ストーリー
突如出現したパラグラーは、ピグモンの呼びかけでおとなしくなった。ミズキはサラマドンとパラグラーが島を守っていると気付く。マックスは戦況が落ち着いたのを見てカイトに戻るが、カイトは倒れてしまう。マックスが飛び去ったのを見計らってレッドキングは地中に潜り、再びパラグラーに戦いを仕掛けた。
一方UDFパリ本部では、島が日本に激突し場合、広範囲にわたる被害が予想される為、サブジェクト・ファントムの爆撃を決定した。爆撃は最終兵器コスモ・ディーバにより、日本近海のポイントPW625で行われることとなった。発射時刻は16時45分。今から1時間後だ。ショーンからダッシュバード2の修理完了の報告を受けたヒジカタ隊長は、コバとショーンにカイトとミズキの救出を命ずる。命令違反だとトミオカ長官は語気を強めるが、長官は密かにDASH全員の生還を強く望んでいたのだった。しかしそれは、エリーのはじき出した数値によれば、成功率3%の作戦だった…。
その頃、カイトはピグモンに介抱されていた。そこへレッドキングの咆哮が。カイトはレッドキングの元へ向かおうとするが、ピグモンに止められる。ピグモンが精神に直接話しかけてくることに驚くカイト。実はピグモンは宇宙人が人類とコンタクトをとるべく送り込んだ生体コンピュータであり、島の人々に文明を伝えたのだった。古代、レッドキングが島の文明を破壊、ピグモンのうちの一体が、身を挺して島にレッドキングを封印したのだという。
レッドキングとパラグラーの死闘が繰り広げられ、爆撃まであと30分となった。ミズキは島に着陸したコバとショーンに合流。ショーンにダッシュバード1の修理を頼んでカイト救出に向かった。ダッシュバード1のエンジンを回復させ、カイトの信号弾を見て生存を確認したコバとショーンは、ただちにダッシュバード2で進藤と共に島を脱出する。ピグモンに脱出を呼びかけるカイトだが、ピグモンはやるべき事があると告げて去っていった。
レッドキングとパラグラーの死闘はなおも続き、ついにパラグラーが倒れる。限界と見たトミオカ長官は、ヒジカタ、コバ、ショーンに退避命令を下す。カイトとミズキの生きる力を信じて、ヒジカタはやむなく退去を決断する。パラグラーを倒したレッドキングは、次にピグモンを襲うがカイトによって助けられる。ミズキのピンチにカイトはウルトラマンマックスに変身。マックスは超スピード戦法でレッドキングを翻弄。爆弾岩石攻撃の尽きたレッドキングが咥えた岩石をマクシウムソードで破壊すると、レッドキングはその場に倒れこんで気絶してしまった。マックスはレッドキングを宇宙空間へと運び去り、マクシウムカノンで粉砕した。
爆破1分前。脱出を急ぐカイトとミズキの前にピグモンが現れ、別れを告げた。ダッシュバード1で脱出する2人。ピグモンが石像へと姿を変えると、サブジェクト・ファントムは消失、コスモ・ディーバは発射中止となった。ヨシナガ教授は言う。「あの島と同じように超古代文明は、自らこの世界から消える道を選んだのだとしたら、これは我々文明への警告かも知れません」。DASH全員の生還を喜ぶトミオカ長官。エリーはモニターに映る5人の笑顔に、笑顔で応えた。
解説
「怪獣無法地帯」の前編を受けた後編は、ウルトラマンA「銀河に散った5つの星」やウルトラマンレオ「レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時」に見られるような、味方を見殺しにしなければならないシチュエーションで盛り上げるタイプのストーリーとなり、単なる「怪獣無法地帯」の拡大解釈に終わらない懐の深さを見せた。
