ストーリー
一週間前、南極で巨大な地震が発生。生じたクレパスにより、10万年以上前の氷層に氷漬けになった美女の遺体が発見された。ニーナと名付けられたそれはUDFで調査されることになり、ベース・タイタンに到着。ヨシナガ教授がDNA解析を行ったところ、人類と同じ構造であることが判明した。男性隊員はその美しさでデレデレに。エリーの解説によれば、10万年前の南極に人類が到達していたという事実はなく、世紀の発見だという。
その折、南極の海底を移動する怪獣エラーガが確認された。タスマニア島に向かって北上するエラーガを警戒したUDFオーストラリア支部は、直ちに迎撃を開始し、これを撃破する。ミズキはニーナとエラーガの因果関係を疑う。そこに現れたコバは、思わず冷凍カプセルに触れてしまう。痛みを感じつつも茫然とするコバ…。
その後、海底地震の震源が移動していることを観測したDASHは、エラーガ生存の可能性を考慮し、5時間後の推定海域に急行した。推測どおり、エラーガは海底に出現、攻撃するDASHだったが、あと一歩で撃破となるところを、謎のテレパシーで茫然自失となったコバのミスにより失敗する。
ベース・タイタンで再度作戦を立てるDASH。ヒジカタ隊長はエラーガが日本を目指していると確信していた。一人思いを巡らすコバは、ニーナのテレパシーに導かれ、その復活を目の当たりにする。コバの遺伝子より人類の記憶を読み取ったとするニーナは、ダッシュアルファを駆ってベース・タイタンより脱してしまう。その頃、エラーガも思いのほか早く日本に出現する。岬に立つニーナはそんなエラーガを見つめて微笑む。
直ちに迎撃を開始するDASHは、短時間で撃破を果たすが、ニーナの送ったパワーにより、強力な怪獣となって蘇生! コバはそのパワーを感じ、ダッシュドゥカで海岸に急行する。銃口を向けるコバに、ニーナは驚愕すべき事柄を語りだした。10万年前、ニーナたちは人類に考える力と物を作る力を与えたが、その力を誤った方向に活用した人類を、エラーガで抹殺するというのだ。ニーナは人類を失敗作と称した。ニーナは撃てないコバをよそに、エラーガにパワーを送り続けた。
一方、ビルの屋上に取り残された子供を救ったカイトは、ウルトラマンマックスに変身。だが、パワーアップし続けるエラーガに防戦一方となり、苦戦を強いられる。勝利を確信するニーナだったが、銃声が鳴り響き、その場に崩れ落ちる。コバが意を決して撃ったのだ。
パワーの供給を停止されたエラーガは、マックスギャラクシーを召喚したマックスによって、一撃の下に爆散した。微笑みつつ消滅するニーナを見つめるコバは、自分たちは失敗作なのかという念にとらわれる。そんなコバに、カイトは「いくらでもやり直せばいい。人類が失敗作だなんて思わない。」と告げるのだった。
解説
今回は、非常に「ウルトラセブン的」なエピソードである。セブンに散見されたパターンとして、真偽はともかく地球人の存在自体が疑問の中に晒されるというものが挙げられるが、今回こそまさにそのパターンに当てはまるものだと言えよう。
そのパターンたらしめるのは、勿論ニーナの存在である。地球人に思考力と製作力を与えたという壮大な設定は、凍結状態での登場というミステリアスなキャラクターと相まって、かなりの衝撃度。ところが、その壮大な設定は具体的なビジュアルで示されることなく、ニーナの独り言のような印象を残して、突如コバの銃弾の前に潰える。
実は、この描き方こそが「ウルトラセブン的」だ。例えば、セブン第17話では、古代地球の地底都市だったかも知れない地下建造物が登場するが、それは追求されることなくウルトラ警備隊によって完全に破壊されてしまう。しかも、そのドラマの落とし処は、その方面に求められることはなく、薩摩次郎というキャラクターが助かるか否かという点に収束される。また、セブン第42話では、海底に住むノンマルトが地球の原住民かも知れないという疑問を呈しつつも、海底資源についても当然地球人に権利があるとしてノンマルトを殲滅してしまう。ここでは、ノンマルトが原住民かどうかということは、ウルトラセブンですら真実を確かめる術を持たないという現実を示して終わってしまう。
本エピソードも、果たしてニーナが地球人の遺伝情報を改変し、人類の創造主として存在したのかということについては、結局語られない。しかも、コバが迷いつつも自らの独断(否、マックスの危機を救う為の英断と言うべきか)でニーナを殺めることで、その答えを永遠に閉ざしてしまうのだ。直後、人間の遺伝子がニーナに似せられたという説がカイトによって説明されるが、これは逆の見方をすれば、ニーナ自体が古代の地球人だったかも知れないということも出来る。つまり、解釈の余地は様々に残されるのである。
ここで、逆にセブン、特に前述のノンマルトのエピソードとは異なるポイントを挙げてみよう。それは、重苦しいテーマを追求することなく、ニーナに魅せられたコバの葛藤が中心となった、ある種爽やかさすら感じられる雰囲気であろう。これを、テーマを殺したと見るか、それとも一話完結スタイルを貫徹すべくバラエティに富んだエピソードとして魅せたと見るか、それは実際にご覧になった方々に委ねるべきだが、私は後者の見方をしたい。言うなればニーナは、コバの内面とDASH隊員としての意志を魅力的に描くべく用意された、ドラマを生かす為の方便であり、SFマインドをくすぐるべく、壮大に味付けがなされた…、そう考えるのが自然ではないかと思われる。
ところで、今回も魅力的なシーンが色々と登場した。凍結状態のニーナは抜群のイメージ。UDFオーストラリア支部の無骨な戦闘機も、リアルなパイロットと相まって非常にカッコ良かった。エラーガは、ニーナのインパクトに負けることなく、その弱さと強さのギャップで楽しませてくれた。特に、パワーアップ後のデザインは、かなり攻撃的なテイストで、マックスオリジナル怪獣の中でも一二を争うカッコ良さである。
特筆すべき魅力的なシーンは、やはりコバ関係にとどめを刺す。冷凍室に触れた時の表情や、窓に残った指紋は一級のSFテイスト。ダッシュドゥカでの出動シーンも、ウルトラにしては反則と思えるくらいケレンに溢れたシーンだった。無論、ニーナを苦悶しながら打ち抜くシーンも素晴らしい。ニーナが消滅の瞬間ふと微笑むのを見たとき、市川森一氏的な物言いをすれば「コバも十字架を背負った」のかも知れないと思える迫力があった。
オマケ
今回のオマケは、カイトにスポットを当ててみたい。
というのも、ふと気になったのが、コバに対する言葉遣いだからである。これまでどちらかと言えば、コバに対しては先輩的な接し方をし、言葉遣いも敬語に近いところで発言していたのだが、今回はタメ語に近くなっている。流れとして不自然かと言われれば、特にそんな感じもしないのだが、何となく気になったのだ。
それと、変身前に怪獣を見上げる視線。これが素晴らしかった! 帰マンの郷、タロウの光太郎、レオのゲンを想起させる、決戦前の決意を感じさせる眼差しである。これぞウルトラ! と思わず叫びたくなる隠れた名シーンだった。