ストーリー
太平洋上、日本時間8月20日6時34分のこと。突如海面に閃光が走り、謎の島「サブジェクト・ファントム」が出現。ただちにDASHに調査指令が下った。その過程でカイトは怪獣の文様が描かれた古代の遺物らしきものを発見する。カイトとミズキは島への残留・調査続行となったが、通信不能に。そんな二人の前に、珍獣ピグモンが出現する。
一方、コバとショーンが持ち帰った岩石のサンプルを分析するヨシナガ教授は、太平洋上に浮遊する島は高度な超古代文明に関連するものではないかと推論。島の岩石は地球上に存在しないもので、一定の熱量を加えることにより爆発するものだった。さらに、島で発見された石版の文字を解読した結果「大地はおごれる民に 牙を剥かん」の文言が…。
その頃、島には別の人間も入っていた。考古学者の進藤とトレジャーハンターの新見だ。二人は古代遺跡建造物とピグモンの石像を発見、ピグモンの存在を確信した進藤は捜索を始める。
ピグモンと行動を共にするカイトとミズキの前に、巨大な怪獣サラマドンが出現するが、ピグモンはサラマドンを鎮めて追い返してしまう。そのピグモンを追ってきた進藤と新見は、カイトとミズキを襲ってピグモンを奪取する。ところが、ピグモンの危機を察したサラマドンが追いかけてきた。新見は一人ヘリで発つが、サラマドンによって撃墜、撃墜されたヘリがピグモンの石像を破壊したその時、岩山の中からレッドキングが出現した!
レッドキングは明らかにピグモンを狙っていた。サラマドンとレッドキングの激突! しかし、サラマドンはレッドキングの怪力の前に力尽きてしまう。島は日本に向かって移動を開始した。直ちに出動した隊長、コバ、ショーンは、フォーメーションβ3でレッドキングを攻撃。カイトもウルトラマンマックスに変身してレッドキングに立ち向かう。怪力と岩石爆弾に苦戦しつつも、何とかレッドキングの活動を停止させたマックス。しかし、今度は怪獣パラグラーが出現する!
解説
予想を覆された前後編の前編。前編と言いつつ、4体もの怪獣が登場するという、とんでもない豪華版でもある。その上、ピグモンとレッドキングという、初代マン第8話「怪獣無法地帯」を想起させるスター怪獣の登場だ。前編でありながらも、各怪獣を見上げるアングルの多用による巨大感の演出、非常にリアルなヘリの墜落シーンなど見せ場が満載で、スタッフの底力を感じさせる出来栄えだ。
今回は、前述の「怪獣無法地帯」を彷彿させる設定が随所に見られる。まず、亜熱帯植物が群生する島。「サブジェクト・ファントム」と名付けられたこの島は、実は古代遺跡を擁した謎の浮遊島である。初代マンでは火山噴火に伴う生態系の激変した「多々良島」が舞台だった。続いて、次々と現れる怪獣たち。サブジェクト・ファントムでは、ピグモン、サラマドン、レッドキング、パラグラーが登場。多々良島では、ピグモン、マグラー、チャンドラー、レッドキングが登場。それぞれの扱いは異なるものの、珍獣、島の生態系を体現する怪獣、凶暴な恐竜型怪獣、翼に似たものを有する怪獣というラインナップは近似している。
さて、そんな「怪獣無法地帯」と今回のエピソードだが、ストーリー的にはかなり異なるものだと言えるだろう。「怪獣無法地帯」では、生態系が混乱した孤島から、測候所の職員を救出するというシンプルなストーリーが展開されたが、今回は古代の高度な文明が関わる一大スペクタクルとして展開される。一番印象を異にするのはピグモンで、初代マン登場時には、単なる知能の高い「動物」に過ぎなかったが、今回は島の守護としての存在を匂わせている。ピグモンを守るサラマドンという構図も、「怪獣無法地帯」とは完全に分離している。実はここに大きな仕掛けがあり、ピグモンを守るサラマドンが、レッドキングに倒されることに対して動機付けが成されているのだ。「怪獣無法地帯」は、そのタイトルが示すとおり、怪獣同士が本能の赴くままにバンバン激突する恐ろしさが表現されていた。しかし、動機付けが行われた今回はドラマ的に深くなったものの、怪獣という超越した存在の神秘性がやや薄くなってしまった感がある。
怪獣の神秘性の欠如。それが「怪獣無法地帯」と今回の最大の相違点にほかならない。ところが、古代文明の存在を描くという手段を用いて、ストーリー面で神秘性を匂わせるという方向性を示した。これには色々と考えさせられた。初代マンが登場した時代には、まだ怪獣に対する畏敬の念といったものが、視聴者にも少なからずあったのではないか。しかし現在では、怪獣はキャラクタライズされ、その内面や出自が描写されなければ納得しない時代になった。そこで、次々登場する怪獣たちに動機付けがなされ、それによる神秘性の欠如を補完すべく、ストーリーに神秘的な要素を配する…。これらはあくまで推測だが、さして何の動機もなく怪獣が暴れたマックス第1話よりも、今回の方が面白いと感じるであろうことからも、その見方は強ち間違ってはいないように思える。
単なるリメークに堕さないストーリー作りの成功例として賞賛を浴びるべきか、否か。その結論は後編を待つことにしよう。
オマケ
マクシウムソードの使用法が印象的。地面に投げつけ、地中をえぐってレッドキングを陥没溝に落とすという荒業を披露。島の組成が爆発性岩石によるものという設定が繰り返し語られているため、落ちたときの爆発にも説得力があり、迫力あるシーンとなった。レッドキングの尻尾の演技にも注目したい。
ピグモンの鳴き声は、初代マンで使用されたものの上に、新たに声優(?)による鳴き声がオーバーダブされている。純粋に動物的だった初代マンのピグモンに比べ、より擬人化されているような印象がある。ちなみに、レッドキングの「ギャァーオゥーー」という鳴き声は初代そのもの。しかし、せせら笑う(?)シーンなどでは別の鳴き声が使用されている。これには少し違和感があるが、それは初代マンの印象があまりにも強いからだろう。
ダッシュマザーがハンガーでダッシュバード2号を回収するシーンは、非常にリアルでインパクトある映像だった。戦闘機と母艦の正しい姿を示したファン納得の設定だ。トイが欲しくなってしまう…。