この、爆破が迫るという状況は、ウルトラシリーズでは前述の2本のほかにも度々採用されており、大きな危機感とそこからの脱出のドラマの相乗効果が盛り上がりを約束するのか、ことのほかシリーズの目玉的エピソードでよく見られる。前述の2本では、何とウルトラ兄弟を地球人の兵器が爆撃せざるを得ないという状況が創出され、ドラマ的な盛り上がりは最高潮に達していた。
今回は、前編にも増して、怪獣たちのキャラクター性が重視されていた。まずは前回のラストに登場したパラグラー。体側の皮膜が伸縮自在なのにも驚かされたが、皮膜を縮めることによって、レッドキングとの格闘シーンが激しさを増し、いわゆる「怪獣プロレス」をしっかり堪能することが出来た。さらに、パラグラーが倒されたときの目の電飾が、静かに消え行くシーンが初期ウルトラを否が応でも想起させ、「生物的にリアルでない」表現が、却って生物的な表現に見える映像マジックを見ることができる。初期ウルトラの伝統が生きたシーンであろう。次にスター怪獣としてのレッドキング。やはりこの怪獣は、凶暴そのものというキャラクター付けがよく似合う。今回も散々暴れまくってくれた。サラマドンやパラグラーを倒した「王者」レッドキング、前回はマックスをも翻弄する技量を見せたが、性質を見抜いたマックスにはまるで歯が立たないというシチュエーションが用意され、レッドキングの知能レベルを見る者に直感的に理解させる演出が素晴らしい。岩石攻撃が尽きたときの効果音とも相まって、初代マン登場時から見られた、何となく間の抜けた凶暴な怪獣というイメージが完璧に再現された。レッドキングが好きなファンにとっても納得のレッドキングだったと思う。
さて、今回はトミオカ長官とヨシナガ教授の「科特隊OBコンビ」のシーンが多く、また名シーンも飛び出した。まずは何と言ってもトミオカ長官の爆撃命令と、それに続く「頼んだぞ」であろう。サブジェクト・ファントムの爆撃命令は、歴代シリーズで頻繁に見られた「現場にとって理不尽な命令」の典型である。黒部氏をキャスティングしたこの長官が、このような命令を冷静に下す姿にまずは衝撃を覚えた。しかし、その後のヒジカタの命令違反に対して黙認どころか密かに応援する姿が非常に微笑ましく、やはり理想の上官像が追求されているのを見て妙に安心してしまった。続いてヨシナガ教授。普段学術的な言動が多く、感情をあまり表出しない印象が強かったが、トミオカ長官の「命令違反だぞ」に対して「望んでたことなんじゃありませんか?」と返すあたりからキャラクターに変化が。またこのセリフからは長官との長い付き合いが感じられ、旧来からのファンにニヤリとさせるのがウマい。さらにカイトとミズキの救出が絶望視されたときの涙は、一種異様とも言える印象的なシーンで、ヨシナガ教授が単なるアナリストではなく、DASHにとっての母性とも言える存在であることを示した。DASHひいてはUDFは、その規模こそ大きいが、ウルトラマンマックスという物語で描かれるそれは、初代マンの科特隊や帰マンのMATが見せてきた「家」と同種なのかも知れない。
オマケ
今回の注目は何と言ってもエリーの笑顔。モニターに映る面々の笑顔を真似ながら笑顔を作るシーンが素晴らしい。人間型アンドロイドとしてのイメージが上手く演出されている名シーンだろう。
それからショーンのダッシュバード修理シーンは、コミカルな味付けがなされながらも、短時間で2台のダッシュバードを修理してしまう手腕を見せ付けた。かつて科特隊のイデ隊員が、ドジでマイペースながらも優秀な技術者だったことを想起させる。「こんなこともあろうかと…作っておきました」がマックスでも見られるのを期待したい。
そして、コバ。ピグモンにこだわる進藤に、機体をわざと傾けて一撃を加えるシーンは、コバの性格をよく現わしたシーンとして記憶に残る。こういった特撮ドラマならではのシーンが嬉しいところだ。