またやられました!
バランスがメインと思いきや、ナーガがメイン...と思いきや、なんと前回獲得したチームワークを描くのがメインだったという、見事なズラシが効いた一編。
内容もシチュエーションコメディでありながら、意外にシリアスムードだったりと、ごった煮のような楽しさに溢れていました。
なお、劇場版のプロモーションとして、仮面ライダーエグゼイドもゲスト出演。こちらは特にストーリーに絡まない顔見せ程度でしたが、それはそれで「キュウレンジャー」にとっては適切だったのではないかと思います。
トゥーミー
今回のダイカーンは、誕生日をことごとく奪って自分のものにするという能力を持つトゥーミー。ネーミングソースは「Happy birthday to me」というわけで、極めて自己中心的な主義を振りかざします。
基本的には人々に心理的なダメージを与えるというオーソドックスなタイプの怪人で、「宇宙刑事シャイダー」の不思議獣あたりとオーバーラップするわけですが、こちらは圧倒的にコミカルなので、やはり高い地位にある者が愉悦を感じつつ人々を圧迫している...というイメージが自ずと強調されています。解放がテーマの「キュウレンジャー」ならではですね。
デザインには硬質感があり、他の生物的なダイカーンとは好対照を為すロボット型となっています。キュウレンジャー自体が有機物系と無機物系の混成部隊なので、ジャークマター側のバラエティも既に保証されているといったところでしょうか。統一感よりも各星系の個性の方に重点がおかれているわけですね。
巨大戦はヒカエオローで自ら巨大化しての展開。一方でモライマーズの攻略もしなければならなかったので、「まとめてしまった」巨大戦が逆に得難い迫力を出していました。まあ今回の巨大戦は、ストーリー上の位置づけではオマケですが、こうして印象に残るシーンを作り出すパワーの漲り具合は素晴らしいですよね。
イカーゲン&マーダッコ
前回、顔見せ程度に登場した「刺客」が、今回はその実力の程を遺憾なく発揮しました。攻撃が当たらない、あるいは無力化されるという凄い能力を有した二人ですが、軟体生物をモチーフとしたデザインとネーミングによくマッチしています。ショウ・ロンポーが即時撤退を命じるほどの戦闘力で、戦場をあっという間に掌握する描写には、かなりの恐ろしさが感じられました。
トゥーミーと協力関係にあるわけではないようで、それぞれが別の目的を持って行動していましたが、結果的にバランスを囮としてトゥーミーを誘き出す作戦は、トゥーミーを出現させたまでは良かったものの、結果的にイカーゲンとマーダッコの二人によって失敗することになります。この乱戦・混戦ぶりが、事態の混迷を見事に描き出していて、正にアクションによるストーリーテリングを実践していました。
スペースイカデビル
イカーゲンに間違えられる(!)ショッカーの幹部怪人。エグゼイドを登場させるための「方便」で、ストーリー上の必然はありませんが、関智一さんのコミカルな口調が映えて、場面を喰ってしまいましたね(笑)。登場の理由も、何故「キュウレンジャー」の世界に現れたのかも全く説明されず、本当にただ出て来ただけという潔さも凄い。年々、ライダーとのコラボが単純なサービスになっていきますが、このスペースイカデビルのバックボーンの薄さが、今シーズンのコラボを象徴していたように思います。
仮面ライダーエグゼイド
スペースイカデビルの出現で作戦に支障を来したラッキーが、ショウ・ロンポーに請うて「たまたまそこにあった」というキュータマを貸してもらい、出現させたのが仮面ライダーエグゼイドです。キュータマは便利だ...(笑)。
このキュータマ自体も、スペースイカデビルと同様に何の説明もされず、出現したエグゼイドも、本物なのかキュータマによって作り出されたものなのか、よく分からないまま進んでいきます。もはや、説明など意味はなく、映画のために両者が共演する絵面を作り出すこと自体に価値を見出しているわけです。
これが、例えば整合性を気にする戦隊(「タイムレンジャー」や「ゴーバスターズ」など)だったら、このような登場は許容されなかったのではないでしょうか。ショウ・ロンポーのように良い意味で非常にいい加減なキャラクターが指揮をとっているような戦隊ならではですよね。「ゴーバスターズ」でも、突然「撃ギャバン」が登場するといった無茶振りがありましたけど、登場に際しては説明に時間を割いていたり、撃自身が当局に仁義を通すといったシーンも用意されていましたから、やはりそれなりの「配慮」があったわけです。
それにしても、形はどうあれ、戦隊とライダーが並ぶシーンはいいですよね。存分にスペシャル感を煽られますから。
バランスとナーガ
