ストーリー
夜のエリアJT442に突如怪獣エレキングが出現し、街の電力が次々と奪われた。デンジャーレベル5が発令され、DASHは直ちに出撃、フォーメーション・α3で攻撃を開始しようと試みたがエレキングは消滅してしまい、エリア内で捕捉不能となってしまう。実は、エレキングは小さくなってある女性の部屋に隠れ、卵を産み落としていたのだ。
一夜明けて、DASHではハイパーアンブレラと呼ばれる巨大なデジタルスキャナでエリア全体をカバーし、エレキング消失地点を特定する作戦を立案。その夜、エレキングはエリアJT552に出現する。深夜の出動は隊員たちにちょっとした混乱を呼ぶ。エレキングは次々と電力を奪って消失。DASHは直前にハイパーアンブレラ展開に成功し、消失地点をエリアJT257-Dに特定することができた。
さらに夜が明け、DASHは該当エリアの捜索を始めた。ミズキが600-B3に反応を確認。そこは、単なるアパートであった。反応のある一室から出てきたのは出勤前の一人の女性。カイトはふと覗いた彼女の部屋で犬の写真を目撃、女性に腕を掴まれたカイトは鋭い痛みを覚える。女性の名は葉山美宇。ごく一般的な市民だった。その美貌に参った男性隊員たちは疑いを持とうとしない。
その夜、カイトは写真に写っていた犬が美宇の元から逃げたのを見て、美宇への疑いを確信した。カイトは腕をつかまれたとき、強力な静電気で痣を作っていたのだった。カイトはミズキと共に、美宇の追跡を開始する。美宇はエレキングを巨大化させて昏倒。エレキングは街の電気を奪い、ベース・タイタンの電力をもダウンさせてしまった。ミズキのピンチに、カイトはウルトラマンマックスに変身!
マックスはエレキングの長い尻尾と放電攻撃に一時は苦戦するも、マクシウムカノンで見事エレキングを撃退。エレキングの生んだ卵は、美宇の部屋で密かに消滅した。
美宇は結局何も覚えておらず、宇宙から飛来したエレキングが、美宇の孤独な心につけ込んで操っていたらしいと結論づけられた。カイトはお見舞いとして美宇の飼い犬「タロー」を届けた。そんなカイトに、負傷したミズキが見舞ってもらえないと怒る。それを見たエリーは密かにジェラシーという感情のデータを収集した。
解説
雑誌等で、今回に関して「多少ヌルい展開を試みた」と公言した金子修介監督。いざ放映されてみると、全くもってその通りの展開が待っていた。
「ヌルい」という言葉が適切かどうかは置いておくとして、本エピソード全体に流れるある種のおおらかさは、特に初代ウルトラマンが好きなファンにとっては、非常に懐かしい雰囲気として映ったはずだ。ディープでドラマ重視のファン(もちろん私もそうだ)は、初代マンがおおらかさに包まれたシリーズだとは認めないのが通例だが、それは変化球的なエピソードのインパクトの強さがそうさせているのであって、例えば「海底科学基地」や実相寺監督の「真珠貝防衛命令」、一大スペクタクルの「怪獣殿下(前後編)」などは娯楽性に徹したおおらかなエピソードである。そういった娯楽性に富んだエピソードの雰囲気が、今回は漂っているのだ。
今回も、随所に過去シリーズのパロディまたはオマージュが見られる。冒頭、ダッシュマザーが発進するシークェンスには、かなり長い時間が割かれており、あの基地のリフトを上昇していく様は、セブンのウルトラ警備隊出撃シーンを思わせる。セブンにおけるウルトラホーク発進シーンも、かなり丁寧に長い尺を使って描写されており、メカファンには嬉しいシーンだ。
もう一つの強烈なパロディ・シーンは、深夜の緊急出動時の隊員たちの慌てぶり。あれは明らかに初代マン「空の贈り物」の1シーンを元にしている。ちょっと眠そうな隊長や枕を抱えたショーンがいい。「空の贈り物」では、ショーンと同じ格好をイデがしており、ムラマツキャップはユニフォームを前後逆さまに着るというとんでもない行動をとる爆笑シーンであった。今回はそこまでヘンなシーンではなかったが、各隊員のアドリブっぽい掛け合いが微笑ましい迷シーンとなった。
今回の特徴として、全編にエリーがフィーチュアされているという点が挙げられる。見た目が完全に人間型であるため、アンドロイドという役柄を表現しきれていなかった前回に比べ、論理的思考でパターン化された行動と機械的な仕草によって、よりアンドロイドであることをアピールすることに成功している。「論理的思考を持つ者と、感情的思考を持つ者がすれ違うところに可笑しさを生じる」という構図は、古くはアメリカのTVドラマ「スター・トレック」から度々描かれている題材で、SFドラマに深みを与えることができる重要なファクターである。このシチュエーションを取り入れたことで、DASH内部の描写がユーモアに満ちたものになる期待が持てる。
ところで、第2話にして早くも過去シリーズの人気怪獣が登場したわけだが、その造形や描写を見ると、かなりの高水準で旧来のファンを裏切らないものだったと言えるだろう。尻尾を巻きつけたり、縮小・巨大化シーンが美しかったり、放電の合成が丁寧だったりと、挙げれば色々とあがってくるが、とにかくエレキングのイメージを崩さない見事なリメイクぶりだったと評価したい。「美女が操る」というシチュエーションが、今回「美女を操る」という構図に大転換されたのには驚いたが、それが逆にエレキングの神秘性を高めていて、とても好感が持てる。
マックスとエレキングのバトルは、セブンのバトルに準じた構成ながら、初代マンのバルタン戦を思わせるナイトシーンによって、その幻想性を際立たせる。マックスの電飾はかなりの光量を誇るようで、ナイトシーンの映え方は抜群だ。切断武器であるマクシウムソードが角を飛ばし、光線技であるマクシウムカノンが止めを刺したのが、丁度セブンの戦い方と逆なのも面白いところ。カイトの初変身シーンも見物だ。
オマケ
カイトの変身シーンは、80以来の「等身大で一旦姿が変わり、あとから巨大化」というパターン。巨大化時にセブンの変身音(を加工したもの)が使われており、最近のウルトラの中では結構新鮮な変身シーンだ。
カイトは既にミズキとタメ口をきいている。この構図は「ダイナ」のアスカとリョウを思わせて興味深い。