ストーリー
深夜、エイリアンスキャナに反応が。位置はJT365、競技場だった。ミズキとカイトはダッシュアルファで現場に急行する。現場ではスラン星人の怪光線が次々に作業員や警備員を消滅させていた。エリーは、カイトとミズキのコンビがトラブルを発生させる確率を99.95パーセントと分析する…。
調査を続ける両隊員は超高速で動く警備員に戦慄する。その正体はスラン星人だった。ダッシュアルファで攻撃を開始するカイトだったが、高速で動き超能力を使うスラン星人に翻弄され、競技場に偽装していた宇宙船の内部に囚われてしまう。DASHのヒジカタ隊長以下は直ちにダッシュマザーで出撃した。
宇宙船の中で気が付いたカイトとミズキは、スラン星人と対峙。スラン星人は地球を第二の故郷とすべく、地球を支配しようと考えていた。スラン星人は地球を汚し続ける人間を批判し、そのバランスを取り戻すことができると豪語する。カイトは人間には過ちを正そうとする心があると反論、脱出のチャンスをうかがっていた。一方、カイトとミズキが内部に囚われていると知ったDASHは宇宙船の兵器のみに攻撃を加える。機動力を失ったスラン星人の宇宙船から、カイトとミズキはダッシュアルファで見事脱出! 隊長は二人を信用していたのだ。
しかし、宇宙船を失ったスラン星人は巨大化してダッシュアルファを襲撃、街を破壊しはじめた。ダッシュバード2を出すコバとショーン。スラン星人の超高速運動を見破るものの、怪光線に撃たれてしまう。カイトはウルトラマンマックスに変身し、ダッシュバードを救った。スラン星人とマックスの激しいバトルが始まった! スラン星人の高速攻撃に一時は苦戦したものの、マクシウムソードで形勢逆転したマックスは、マクシウムカノンでスラン星人を粉砕した。
解説
マックス初の侵略宇宙人が登場。初期エピソードならでは、またはマックスならではと言うべきか、特にヒネリのないストレートな暗躍モノで、ダッシュアルファの性能を存分に堪能することが出来る。
特にヒネリがないというのは、ストーリーの単純さというよりは、スラン星人のキャラクターの浅さに起因する。「高速宇宙人」という異名で登場しただけあって、随所に高速移動の描写が散りばめられ、その特殊能力の面白さを印象付けてはいる。ただ、侵略目的が「人間に成り代わって地球の平衡を取り戻す」としているわりには、行動がまるで伴っていないように、詭弁を弄する性悪宇宙人的な部分が目立つのだ。
この宇宙人のキャラクター性は何なのかと頭を巡らせてみると、タロウに登場したメフィラス星人に行き着いた。タロウ版メフィラスは、初代ウルトラマンと対峙したメフィラス星人の溢れんばかりの知性を、全て捨てて登場した姑息な宇宙人として登場した。この知性と相反する詭弁家の面を、このスラン星人は持っているのである。すなわち、セブンに登場するタイプの侵略宇宙人に外見が似ていながら、性格的にはタロウに登場する侵略宇宙人的、といった見方ができる。
つまり、このタイプの敵自身にドラマは生まれない。ということは、それに対峙する側のドラマが重視されるということになる。タロウはまさにそこを狙っていた。今回は、DASHの結束の高さを存分に描き、宇宙的視野を振りかざすスラン星人と対峙させることで、ドラマティックに語ろうとしているのではないだろうか。それは、ヒジカタ隊長の宇宙船への攻撃とカイト&ミズキの脱出のチャンスが、通信不能の状態で見事にシンクロしていく様からも伺えよう。ダッシュアルファの鮮烈な変形シークェンスも手伝って、爽快感溢れるシーンとなっていることも特筆点だ。実は、ここにエリーによるデータ重視の悲観的予測を見事に裏切る、カイトとミズキの名コンビ振りが盛り込まれ(コバの「的中かよ!」は的を射ていない)、宇宙的視野での不測、数値的観測での不測という二重の不測をも描いている。測り知れない熱いチーム、それがDASHだ。
今回のマックスのバトルは、帰マン以降のシリーズで定番となった、勝機溢れる前半戦(BGMが主題歌!)~敵の特殊能力による形勢不利~タイマー点滅から逆転 が鮮やかになぞられていて、ファンとしては嬉しい。特に、マクシウムソードで幻影を引き裂いた後の「間」は、西部劇や時代劇を思わせる絶妙の「間」で、ヒロイックなシーンに説得力を与えている。今回はオープン撮影とセット撮影のカット割が非常にうまく、気を付けて見ないと区別がつかないほどで、スピード感のある格闘と巨大感のある構図が両立されていた。
オマケ
深夜業務が二度目となるDASHだったが、エレキングの時と比べ、体勢作りが格段に良くなっていた。「今回は大丈夫」と言わんばかりの自信に満ちた隊員たちの表情が笑える。きちんと過去のエピソードを踏まえているところには大変好感を持った。カイトだけミスっているところが何とも微笑ましい。
ダッシュアルファの高空落下シーンは、ウルトラセブンの「700キロを突っ走れ!」を彷彿させる。また、建造物に偽装する宇宙船というのは、セブンに登場したメトロン星人のものが印象的だ。今回は、CGによってスタートレックに登場しそうなリアルな外観を持つ宇宙船が登場している。