今回は、(ダイカーンのくせに)あまり姿を現さず暗躍するトゥーミーを誘き出すために、実際に誕生日だったバランスを囮に使うという作戦が展開されます。正義感といったものにはあまり縁が無さそうなバランスではありますが、キュウレンジャーとしての使命感自体は持っているらしく、その場のノリと使命感が文字通りバランスをとっている様子を見事に描いています。
トゥーミーを誘き出す作戦は見事に図に当たり、囮にされたバランス自身のテンションも上がりましたが、前述の通りイカーゲン&マーダッコのコンビによって結局バランスの誕生日が奪われてしまいます。その後、どれだけ周囲の者が祝おうとしても祝うことができないというシーンが切なく描かれ、バランスは引きこもり状態に。この時のバランスの「表情」は注目に値します。目の角度を変化させて「困り顔」に見せるという技で、見事にテンションの下がったバランスを表現。かつてロボコンの目を飾り変えて感情を表現した伝統の技が、この現代でも充分以上に通用するのだと認識させられた瞬間でした。
そして、ここからの逆転劇が白眉! ナーガをトゥーミーの拠点に潜入させるという作戦が採用されます。
まずは、バランスの代わりにチャンプがメンバーに加わるという、臨機応変な編成が素晴らしいです。そして実際の作戦は次の通り。ラッキーとスティンガーが陽動の突撃部隊を務め、その裏で、ステルス能力をフルに発揮して制御室に潜入するのはハミィ。ハミィが操作する制御レバーは、換気口の巨大なファンのスイッチ。換気口から潜入するのはナーガの担当。そのナーガをワイヤーで吊る役割をチャンプが負っています。
かなり手順が簡略化されてはいますが、ほとんど「ミッション・インポッシブル」の世界で、かつて「ゴレンジャー」が「ミッション・インポッシブル」の原作である「スパイ大作戦」をイメージして制作されたことを考えると、「キュウレンジャー」が変化球を投げつつ原点回帰をも目指されていることが分かるわけです。それぞれの特技を生かした配置も絶妙で、9つの牌をどう配置していくかという醍醐味が垣間見られました。
スペースイカデビルが登場したり、ハミィがレバーを操作する直前に敵に気付かれたり、ファンの停止を待たずにナーガが飛び込んでしまったり(ナーガのバランスに対する想いが感じられて良いですね)、ジャン・レノよろしくチャンプが歯を食いしばってワイヤーを引っ張ったりと、ところどころで作戦に綻びが出て、ギリギリで続行されるのもお約束。お約束だけあって緊迫感もテンポも実に素晴らしく、ナーガが潜入に成功して誕生日を取り戻す瞬間は得難いカタルシスに満ちていました。
テンションの戻ったバランスが戦線復帰するのも楽しく、あくまで最初の選抜メンバーで締めるという、妙に律儀なところが可笑しいですね。
そして、バランスの誕生日を祝うことができた一同。最高のプレゼントとして、特訓したナーガの「笑顔」が用意されました。ここでナーガが喜びの感情を獲得したかどうかは分かりませんが、表情のバリエーション自体は確実に増えたわけで、バランスにとっては色々な意味で嬉しい誕生日だったのではないでしょうか。
次回
これまた先の読めない展開。ショウ・ロンポーがどう立ち回るのかにも勿論注目ですが、スパーダの言動にも目が離せません。まだ話数としては1桁なのですが、既に付いていくのが精一杯という...(笑)。置いて行かれないように頑張ります。
竜門 剛
誕生日を奪うという字面だけでは「?」となってしまう行為ですが、映像にすると中々に凶悪な行為でした。まあ、私ぐらいの年齢になると、それほど気にしなくなってしまうイベントなんですが(汗)。
戦隊メンバーが9人ということで、開始前は「大丈夫か?」と思っていたキュウレンジャーですが、以外と普通に見られていますね。常にフルメンバーでの出撃ではない、という演出が良いか悪いかはともかく、今回の話で腑に落ちたのは、これまでの戦隊なら非戦闘員の基地オペレーターなどのキャラクターが変身しているだけで、レギュラー人数については特別増えてはいない、ということでした。
敵レギュラーも、今のところ1~2人ですし、当たり前ですが、ちゃんとゴチャゴチャしない画面作りが考えられているんですね。
天地人
なんか、クリスタルキングが歌うようなタイトル(それ、愛を・・・)ですが、あれだけプレゼントを買える親がいるという事は、侵略されていても経済は破壊されてないってことなんでしょうかね。
といっても、このままだと最終的には惑星が破壊される訳ですし、最悪な状況なにはかわりませんですけど。
今回のトピックである仮面ライダーの特別参戦については、ホント~にオマケ以外の何者でもなかったですね(苦笑)また、そのオマケみたいな描写がキュウレンジャーにピッタリだったという、いいのか悪いのか良く分からない感じでしたが、映画の宣伝には良かったですね。
それではまた