだ。
これまでも、的確な指示と冷静な対応が随所で見られたが、今回の「頼れる隊長像」は随一。一発で等身大ゴモラを退散させ、捻挫の応急処置は完璧。さらに優しい言葉と叱咤を使い分けた的確なカウンセリングまでこなす。
一方、ユーモアを解す男という直接的な描写はないものの、コメディ編でのノリの良さなどから、その片鱗は感じ取れる。理想の上司像の追求は確実に進められており、初代ウルトラマンに登場したムラマツ・キャップ並の、優秀さと人格を併せ持つ人物になりそうだ。