ストーリー
カイトはミズキにパスタをご馳走になる約束をし、デートに出かけていた。平和に一日が過ぎ日も沈もうかというその時、突然もう一つ太陽が出現。強力な妨害波によってガーディアンなど宇宙監視衛星からの通信も不能となった。いつまでも続く白昼、ビルの屋上に一人立つ中年の男が飛び降り、そして突如消えた!
エリーはもう一つの太陽を分析、巨大な反射板のようなものと結論付けた。太陽光を増幅させ、その増幅時に発生する妨害波が通信を麻痺させているという。その時、ビルから飛び降りて消えた例の男が、突如ベース・タイタンに現れた。ご丁寧に「シャマー星人」と記された名刺を持って…。
人間体シャマー星人はヒジカタ隊長を小馬鹿にし、友好的な宇宙人だと自称。ところが、その調子いい態度とは裏腹に、地球を支配下に置くことを宣言し、その手始めとして日本に降伏を迫った。取り押さえようとするヒジカタ隊長だが、シャマー星人は実体がない!
エリアJS301に巨大な宇宙船が登場、巨大なシャマー星人が現れた。街を破壊し始めるシャマー星人を迎撃すべく、DASHは出動する。時は午前3時だが、白昼そのものであった。攻撃を開始するDASHだったが、巨大なシャマー星人も実体を持っていなかった。攻撃を受け墜落するダッシュバード1。カイトはウルトラマンマックスに変身する。その様子を見てせせら笑う人間体シャマー星人。
シャマー星人の虚像と強力な光弾に翻弄されるマックスは、ふとエリーの分析を思い出す。宇宙に浮かぶ反射板を目指し飛ぶマックス。しかし、シャマー星人の強力な光弾に阻まれ墜落してしまう。日本の降伏を迫り、3日間待つと豪語するシャマー星人。
瞬く間に2日が過ぎ、夜が来ない街の生活はメチャクチャに。巨大なシャマー星人も人間体シャマー星人も、極度にくつろいだ様子を見せる。業を煮やしたトミオカ長官は、思わず人間体シャマー星人を見えなくしてしまえと言い放った。それを聞いたカイトは司令室の照明を消すようエリーに指示。暗くなった室内には、10センチ大のシャマー星人が!
シャマー星人を撃退するには暗くするしかない。光子エネルギーを放射し、太陽光を遮断する作戦を発案するエリー。空と地上の両面から光子エネルギー放射作戦を展開すべく出動したDASHだが、ダッシュマザーには人間体シャマー星人が潜入しており、遂行不能に。カイトはマックスに変身して、ミズキのダッシュバード1を援護。ミズキに反射装置を破壊させた。現れた宇宙船も、マクシウムカノンによって破壊された。
数日振りの夜が来て、カイトはパスタにありつくことが出来た。あなたの側に、明るいけどずうずうしい友達がいたら、夜に会ってみることをお勧めします。もしかすると、シャマー星人かも知れません。
解説
またも登場のコメディ編。コメディと言うと、第16話「わたしはだあれ?」が想起されるが、今回はまるで趣向が異なる。「わたしはだあれ?」が、およそ知性を持ちあわせていないように見える謎の生物によって、人間が極度に翻弄される様を描いて笑いを誘っていたのに対し、今回はシャマー星人のキャラクターそのものに、笑いの要素を負わせるといった構成になっている。その為、DASH側には特に奇行やヘンな言動という描写が殆どない。真剣そのもので事件に対処するDASHと、それを半ば楽観して小馬鹿にするシャマー星人のコントラストが可笑しさを生んでいるのだ。
このシャマー星人のキャラクターの完成度は、完全に演じた佐藤正宏氏の力量に拠るもの。不必要に明るく、他人を完全に見下し、非常にずうずうしい…。一言で言えばとってもイヤなヤツなのだが、コロコロと変わる表情の面白さや、あの馬鹿笑いによって、イヤな感じをあまり受けない秀逸なキャラクターだ。「ウルトラマンダイナ」のミジー星人に匹敵するコメディキャラだ。
先に「真剣そのもので事件に対処するDASH」と書いたが、何故かヒジカタ隊長だけは、シャマー星人の言動に巻き込まれて翻弄され続ける。いや、本人は真剣だと感じさせる演技がイイのだが。最も凄まじいのは、シャマー星人を捕まえようとして派手に転倒するシーン。宍戸開氏体当たりの演技が、真剣だけに非常に笑える。隊長がここまでコメディアンを演じるシリーズは、ウルトラ初ではないだろうか。それほどヒジカタ隊長は、硬軟のメリハリが効いたキャラクターとなりつつあるのかも知れない。
さらに注目は、カイトとミズキが「報告書を手伝う」「パスタをおごってもらう」という、公私共に深いパートナー同士になっていること。鈍感なカイトと、積極的でありながら思わず身を引いてしまうミズキという2人が、確実に接近しているのを感じさせるやり取りだった。物語の連続性を抑制し、バラエティに富んだエピソードを畳み掛けるというシリーズ構成の中にあって、2人の関係は連続性を感じさせる貴重な要素だ。
今回は全編にわたってシャマー星人がヘンな行動をとる為、その描写を支える特撮もコミカルなものが大半か、と思いきや、意外と正攻法な画面作りばかり。例えば、人間体・巨大体共に、虚像であることを示す「すり抜け」の描写は、スロー再生してみれば分かるが、とても丁寧に合成されている。CGで描写された反射装置とその破壊シーン、SF映画の規模を思わせる巨大な宇宙船の飛来シーン、シャマー星人の光弾が街を破壊するシーン。どれをとっても、特撮でコミカルな味付けをしているシーンは一つもない。極めて正攻法に「侵略宇宙人」扱いしている。
即ち、このエピソードがコメディとして成立し得たのは、「シャマー星人(とヒジカタ隊長)の演技がコミカルだったから」なのだ! 恐るべし、佐藤氏! 恐るべし、シャマー星人のアクターさん!
ちなみにエピローグのナレーションは、初代マンやセブンに散見された、エスプリの効いたナレーションとイメージがダブる。コメディを締めくくるに相応しい一級のエピローグだ。
オマケ
いつもはエリア「JT」で事件がキャッチされるのだが、今回はエリア「JS」が恐らく初登場。推測だが、「JT」とは「Japan Tokyo」ではないかと私は思っている。したがって、今回は東京ではなく「埼玉」や「静岡」あたりにシャマー星人が出現したのではないだろうか。マックスが墜落するシーンに使用された航空写真から分かるかも知れないが…。
ただ、いかにも江戸っ子な花火師が居たり、わざわざベース・タイタンと離れたところに巨大虚像を出現させるメリットがない為、この説は誤りかもしれない。